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King Gnu井口理の積極的SNS芸、 フロントマンとして新たな立ち位置に
「白日」MVの“神聖さ”を良い意味でぶち壊した、“クソリプ”お家芸
たとえば、今や57.9万フォロワーを誇るTwitterでは、いわゆる“クソリプ” (中身がなく無関係でつまらない=クソなリプ(ライ)を一方的に不特定多数の人間に送りつける)は井口のお家芸で、一度も会ったことのない人に対して、「楽曲を聴いてくれ」とリプライを送り続けている。その相手は著名人にも及び、「ジャスティン、いつものやで」とジャスティン・ビーバーに送ったり、「今回もいいもん出来ましたぜ法王」となんとローマ法王にまでクソリプを送っているのだ。
この迷惑行為?はブレイク前の2016年ぐらいから自称「プロモーション」として行なわれ、数え上げればキリのないほどの相手にばらまかれている。ちなみに同業者のASIAN KUNG‐FU GENERATIONのボーカル・後藤正文からはブロックされ(2018年に井口ファンの懇願により解除)、井口がファンだというグラビアアイドル・篠崎愛からは無視されている。
“階段降り”、“便所サンダル”…井口の一挙手一投足がSNSでトレンド入り
その後、本番で歌に入り込みすぎて“ヘン顔”になったり(白目を剥くなど)、トーク中にタイミングがずれたところで突然笑い出したり、便所サンダルをはいてきたりなど、MステにKing Gnuが出演する回は、井口をはじめメンバーの名前や関連ワードがTwitterでトレンド入りするようになり、「白日」なんだか「白目」なんだかわからない状況になった。最新シングル「Teenager Forever」のPVでも、井口は札びらを切ったり美女たちを侍らせたりして「ゲスすぎる」と話題になるなど、井口の狂気じみたキャラクターはすっかり定着しはじめたようなのだ。
“爪痕残すため意見を募る” リスナーとの共犯関係結ぶ、ラジオが飛躍のカギに
実際、今ではラジオが聞けるアプリ「ラジコ」の普及などもあり、かつてのテレビよりもラジオの市場のほうが活気があるともいわれる。リスナーのラジオ番組に対する注目度は高く、出演者にしても重要な報告をテレビではなくラジオで行なうケースが増えている。たとえば、アルコ&ピースや山里亮太、おぎやはぎ、バナナマンなどの芸人たちがラジオを大事にしていることは知られており、視聴者にしても彼らに対して「ラジオのほうが面白い」、「ラジオだとテレビでは聞けない話が聞ける」として重宝しているし、むしろ尖った層に対しては、テレビよりラジオというメディアのほうが影響力が強いともいえる。
そうした意味でも、井口の“狂気”はリスナーとの距離が近いラジオで全開しやすく、「ひたすらポルノグラフィティのカラオケを歌い続ける」、「ひたすら下ネタ話を続ける」などのミュージシャンにあるまじき?行為を続けるのだが、同時に奇行の背後にある井口本来のユニークな才能や、温かい人間性が伝わる場にもなっており、ラジオはKing Gnuの世界へのよき玄関口ともいえるのだ。
SNS芸やスベリ芸をバンドのために繰り出す、フロントマンとしての新たな役割
先述の「爪痕を残す」ということについても井口は、「本当言うと、するほうは気が気じゃないんです。(本番が)はじまるまで(緊張で)お腹が痛くなるし。正直なところ、あの(Mステの)降り方をするのはめちゃめちゃ勇気がいることだった。あれ、やりたくなかったからね。爪痕のためにやったことですから」と自らラジオ番組で語り、実際の奇行と、その内面にあった知られざる葛藤という意味でも、“ギャップ”があることを明かしたのだ。
高い音楽的センスで視聴者を魅せるKing Gnuと、時にはドン引きされるほどの自己表現を見せるボーカルの井口理。その強烈なギャップ感は、これまでの優れた楽曲制作やパフォーマンスでカリスマ性を得ていたバンドにはあまり見られなかったものだ。しかしそのギャップは結果的に、King Gnuの音楽性の“尖った”部分を“親しみやすさ”でカバーしながら、視聴者の感性をより惹きつけることになったようである。ボーカル・井口理は、バンドのフロントマンとして新しい形を提示しているのかもしれない。