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外国人が“英語落語”に挑戦したワケ ブロードウェイ公演を機に「今だからこそ“本当の古典落語”を世界に」
英語落語は“無国籍英語”がカギ シンプルな直訳がベストな理由
【桂三輝】最初は師匠と相談しながらいろいろ試したのですが、最終的にシンプルな直訳がベストだと分かりました。やりすぎるとどこの話か分からなくなってしまうので、合わせすぎないほうがいい。リズムや間をそのままにして、日本語で落語をしているのと同じように英語でやっています。
――シンプルな方が伝わるのは意外ですね。
【桂三輝】そうなんですよ。英語に関して言うと、最初に意識して“無国籍英語”を作りました。しゃべる時にすべてのワードを全部はっきりと言うと、どの国の英語でもない無国籍な言葉になります。言葉選びも伝え方も、シンプルが一番です。
――落語に出てくるような日本独自のお話でも、外国の方に伝わるものですか?
【桂三輝】登場人物の雰囲気やキャラクターがしっかり分かるようにすれば伝わります。外国人もみんな日本のことを知りたいし、もし理解するのが難しい場面があっても“枕(本題に入る前に行う話)で説明できるので。
――なるほど。最初に説明しておくんですね。
【桂三輝】そうです。これがまた、めっちゃ笑いが取れるんですよ。たとえば、日本でお酒を飲む時のマナーや“手酌”のことなど、独自の文化を細かく説明すればするほどウケるんです。
――では、国によって披露するネタは変えてない?
【桂三輝】変えていないです。もちろん、基本のストーリーや登場人物も変えません。どの落語家でも地方に行くとローカルなネタを入れるように、地域に合った話を入れ込むこともありますけどね。
――お客様の反応に、国によって違いはありますか?
【桂三輝】国によって変わるというよりは、お客様によって毎日反応が違うんですよね。昨日と今日のお客様で空気感が違うので、バランスを取りながら話すようにしています。
YouTubeチャンネルでライブ配信も コロナ禍でも「やるべきことはたくさんある」
【桂三輝】本当はずっと続けたかったですし、やるべきだったんです。でもブロードウェイでの公演もあって、なかなか更新ができなくて。今は自宅でYouTubeを勉強しながら更新しています。“YouTubeユニバーシティ”に入っている感覚で学ぶこともたくさんありますし、やるべきことがいっぱいあると感じますね。
――高座とYouTubeで落語を披露することの違いや、心掛けていることはありますか?
【桂三輝】画面だからこそできることがいっぱいあるんですよね。字幕を入れたり、音楽や太鼓の音を入れたり、楽しく見られるようにYouTube用に編集をしています。古典落語のやり方ではないけど、新しい芸風と言えるのかも。動画がきっかけで、いつかブロードウェイで本当の落語を観に足を運んでいただける方も絶対いると思っています。
――世界中の方の落語の入り口になり得ますよね。今後もさまざまなコンテンツを配信予定なのでしょうか?
【桂三輝】今は、ブロードウェイのショーをやっていた木曜と土曜の夜8時に、必ず生配信をやっています。日本の20時と、アメリカの夜8時の両方。リアルタイムでコメントなどの反応をいただけるので、すごくあたたかい時間になっていますね。これから英語落語も、週1回披露します。毎週だから、ネタがなくなっちゃいそうで大変ですけどね(笑)。
――YouTubeでは新たに“中国語落語”にも挑戦されていますね。
【桂三輝】Google翻訳で訳した中国語の小話をWeiboにアップして、「みなさま、勉強中ですので直してください」と、コメントをつけました。
――なるほど。教えてもらうんですね?
【桂三輝】“クラウドラーニング”と言ってるんですけど、世界中の中国人に先生になってもらって、間違っているところを指摘してもらったり、キレイな中国語に直してもらいながら勉強しています。半年後にきちんとできるようになるのが理想です。
――教えた方も、その後の上達を見るのが楽しみになるかもしれませんね。
【桂三輝】落語の世界では、ネタを覚えたら師匠の前座としてお客様の前に出ることができるんですよね。一人前じゃなくても、出ることでお客様に育てていただける。これからもいろいろな方法で育てていただいて、落語を世界に広めていきたいと思っています。
生の英語が学べる! 桂三輝さんの“英語落語”が書籍化
『桂三輝の英語落語』(アルク)
著者:桂三輝(演者)
表現解説:松岡昇
価格:税込1,650円
付属商品:音声ダウンロード付
PROFILE:桂三輝
かつらさんしゃいん。カナダ・トロント生まれ。能と歌舞伎に興味を抱き1999 年に来日。2003年からアコーディオン漫談や英語落語の活動を始める。07 年に大阪芸術大学大学院芸術研究科に入学し、落語を研究。08年、桂三枝(現・六代桂文枝)に弟子入りし桂三輝と命名される。19 年には ニューヨークの歴史あるオフブロードウェイにある劇場、ニュー・ワールド・ステージにて初めてとなる落語のロングラン公演。さらに、英語、フランス語を使ったワールドツアーを開始し、これまで5大陸15カ国で講演を行ない、日本の伝統文化を世界に発信している。
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かつらさんしゃいん。カナダ・トロント生まれ。能と歌舞伎に興味を抱き1999 年に来日。2003年からアコーディオン漫談や英語落語の活動を始める。07 年に大阪芸術大学大学院芸術研究科に入学し、落語を研究。08年、桂三枝(現・六代桂文枝)に弟子入りし桂三輝と命名される。19 年には ニューヨークの歴史あるオフブロードウェイにある劇場、ニュー・ワールド・ステージにて初めてとなる落語のロングラン公演。さらに、英語、フランス語を使ったワールドツアーを開始し、これまで5大陸15カ国で講演を行ない、日本の伝統文化を世界に発信している。
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