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恋愛スキャンダルで一発退場…なぜアイドルのルールだけが厳格なのか?
事務所や運営側を“悪”とするのは短絡的、誰も望まない“脱退”という禊の形
「なぜ、アイドルに恋愛を禁止する必要があるのかといえば、ファンの中には恋愛禁止を求める声もあるからです。アイドルビジネスの主な顧客はファンであり、その中に恋愛禁止を求めるファンがいるから、芸能事務所は恋愛禁止のルールを作ることで顧客ニーズに答えようとします」(河西弁護士)
しかし、矢口や藤本が脱退を余儀なくされた当時と比べれば、現在はスマホカメラやSNSが爆発的に普及しており、一般人に“現場”を撮影されてメディアやSNSで拡散…というのもなくはない話。バレずに交際を続けることは昔以上に難しくなっている。芸能事務所・アイドル本人・ファンの三者が本来は望まない“脱退”という結果になってしまうのだが、そもそもアイドルに恋愛禁止を強いることの法的根拠はあるのだろうか?
脱退はアイドルの伝統と歴史を守る気概の表れ 一方で残された側の思いは?
つまり、昨今の法律的判断の傾向としては、恋愛発覚を理由にアイドルに損害賠償を求めたり、所属グループや所属事務所を辞めさせることはできないということだ。となれば、芸能界では長年守られてきた“恋愛禁止”のルールに対して、アイドルたちは自らその“しきたり”に従い、体を張ってその“伝統”と“歴史”を守ったというある種の“気概”を見せたのだともいえる。
「一方で、歌唱スキルが極めて高いと評されるメンバーであっても交際発覚からグループ一発退場となれば、『私たちは今まで何を評価されていたんだろう』とアイドル側を取り巻く不安も残ることになります」(河西弁護士)。 実際に高木のようにハロプロ内でトップクラスの歌唱力を誇るモーニング娘。'21の小田さくらは、高木の“事件”を受けて自身のブログで以下のように語っている。
「音楽を武器にしようとしているハロー!プロジェクトが私は大好きです。なので、高木さんのように歌声という最大の武器を持ち合わせていた人ですら、戦えない事があるという現実に、音楽が1番大事ではなかったんだと感じた事がすごく悲しかったです。“アイドル”は音楽という娯楽の中にちゃんと属せているのでしょうか?」(小田さくら|モーニング娘。'21 天気組オフィシャルブログより一部抜粋)
事務所も、大切に育てた人材を手放したい思いはないだろうし、タッグを組んでやらないといけないはずのアイドルとの間に溝ができるような状況は避けたいはず。ルールの見直しや、より一層のケアも必要なときなのではないだろうか。
「実際に本人の精神的負荷にも相当なものがあるでしょう。大切なことは一方的に『処分する』のではなく、本人と今後について話をしながら一緒に『次の道を探す』ことかと思います。本人がグループで続けたいのであれば、一旦はルール違反に伴う活動休止をして復帰の道を模索する選択もある。ソロ活動したいのであればグループを去る選択もある。芸能界引退ももちろんあり得る。本人の意思がなければアーティスト活動は不可能ですから」(河西弁護士)
アイドルは“存在”が商品 プライベートにまで清廉性を求めてしまう傾向もあり
「歌やダンスという技能面、顔や姿などの身体的側面、さらには性格やキャラという人間性の内面・外面的側面など、アイドルの“存在すべて”がファンからの評価対象になるとともに、プライベートにまで清廉性や理想を求められる傾向すらあります。」(河西弁護士)
アイドルによっては、こうした評価にさらされることに疲れてしまい、早いうちからアイドルを卒業してアーティストや俳優へと活動をシフトしていくも人も多いのではないだろうか。
男性アイドルであれば結婚後もアイドルを続けるなど、昔に比べれば高齢化も認められつつあるが、女性アイドルではまだそうはいかないようだ。今のルールのままでは、アイドルは息の長い職業とはなりにくい。ここにきてファンたちも、アイドルへの要求やハードルを上げてアイドルを縛ることは、結果的に自分の“推し”の寿命を短くしていることを自覚すべきではないだろうか。
「『どちらも本当の私だけど、仕事としてのアイドルの姿と実際の私は違っていて…』。私が弁護士としてアイドルから相談を受ける中で、こういう声を聞くこともあります。プライベートを詮索され続けることに限界を感じるアイドルの声も少なくありません。仕事以外でも監視される日々に耐えられなくなり、アイドルでいることを維持できなくなっては、ファンも望むところではないでしょう」(河西弁護士)
“推し”という言葉が一般に使われるようになって久しいが、ファンが推しに対して求めるハードルがいつのまにか高くなってしまうということが多々見受けられる。
「恋愛発覚含め自分の想いに適わないことが起こると『こんなはずはない』『裏切られた』と自分の理想を押しつけてしまいがちです。しかし、プライベートは詮索せずに、ある程度の距離をとることが結果としてより長く推しを応援することにつながるのではないでしょうか」(河西弁護士)
スキャンダルにより一発退場など、本来は法的根拠も何もないことなのだが、アイドルはある意味ファンを守るために、自ら身を引いている(脱退する)のかもしれない。“アイドルの恋愛”…あなたはどう思うだろうか。