THE ORAL CIGARETTES 山中拓也が紡ぐ“歌詞”の舞台裏 凛として時雨TK、尾崎世界観の凄み、セラピーとしての作詞を語る

ヤマタクがリスペクトする歌詞と、自分を奮い立たせる曲 TK、尾崎世界観/SIBITT

――だからこそ、強く響く曲が生まれるんですね。では、歌詞の面で影響を受けたアーティストや楽曲を教えてください。
山中拓也正直に言うと、歌詞で影響を受けた人はあまりいないんです。でも「すごいな」と思える人はいます。

まずは、凛として時雨のTKさん。例えば、“リアルな真っ赤”から“幻想のカラフル”みたいなものを描くメリハリは、TKさんにしか作れない世界観だと思っていて。その冷たさと幻想的な温かさのギャップは自分の世界観にも入っている要素なので、そういう面では共通していたり、影響されている部分があるのかもしれません。TKさんの曲は、言葉数は多くないんですけど、“夕景”や“鮮やか”、“赤”というよく使う言葉があって、それがいろんな曲に散りばめられていても全然違和感がないんですよ。
そして、クリープハイプの尾崎世界観さんも。尾崎さんみたいな文章を書くのは無理です!っていう意味での尊敬ですね(笑)。内容はもちろん素晴らしいんですけど、発想力や物の捉え方が本当に秀逸だなと思います。例えば『傷つける』という曲の「愛なんてずっとさ ボールペン位に思ってたよ 家に忘れてきたんだ ちょっと貸してくれよ」っていうフレーズとか、いろんなところに気を配っている人じゃないと、ボールペン1つに対してこんな例えはできないと思うんですよね。自分では持てない視点を持っていることに、毎回すごいなと思わされます。僕はそういう表現よりも、人間のすごく深めな闇だったり、みんなが目を背けたくなるようなところをわざと突いたドロッとした部分を表現することがすごく好きなので。
歌詞でいうと、僕が好きになるのは“痛み”みたいなものが入っている曲が多いので、自分も歌詞にそういうものを自然と入れてしまうのかなと思います。「痛みこそ重要である」というのが自分の中のテーマというか、ずっと感じ続けていること。痛みを知らない者が優しさを知っているはずがないし、より傷んでいるやつのほうが好きになっちゃう美学みたいなものがあるんです。痛みを持ったままダメになってしまう人が多い世の中だったりするけど、そういう人たちに「今の痛みは無駄じゃないぜ。というか、それが人間としての必要条件なんだ」と曲を通して伝えたいんです。
――尾崎世界観さんは小説も書かれていますが、山中さんも書きたいと思うことはありますか?
山中拓也尾崎さんにはどんどんやってほしいなと思いますけど、僕はどうなんすかね(笑)。自分の中に物語を作って歌詞に落とし込むっていう作業も多かったので……、まあ、気が向けばやろうかな(笑)!
――ぜひ読んでみたいです! 今のこのコロナ禍という状況を不安に思ったり、前に進めないと感じたりと、まさに“痛み”を抱えている人は多いと思います。そういうときに音楽で元気をもらう人もいますが、山中さんが自分を奮い立たせたいときに聞く曲はありますか?
山中拓也僕、自分を奮い立たせるために曲を使うことがなくて、逆に(気持ちを)落とすために使うんですよね。「こんな世界クソだ」とか「どうでもいいわ」って思うくらい落ちたとき、その音楽に溶け込むっていう表現が一番近いと思うんですけど、敢えて最悪な状態まで(自分を)落としちゃう。そうすると、もうあとは光しかないっていう状況になってくるんです。すごくしんどい作業なんですけど、下がっている気持ちをより下げるというか、その世界観に浸るのがいいのかな。今しか感じられない最悪な空気感みたいなものに浸るためにかける音楽は結構ありますね。
それこそTKさんはもちろんですが、志人(SIBITT/シビット)さんの曲にはかなりお世話になっています(笑)。志人さんはラップというか、もうお経みたいな感じなんですよね。それから、インディーズ時代にライブばっかりやって、だんだん心が荒んでいったときにめちゃくちゃ響いたのは、GOOD ON THE REELというバンドの歌詞。刺されている感じがするけど優しくて、でも痛さがあるんです。あと一番聞いているのは、lee (asano+ryuhei)さんのアルバム。部屋を真っ暗にしてこういう曲を流してどん底まで落とすのが、自分の作業の中でしっくりきています。
――“とことん気持ちを落とすための曲”があるんですね。これまで山中さんが書かれた中で、これからもずっと大切にしていきたいと思う曲はありますか?
山中拓也何曲かありますけど、作ってよかったなと思っているのは『接触』という楽曲。人間の本質や、何が本当の美しさなのかということ、生まれ落ちた瞬間にどういう使命を持って生きていかなくちゃいけないのかとか、どの時代にも共通して人間が考えることにフォーカスして書けた気がするんです。70代80代の人も、逆に10歳の小学生が読んだときにも通じる部分があるんじゃないかなと思うし、ちっちゃいときからずっと心の底から思っていたことを書けたので、歌っているときもめっちゃ熱が入りますね。
――熱が入る曲は、ファンの方の反応も違うものですか?
山中拓也なんか、すごく反応がいいんですよ。『接触』はもともとカップリング曲なんですけど、人気が高いです。だからこそ、むちゃくちゃ苦しくなったとしても、頑張れるんですよね。これを乗り越えたら、今まで書けなかった素晴らしいものを作れるのかもと思えるので、追い込むことは意味があるのかなと思います。

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