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YouTubeの音楽コンテンツに革命、『THE FIRST TAKE』が提示した「圧倒的な歌」へのニーズ
ごまかし効かない一発録り、「紅蓮華」や「猫」のヒットの起因に
この勢いはYouTubeのみにとどまらず、“一発撮り”というニュース性も手伝い、ワイドショーや新聞などの既存メディアで取り上げられる機会も続々。さらに、フィッシャーズやはじめしゃちょー、香取慎吾らといったYouTuber、かまいたち、ほしのディスコのような芸人も『THE FIRST TAKE』のパロディ動画をアップ。このように“派生”していくこともまた、ヒットの証といえるだろう。
今や、エンタテインメントに欠かせないプラットフォームなったYouTube。同社の副社長ロバート・キンセルCBO(チーフ・ビジネス・オフィサー)によると、「全体の50%がクリエイター(YouTuber)によるコンテンツ、25%は各種メディアによるコンテンツ。残りの25%がミュージックアーティストによるコンテンツとなっている」とのこと。このように、音楽はYouTubeにおける主要なコンテンツであることは間違いないが、これまではその大部分がミュージックビデオ、ライブ映像などで占められていた。そんな状況下での『THE FIRST TAKE』の盛況ぶりは、日本のYouTubeの在り方、また音楽シーンにとっても、エポックメイキングな出来事と言える。
音楽番組の不振、コロナ禍…苦境の中でなぜ成功できたのか?
YouTubeをはじめとする動画投稿サイトでは、2007年頃からアマチュアの投稿者による“歌ってみた”動画が増加。ここ数年は、プロのアーティストによる“歌ってみた”動画も多いが、それをもっとも研ぎ澄まされた表現で提示しているのが、『THE FIRST TAKE』だ。
映し出されるのは、基本的にアーティスト自身と1本のマイクのみ。余計な演出や装飾はなく、“一発撮り、一発勝負”の状況、つまり、まったくごまかしが効かない場所で“プロの技”を聴かせる、というわけだ。視聴者からは、「歌唱力がエグい」「歌い手の人がどれだけ上手くても、LiSAの曲はLiSAじゃないとダメだと思わされる」(「紅蓮華」)、「思っていたのの5倍良かった」「“俳優”の北村匠海が歌ってると思ったら、すげぇ上手くて“アーティスト”なんだなって思った」(「猫」)、「曲調、歌い方、立ち姿、表情、振る舞い、ほんと芸術」(女王蜂「火炎」)といったコメントが寄せられている。
もちろん、アマチュアの中にも力のある人は多いが、YouTubeにアップされる動画は数多く、玉石混交。その中で、アマチュアとプロの力量の差をまざまざと感じさせ、その凄みを見せつけることになったのが『THE FIRST TAKE』だ。アーティストにとっては、格好のアピールの機会であるとともに、真の実力が試される場所でもある。それだけに誰もが爪あとを残せるとは限らず、淘汰されるアーティストもいるだろう。だが、その嘘のない緊張感もまた『THE FIRST TAKE』が支持されている要因といえる。