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(更新: ORICON NEWS

【コミケ97】コミケの上流階級? 出展者の憧れ“壁サークル”の内情とは

コミケ97

  世界最大規模の同人誌即売会『コミックマーケット97(以下、コミケ)』(C97)が28日、東京ビッグサイトで開幕。昨年はのべ53万人を動員し、初の4日間開催だった今年の夏コミでは過去最高のべ73万人が参加したと言う。そんなコミケでブースを出す以上、ひとつの目標になっているのが“壁サークル”。“島”と呼ばれる一般的なスペースに対し、主催者側から会場の壁際のスペースに配置されるサークルのことで、いまでは“壁サー”というと、ほとんどの場合“大手サークルを意味する語”となっている。「最初は壁から攻める」という言葉もあるように、出展者だけでなく参加者にとっても激戦の“壁サー”。果たしてコミケカーストの上位なのか? 現役“壁サー”『Chilly polka』の作家・すいみゃさんに話を聞いた。

壁サーの利点は“スペースの確保「売り子のスペースがなくて片足立ちで頒布したことも」

 すいみゃさんは可愛い女の子を中心とした絵を描くイラストレーターだ。コミケなどの同人即売会に長年に渡り出展しているサークルだが、会社員との両立は大変でもあり、本格的に参加し始めたのはイラストレーターとして独立した2015年からで、壁サークルになったのは2017年の夏コミからだそう。

 行列ができても他のサークルの邪魔になりにくい、在庫を置くスペースが多く確保できるなどの利点があるため、大手のサークルが壁際に配置されることが多いようだが、どうしてすいみゃさんのブースが壁に抜擢されたか、その理由を自己分析してもらった。
 「壁配置になる1年前ほどから、自分でつくるグッズなどの搬入量が増えたことが要因でしょうか。島中のスペースの時は、スタッフさんに『ギリギリアウトです』って言われてしまうくらいスペース許容範囲を越えちゃってて。むりやりスペースに収めても、売り子さんが入れなくて、片足で立って頒布……なんてこともありました(笑)。壁になると島中よりちょっとだけ多くスペースがいただけるので、今は無事、人が立つところが確保できてます」(すいみゃ)。
  • すいみゃさんのイラスト(写真提供:すいみゃ)

    すいみゃさんのイラスト(写真提供:すいみゃ)

 自分のスペースがどこにあるかを示す“目印のためのポスター”も意外と場所を取る。「島中だとポスタースタンドを用意しないといけないんですよ。場所を取るのもそうなんですが、スペース内での動きが制限されたり、倒しちゃってお隣のサークルさんに迷惑かけてしまったり…」(すいみゃ)。
 壁に配置されるとポスターを壁に貼ることができるため、そういったトラブルが起きにくいことも壁サークルの利点だと言えるだろう。「ただ、壁は自分のブースだけでなく、周囲のサークルもとても混むので、うっかりしていると周囲の邪魔になってしまうので、そういった配慮が必須ですね」(すいみゃ)。

お客さんのマナーに支えられている「お釣りの準備は意外と大変ではない」

  • 画像提供:すいみゃ

    画像提供:すいみゃ

 すいみゃさんのサークルは、コミケの準備にだいたい3ヵ月くらいを要する。コミケオープンと同時に行列ができ、13時くらいには列が落ち着く。その後はブースに来てくれるファンとのコミュニケーションの時間が始まるという。人気サークルは早めに頒布を終了しているイメージもあるが、これはなぜなのだろうか?

 「シンプルに、その時間に売り切れてしまうことが多い…ということだと思います。私の場合は新刊(イラスト集)は終了の時間まであるようにしていますが、グッズはそのくらいの時間に売り切れてしまうことが多いです。前述したようにスペースには限りがあるので、たくさんの方に届くように作ろうとすると人が動けない、人が動けるように搬入数を考えると足りない…これは永遠の課題ですね」(すいみゃ)。

 行列ができるサークルとなると、お釣りの準備も大変そうだ。「実際のところ、全然大変じゃないです。コミケ前になると1000円札と500円玉を使わないようにしていて、20枚ずつくらい貯まったら十分かなって感じです。コミケのお客さまはみんな作家さんが小銭だと助かることを知っているので、細かいお金で支払ってくれるので、お釣りに困ることはそんなにないと思いますよ。お釣りだけでなく、行列に並んでくれることや、サインを待ってくれたりお客さまの配慮に助けられている部分も大いにあります」(すいみゃ)。

『壁サー=安泰』は勘違い!?「毎回、誰も来てくれない悪夢にうなされる」

  • 画像提供:すいみゃ

    画像提供:すいみゃ

 壁サークルになることでの業界内の評価の変化や、今後の活動への影響力を聞いてみたところ、「一緒にお仕事してくださる方はいつも良くしてくださいますし、お仕事が激増した、と感じてもいないので、壁になったことで評価があまり変わる印象はないのですが、壁になると目に止まりやすい、注目されやすい……とかはあると思います。これは作家あるあるだと思うのですが、壁サークルでも毎回コミケ1週間前くらいから“開場しても誰も来てくれない”という悪夢にうなされるという話をよく聞きます(笑)。壁になったからと言って安心している作家さんはほぼいないんじゃないでしょうか」(すいみゃ)。
壁サークルの利点を知っているからこそ、島中に戻ってしまったら少しショックもありそうだと語るが、スペースが有限だということも理解しているゆえに、他サークルと譲り合いつつ、自分の努力も怠らないサークル活動をしていきたいと考えているそうだ。

 夏は暑い、冬は寒い、室内であっても湿気で雲が出現するなど、過酷な状況を叫ばれる“コミケ”だが、作家にとっての参加意義を聞いてみると、「たくさんの方が参加する“お祭り”なので、やはり楽しいんですよね。締め切り直前は『なんでこんな大変な思いをしてるんだ、次は辞めようかな』なんて思ったりすることもあるんですけど、当日が来ると楽しくて、次の新刊のことを考えてしまいます。そうやって何年も経っている感じです(笑)」(すいみゃ)。

コミケは行列必死の壁から攻めるが鉄則「何時間並んでも欲しいものが買えればそれでいい」

 出展者だけでなく、参加者にとってもサークルの配置は重要だ。実際に壁サーに並んでいる人に話を聞いてみた。

 1日目8時半くらいから並んでいたオスロさんは、「もちろん壁サーが狙い。いろんな人がいるとは思いますが、まずは壁サーから攻めるというのは僕の基本形態です。始発から行くか迷いましたが、10分くらいで買えたので、ちょうどいい時間に並べたなと思いました」とのこと。

 他にも元気な声で電話をしながら歩いていたたけしさんに話を聞いてみると「スマホで仲間と連絡取り合いながら効率的にサークルを回っています。人気サークルさんは個数制限もあるので、欲しいもの全部ひとりで回ってたら終わっちゃうんで。仲間と相談しあいながら何日も前からフォーメーション組むのがまた楽しい。コミケの醍醐味ですね」と、コミケが続く限り人気サークル巡りをしたいと目を輝かせていた。

 大盛況の壁サー列の後方にいたとんびさんは「人気サークルさんはいつも2時間くらいは並ぶ覚悟。僕の趣味を理解できない人には『時間がもったいない』と言われることもあるけれど、何時間並んでも欲しいものが買えればそれでいい」と、狙いのサークルさんへの情熱を聞かせてくれた。

information

  • すいみゃさん出品内容 ※一部です

    すいみゃさん出品内容 ※一部です

すいみゃTwitter@suimya

【出展情報】
コミックマーケット97
12月30日(月) ※3日目
西1ホール れ26b『Chilly polka』

新刊&新作グッズ頒布予定

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