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『恋つづ』が示した個人視聴率時代を勝ち抜く番組作り
恋愛ドラマ好きの女性の願望を満たすことに成功した『恋つづ』
ファンからの反響をみていると、大きくは2つの話題に投稿が集中していたことがわかる。1つは恋愛ドラマにおけるヒットの鉄則である主演カップルのキャスティングだ。『恋つづ』では上白石萌音と佐藤健の組み合わせに好意的な声が多く寄せられていたことが特徴にあった。上白石萌音が演じた佐倉七瀬(さくら・ななせ)は純粋でドジっ子、佐藤健が演じた天堂浬(てんどう・かいり)は超ドSというキャラクターがそれぞれ見事にハマり、さらに身長差があるビジュアルも功を奏していた。もう1つの話題は「好きな場面」の投稿だ。「後ろからハグ」を筆頭に、いわゆるキュンキュンが高まったシーンをファンの間で共有しようという動きが多くみられた。先のキャラクター設定にも共通することだが、王道の少女漫画の世界をそのまま再現したかのような演出や台詞選びは、恋愛ドラマ好きの女性の願望を満たすことに成功した。この振り切った番組作りこそ、来る個人視聴率時代に求められるものである。
テレビメディアの価値をより正しく示すデータ「個人視聴率」導入
調査対象世帯数は地区によって異なるが、視聴率調査の設計が統一される。これにより「全国」という単位で視聴状況を表現するデータが具現化され、「全国」単位での視聴率集計や、番組単位で全国の視聴人数の把握も可能になる。表示される数値は「世帯視聴率」では10世帯中の5世帯が視聴すると「50%」と表示されていたが、「個人視聴率」では30人中の9人が視聴すると「30%」といった具合だ(図参考)。「どのような視聴者がどのような環境で視聴しているのか?」といった視聴傾向がわかることで、以前よりもデータとしての価値が高まることが期待される。考えられるデメリットは世帯視聴率よりも表示される数値が低くなることから、これまで人気を示す物差しであった「視聴率」が使われにくくなることが考えられる。
番組づくりの方針にテレビ各局で違いあり
一方、テレビ朝日は3月31日に開催された定例会見で個人視聴率導入に賛成しながらも「今後も変わらずオールターゲットの番組づくりを行う」と発言したことが報じられている。
『恋つづ』のようなヒット事例があっても、個人の趣味嗜好に合わせた番組づくりはまだ実験段階にはある。だが、個人視聴率の本格導入によって今後どのように変化をみせていくか、注視すべきであることは間違いない。なぜなら、視聴スタイルの多様化は避けられない動きであるからだ。電通が3月11日に発表した「2019年日本の広告費」によると、インターネット広告費が6年連続2桁成長となり、テレビメディア広告費を抜いて、初の2兆円超えとなった今、首座を奪われたテレビが宣伝メディアとしての価値を見直す最後のチャンスの時でもある。近い将来、これまで見えてこなかった視聴データから新たなマネタイズの視点を取り入れるという考え方は、必ずや番組づくりの本流となっていくだろう。恋愛ドラマに光明を見出した『恋つづ』などの事例は大いに活用できるはずだ。
(文・長谷川朋子)