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60年“変わらない”文明堂のCM、「売上に直結しなくても…」裏に込められた老舗の矜持
「売上に直結しなくても」…タケモトピアノか文明堂か、三世代に浸透する自負
親から子へ、子から孫へ──。「変わらないCMと言えば、『タケモトピアノ』さんか文明堂か」との自負もある。
「核家族時代に、こうしてお客様三世代をつなげられる存在になれていることはとても嬉しいですね。たとえ売上に直結するとは言えなくても、変わらない弊社の想いを伝えたい。あの音楽と仔グマで、文明堂だとわかっていただけるのはとてもうれしいです。弊社としては、それはそれでいいのかなと考えています」
競合多いスイーツ界で新たな試みも、それでも「変えない」理由
そんな厳しい現状のなか、文明堂では記念日などにふさわしく、絵や文字を入れることができる『特別仕立カステラ』を開発。また、テレビ番組に取り上げられた影響もあり、『3時のおやつあんぱん』というヒット商品も生まれた。小さめの四角い見た目が可愛らしい商品で、SNSでも映えると話題に。ただ、「弊社にはSNSに詳しい人材が少なく、SNS施策や若者へ向けてのアピールは、次世代の顧客開拓のためにも急務だと考えています」とのこと。ほかにも、「小麦粉と卵、砂糖、水あめ、はちみつで出来たシンプルなお菓子」であるカステラだけに、スポーツや介護の現場でも需要はあるのではないかと、開発を進めているところだという。懐かしいお菓子、というイメージのカステラだが、時代の流れに合わせて、大きく変化していくのかもしれない。
普通、このような新商品が発売される際は、新たなCMを制作して商品をアピールするものだ。だが文明堂は、「それでも、あのCMを変えるつもりはありません」と断言。あくまで、手作り、安心安全の文明堂のイメージを押し出していくという。
「あのCMに慣れ親しんでいただいている、既存のお客様も同時に大切にしたいのです。我々が100年続けていくための挑戦ができるのも、そんなお客様のおかげだと考えているからです」。
次々と新たなものが生まれ、そして廃れる。そんななか、あえて「変わらない」という選択があってもいい。新規開拓ができるのも「これまでのお客様のお陰」――。従来の客層をないがしろにしない、老舗ながらの“矜持”を感じた。
(文:衣輪晋一)
■文明堂HP (外部サイト)