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青山テルマ『そばにいるね』ヒット後は「人間が嫌いになった」個性派キャラ解放できた理由

被害妄想に幻聴…、“どん底”から見えた答え「自分が努力をしていない時こそ人のせいにする」

12年前に『そばにいるね』が大ヒットした青山テルマ

12年前に『そばにいるね』が大ヒットした青山テルマ

 そうして本当にやりたいことも表現できず、世間のイメージや周囲の意見に振り回される時期が続いたものの、「そばにいるね」以降再びヒットが訪れることはなかった。周りに大勢いたスタッフや友人もどんどん減っていったという。すると、テルマの心身に変化が起きる。

 街ですれ違う人には「笑われているんじゃないか」、電車に乗れば「売れなくなったから電車かよという目で見られている」などという被害妄想が止まらなくなったのだ。人混みを避けるようになり、テレビの中で活躍するミュージシャンに嫉妬し、仕事が減っても友達には忙しいふりをして、とにかくネガティブ思考で人間自体が嫌いになった。

 それでも歌詞を書くことを辞めなかった。医者に「休め」と言われても休むことが怖かった。立ち止まったら自分が消える気がした。この時も、誰にも見せられなかった弱い自分を音楽にしか託せなかった。悩みを誰にも話せずにもがいた状況が数年続くと、家で電気をつけることすら怖くなり、仕舞いには「死ねよ」「死んだほうが楽だよ」という声が聞こえてくるようになった。

ヒット後、電車に乗れなくなるほど人間が嫌になったと語る青山テルマ

ヒット後、電車に乗れなくなるほど人間が嫌になったと語る青山テルマ

 遂に、テルマは休むことを決意する。「日本にいると考えすぎてしまったり、人と比べてしまったり…。それをやめたいという意味で、雑音から逃げたかったし、自分自身と向き合いたかったというのもあって。なにか自分の自信につながるものを探しに行きたくて、決意しました」悔しい気持ちを抱えながら、26歳で逃げるようにして1人アメリカに飛んだ。

「自分的には一番どん底というか、すごく暗い時だったんですけど、『なんで今の状況が良くないんだろう』って冷静に自分と向き合ってみたんです。そしたら、『他人のせいにしてしまっているなあ』『全部、自分のせいだ』って客観的に思うことができて、それですごく楽になったんです。自分に自信がなかったり、努力をしていない時こそ、周りがよく見えてしまったり、人のせいにしてしまう。でも結果、自分自身しか自分を変えられないんですよね」

「失敗しまくっているから、あと100回くらい失敗しても怖くない(笑)」無駄なプライドを捨てた“強さ”と“自由”

元々”シャイ”だからこそ音楽で表現できることがあると話す青山テルマ

元々”シャイ”だからこそ音楽で表現できることがあると話す青山テルマ

  • 他人を気にすることをやめ、無駄なプライドを捨てることで”自分らしさ”を見つけたという青山テルマ

    他人を気にすることをやめ、無駄なプライドを捨てることで”自分らしさ”を見つけたという青山テルマ

 環境を変えることで、他人に向けていたエネルギーを自分に向け、自分に注目することができたことが大きかったという。「環境を変えられなければ習慣を一つ変えてみる。例えば、朝起きて携帯を見るのをやめる。いつもだったら、あまり気が合わない友達と無理して遊んでいるけど、その人たちと一歩距離を置いて、自分が本当に気の合う人と会ってみる。偏った食生活をしていたら、いろんなものを食べてみるとか。一つ何かを変えることで、いろんなことがいろんな見え方をしてきたりするので」

 自分を変える一歩として、「無駄なプライドを捨てることで本当の自分らしさに出会える」と語るテルマ。「まずは、“決めつけ”を取っ払うことですね。例えば『早寝早起きをする人はいい人間だ』とか『こうしなきゃ』とか、自分が生きている中で自然と決めつけてしまっている物事があって。それが逆に、自分の良さを殺してしまう時があると思うんです」と、作られたイメージと闘ってきたからこそ語れる彼女の言葉には説得力がある。
「他人から見て『こうあるべき』ということよりも、自分が『どうなりたいか』、『どうしたいか』の方がきっと重要で、前向きな考えになるんじゃないかなって。人に対しても、『こうじゃないといけない』という否定から入らないことですね」

 デビュー当時は自信のなさから自分の意見が言えなかった彼女は、無駄なプライドを捨て、本当の自分らしさに出会い、嫌味のない自信を手に入れたように見えた。「『自信を持てている』というより『失敗することに対して怖くない』という方が正しいかもしれないです。失敗しまくっているから、あと100回くらい別に怖くない(笑)。それをやる意味や、やりたい理由がポジティブだったら、ダメでもどうにか転ぶだろうなって思ってます」

いまの自分はすごく「自由」だと笑顔を見せる青山テルマ

いまの自分はすごく「自由」だと笑顔を見せる青山テルマ

 あらゆる苦悩や葛藤を乗り越えた彼女に、改めて「そばにいるね」のヒットは自分にとってどんな出来事だったか聞いてみた。「アーティストとしても人としても、完全に人生の分岐点だったと思います。1曲でもこういう“名曲”と言われるものを掲げて、いまだにステージに立てることはすごく幸せだなって思いますし、いつ歌っても飽きない曲です。ホントにいろんな経験をさせてもらった曲なので、『感謝!』という感じですね」と、ネガティブなコメントは一切出てこなかった。

 そして最後に「今表現したいもの」を尋ねると、「ないですね」と笑った。「その時その時で、やりたいことをやっていけたらいいなって。今は、私の言葉に興味を持ってくれる人がいて、自分が表現できる環境がある。そして、それを当たり前だと思わず、いかに自分が発信したいものを提供できるか、という時期だと思うんです。そういう意味では、何をしても『青山テルマ』になるのですごく自由だなって思いますね」

 見た目の違いによる差別、大人たちに作られたイメージ、無駄なプライド、自信のなさ、他人への嫉妬、様々な“不自由”に縛られていた彼女は、ようやく“自由”を手に入れた。
(取材・文/水白京)
〇●書籍情報●〇
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発売から5日で重版が決まった青山テルマ初エッセイ『人生ブルドーザー』(宝島社)

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