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“原因不明の3つの病”かかえた聖火ランナー、車椅子と自らの足で届けた「サポートへの恩返し」
車椅子ユーザーにまつわる物議、「支え合うなかで相手に感謝することが一番大事」
ところで、周りのサポートといえば昨今、最近車椅子ユーザーの公共交通機関利用について物議が起きている。進んで手伝う人、見て見ぬふりをする人、手伝ってもらって当然だと思う人…様々な感情が入り混じる社会を、彼女はどう捉えているのだろうか。
「バリアフリーが整えられない場所でも、心のバリアフリーがあればいいなと思います。障害者だからではなく、困っている人がいたら助けようという気持ちだけでいいと思うんです。私自身、人に支えられて生きているし、何ができるかわからないけど、人を支えたいと思いながら生きています。そうやって支え合うなかで、相手に感謝することが一番大事なのかな。“お互い様”の気持ちを持つことで、感謝しあえる社会になればいいなと思います。私の母は、私が病人であろうがなかろうが、感謝を忘れたら叱ってくれる人。母から教わったことを私なりの解釈で発信していきたいし、自分もサポートできる人になりたいと思っています」
“怠け”“詐病”と誤解も…、SNSの誹謗中傷も「社会勉強」
「私の抱えている3つの病気はどれも余り知られておらず、見た目には病気があるように見えません。そのため“怠け”“詐病”と誤解を受けて悲しい思いをする患者さんがいます。発病当時は医師にも知られていませんでした。だから病気の正しい理解を広めることや、ヘルプマーク普及の活動をしていかなければと思っています」
「いつもサポートしてくれる母も、私がやりたいと思うことを何でも挑戦させてくれて。事務所の社長さんも、今の私にやれる仕事を探してくれています。『こんな私で申し訳ない』と思うよりも、『ありがとう』という気持ちを返したい。そうやって、前向きに活動をしていきたいと思っています」
とはいえ、SNSなどで不特定多数と接点が持ててしまう今の時代。啓発活動の一環としてメディアに登場するだけで、誹謗中傷を受けることもあるという。
「DMで『死ね』と言われたこともあります。でも、数人からの悪口よりも、応援してくれる人が与えてくれるパワーのほうが、何倍も大きい。だから、そんな小さな声には負けません(笑)。私にとってSNSは、人との関わりが持てる大切な場所。誹謗中傷に対しては、『こんな人もいるんだな、寂しいな』と社会勉強のつもりで対応しています」
コロナ禍のなかでの光明、「寝たままの私にもリモート出演ならできる」
「今、テレビのニュースや情報番組でも、リモートで出演されるコメンテーターの方が増えていますよね。それを見て、『これなら、寝たままの私にもできるんじゃない?』と思ったんです。たとえ寝ながらでも、リモート出演してきちんとコメントすることで、『この人はなんで寝ているんだろう?』と疑問を持ってもらえる。そうしたら、病気のことも知ってもらえるかもしれない。また、ドラマなどに“車椅子の人”として出演できたら、だんだんと見慣れてきて『そういう人もいる』ということが当たり前の世の中になるかもしれない。そんな希望を持っています」
そして、もう一つ。プライベートの目標は、「結婚です!」とはにかみながら笑顔で答えた塚本さん。
「内緒ですけど、私と結婚してくれる人は絶対にいい人のはずですから! 運命の出会いを待っています(笑)」
やりたいことをやる=楽しくなるという自分なりの図式で、苦痛や苦悩を乗り越えていく塚本さん。その姿は、闘病する人だけでなく、悩みやコンプレックスを持つ人すべての人の心に明かりをともしてくれるはずだ。
「とにかく、一人じゃないよと伝えたいです。私自身、誰にも会えないときにSNSで同じ病気の人とつながって励まされたし、いろんな方がサポートしてくれるから活動ができています。病気や悩みを抱えて孤独を感じてしまっても、同じ思いをしている人や支えてくれる人は必ずいます。一人で一歩を踏み出すのは大変。みんなで一歩踏み出す世の中になってほしいと思います」
(文:川上きくえ)