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“回転する彦根城”に“ゲル化した琵琶湖”… 滋賀県の広報動画が「意味分からん」にこだわった理由
動画に込めた思いは『新しい未来の創造(想像)』 多様化が進み「選択の時代へ」
この動画を担当した滋賀県広報課の奥氏は、「こんな時だからこそ、次の時代に向けて新しい価値や発見が生み出せること、決して、人を傷つけたり、否定したり、破壊ではなく、『新しい未来を一緒に創造(想像)して欲しい』という想いをこめています。見ていただいた方に、何かふっと笑みがこぼれて、普段の生活に一息つけるような動画になればと思っています」と本動画に込めたコロナ禍の先にある未来への想いを語ってくれた。
滋賀県の公式HPでは、コロナ禍でのニューノーマル時代の突入をきっかけに、イノベーションがさらに加速していくことにも言及。1人1人の働き方・生き方の選択肢が増え、多様化が進むことで、「東京択一の時代」から「選択の時代」に移り変わっていくことが予想されるという。そして、県民の個性や価値観が、滋賀の未来をつくる時代を迎えていると述べている。
行政として伝えるべきことは「お願い」や「自粛」だけじゃない
「コロナ禍において、多くの自治体から感染症予防対策の徹底や三密の回避、追跡システムの利用など、多くの動画発信がありました。当初は、この動画も、そういった感染症対策の徹底を若い世代にお知らせする主旨を予定していたんです。ただ、毎日テレビやWEB、SNSなどあらゆる媒体で、行政からの『お願い』や『自粛』が飛び交っている中で、今、私たちが届けるべき情報はこれだけなのだろうか、何か大事なことが抜けていないだろうかと思っていました。行政として、『お願い』や『自粛』を言えば言うほど、人に対する許容性や優しさが失われていくような気がしました。」(滋賀県広報課 奥氏)
そんな折、県の要望に対して本企画を提案したのが映像ディレクターの藤井亮氏。ぱっと見、“意味の分からない”動画の原案を見たときに、「この動画なら伝えたいことが伝わる」と思ったそう。
動画を企画した藤井氏は「ちょっと変なことをすると『こんな時になにをふざけているんだ?』『不謹慎だ』という声があがる今のご時世、このような映像のお題を扱うことは正直気が重いものでした。でもこんな時だからこそ、ちょっとしたユーモアと、他者を認める心のゆとりが必要なのではないでしょうか」と話す。
本動画の内容に「即OK」 柔軟性のある組織だからこそできた『石田三成』CM
「滋賀県は、4年前にも石田三成の功績と人柄を様々な角度から伝えるCMを制作し話題となりました。いまだに、『武将といえば三成〜』のメロディが頭の中でリフレインします。当時、よく公開を許したなと思える内容です。今回の動画に関しても、県庁内で了解が出るのは苦労すると思っていましたが、かなり許容性のある上司に恵まれたらしく、何も説明せず動画を見せた時に、『これでいこう』と即OKが出たときは驚きでした。迷った時は、軽やかな方に行く。とても柔軟な組織にいると思います。滋賀県庁おススメですよ(笑)。」(滋賀県広報課 奥氏)