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ORICON NEWS
アニソン界をけん引する注目シンガー・ASCA、「音楽にできることはたくさんある」伝えたいメッセージ
「人生の転機だった」、マイナス思考を変えた西川貴教とのコラボ
ASCAそうなんです。1stアルバム(『百歌繚乱』2019年)でも四字熟語を一文字だけ変えたんですけど、今回は“鬼”を“希”に変えたんです。シングル「Howling」を発売した昨年11月ごろ、応援してくださる方を引き連れて最高の場所に行きたい、と思っていたんですが、そのときから感じていた気持ちが本作の大きなテーマにつながりました。
ASCAファンのみなさんも、コラボにビックリしながら喜んでくれました(笑)。デビューする前の自分のプロフィールに、「尊敬するアーティスト:西川貴教」と書かせてもらってたんですけど、そんな方とご一緒できたことは人生の転機でしたね。自粛期間中にマイナス思考になることもあったけど、西川さんと音楽番組でご一緒できる機会をいただけて、「こんなんじゃダメだ! せっかく西川さんと歌えるんだから鍛えよう!」と思って、筋トレやボイトレを頑張ったんです。西川さんは、存在するだけで周りの人にいい影響を与える方なんですよ。歩くパワースポットです。
――なるほど(笑)。アルバムの1曲目「進化論」はアプリゲーム『ソードアート・オンライン アリシゼーション・ブレイディング』の主題歌です。
ASCAこのゲームから「ソードアート・オンライン」シリーズの新しい章が始まるんです。物語の主軸が、これまで主人公のキリトやユージオから、彼らに恋心を寄せていたロニエやティーゼに移ることを受けて、“悲しい経験をしながらも、しっかり前に進んでいく女の子”を楽曲でも描きたいと思いました。
――タイトル「進化論」への想いは?
ASCA今の時代、いろんなことに立ち向かわないといけないし、私自身も常に進化したいという気持ちが強いです。殻を破って成長するゲームの主人公たちと、私の気持ちが重なって、「進化論」というタイトルになりました。
――ASCAさん自身のリアルな感情も込められているというわけですね。
ASCAメチャクチャ入ってます。何かに追われているわけではないんですけど、「早く進化しなくちゃ」と思ってるんですよ。今の課題は、レコーディングやライブに対して、最初からスイッチが入った状態で臨むこと。ずっとスロースターターって言われていたので、それを変えたくて…。「進化論」の歌録りも、気合いを入れて臨んだら、ずっとお世話になっている作家の重永亮介さんやエンジニアさんに「今日は最初からすごいじゃん」と言っていただきました。
「曲を作らないとダメだ」父親の教え、ボーカリストだから生み出せるメロディを
ASCAはい。私の1stワンマンライブを観ていただいた後、2人きりで1時間くらい、じっくりお話する機会をいただけました。「私はどういう人間なのか」という話を聞いていただいてから作ってもらったのが、「regain」なんです。
――阿部さんとはどんな話を?
ASCA自分らしさを貫くことは難しいけど、自分をしっかり出すことで人を惹きつけられる。ASCAちゃんにはそうあってほしい、と言っていただきました。歌詞にはそれがしっかり表れていて…、初めて読んだときは泣けちゃいました。真央さんの曲を歌うと無敵になれるんですよ。余計な事を考えず、前に突き進むような気持ちで歌えました。
――さらにはボカロP・カンザキイオリさんの人気曲「命に嫌われている。」のカバーも。2020年7月にYouTubeで公開したバージョンですね。
ASCA自粛期間中に「みなさんに歌を届ける方法はないかな」と考えて、この曲をカバーすることになったんです。レコーディングは緊急事態宣言があけた一発目だったんですけど、とにかく歌えるのが嬉しかったですね。とくに最後の転調が気持ちよくて、「歌うのって楽しい!」って思いました。
YouTubeで公開したときは「ホントに泣きました」という感想までいただいて、深いところまで届けられたという感じもありましたね。2020年は命の大切さ、生きることの意味を考えた1年だったし、「命に嫌われている。」も“生きろ”という希望を歌っています。希望をテーマにした本作に収録することにも、意味があるのかなって。
――「君の街へ」では、初めて作詞・作曲に挑戦されました。
ASCA以前から父親に、「曲を作らないとダメだ」と言われてたんですよ(笑)。私の周りには素晴らしい作曲家のみなさんがいてくれるし、ASCAのことをしっかり考えて作ってくださっているんですが、少しずつ自分のなかで作曲欲が高まってきて…。
ボーカリストだからこそ生み出せるメロディがあると思うし、自粛期間のなかで「自分で作ったメロディを届けたい」という気持ちが強くなったんです。作家の重永さん、Sakuさんと一緒に作らせてもらいました。私がメロディを歌って、そこにSakuさんがギターでコードを付けて、重永さんがキーボードを弾いて…という感じで作っていきました。
――歌詞は、離れている人に想いを伝えるメッセージが印象的です。
ASCA2020年は会いに行けない1年でしたからね。いつか会える、必ず会えるという気持ちを歌にしかったし、自分で作曲したこともあって、この曲が出来たときは感動しました。バンドメンバーと“せーの”でレコーディングしたのもよかったですね。メンバーと一緒に行ける場所もあったし、みんなで演奏したことに意味があると思います。
――アルバムの最後は、足立佳奈さん、MaRuRiさん、UNIDOTSのボーカル・mizukiさんとのコラボ曲で締めくくります。
ASCA今は暗い曲を聴きたくない方も多いだろうし、アルバムの最後もハッピーで希望を感じられる曲で締めたかったんですよ。いろいろ話し合うなかで、何人かのボーカルが歌い継いで、サビではみんなで歌うのはどうだろう? ということになって参加してもらったんです。3人も曲のテーマにも賛同してくれたし、それぞれの個性を発揮してくれたのも嬉しかったですね。歌入れにも立ち合ったんですけど、みんな素晴らしくて。トークバックで「いいね!」「最高!」ってずっと言ってました。
――自分を信じて突き進んでいこうというメッセージが、とても心強いですね。
ASCA2020年は下を向いている時間もあったと思うんですけど、この曲では「大丈夫、自由に羽ばたけるんだよ」と伝えたくて。3人と歌うことで、世界がさらに広がった感覚もありましたね。
――最後に、2021年をどんな1年にしたいですか?
ASCAとにかくライブをやりたいです。しばらくはお客さんが声を出せないライブになると思いますが、手拍子や身体を動かして楽しんでもらえたらいいですね。こんな時代になってしまいましたが、音楽にできることはいっぱいあると感じています。どういう形であれ、音楽を届けていきたいです。
(取材・文/森朋之)