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子どもの字?「人をぶっちゃダメなんだよ。」異質の”駅マナーポスター”に反響、狙いは
半数以上が酔っ払い、忘年会・新年会シーズンに合わせた新デザインも子どもの字で
尾嶋さん元々、以前は年々増加傾向にあり問題視されていた第三者暴力行為災害に対し、17年前に民鉄協で本格的に防止策を講じていくことを決定したのがきっかけです。2005年よりJR3社と協力してマナーポスターを制作し、その後、JR・私鉄の壁を越えて、現在では全国の多くの鉄道会社が共同で掲出しています。
――駅員の方に対する暴力行為は悪質なケースも多いのでしょうか。
尾嶋さん2018年度では、全国35社局で630件の発生件数に対して加害者の飲酒の割合は53.3%と高い数値となりました。発生原因としては「理由なく突然に」被害を受けるケースも高い割合で発生しています。その他の原因としては、迷惑行為を注意した際やけんかの仲裁に入った際に鉄道係員が暴力被害を受けるなどの事例も例年発生しています。
――そんな中、ポスターのテイストが去年から変わり、SNS等で話題になっていました。
尾嶋さんこれまでは“暴力は犯罪です”という文字を強く押し出していましたが、近年では、事実の周知のみでは突発的に起きる暴力行為の抑止力にならなくなっていました。去年の“つい、カッとなった。人生、ガラッと変わった。”、“お酒の失敗じゃない。あなたの失敗です。”については、ちょっとしたきっかけで誰もが被害者・加害者になるかもしれない。そういった一瞬の感情や気の緩みを未然に防ぐという狙いがありました。
一人ひとりに当事者意識を、純粋な子どものメッセージがいじめ問題の解決にも
尾嶋さん今年の“人をぶっちゃダメなんだよ。”、“よっぱらったら、何してもいいの?”については、暴力をふるう人が客観的にどう見えるのか気づかせる、つまり周囲からの目を意識させ、一人ひとりに当事者意識を持たせるという狙いがありました。そのため目に留まるデザインとし、全ての駅・電車利用者に届きやすいシンプルで分かりやすいメッセージで構成しました。
――子どもの字が目を引きますよね。
尾嶋さん大人にとって当たり前のことを、純粋な子どもの視点からのメッセージとして出すことで、大人をはっとさせ、暴力行為の未然防止に繋げるキャッチコピーとしました。デザインでは、白い背景に文字やイラストを子どもらしく描くことで、メッセージの効果を増大させています。
尾嶋さんデザインを依頼した会社様の社員の、小学4年生の娘さんに書いていただきました。企画の性質上、リアルなメッセージにこだわる必要性があったので、本当に子どもに書いてもらいました。
――ポスターの反響はありましたか。
尾嶋さん例年、ポスターのデザインやコピーによって、多くの方からご意見をいただいております。今年については、子どもの視点からのメッセージということもあり、多くの学校様からの問い合わせがありました。生徒同士のいじめ問題の解決に繋げたいという目的で駅・電車内で見かけたこのポスターを教材に授業を行った学校もあったようです。
――ポスターによる効果を実感することはありますか。
尾嶋さんポスターのみならず、鉄道各社にて様々な防止策に取り組んでおり、駅員に対する暴力発生件数は年々減少傾向にありましたが、近年では首都圏を中心とした鉄道利用者の増加の影響もあり、横ばいの傾向になっております。ポスター以外にも、防犯カメラの設置、警備員の配置など様々な取り組みを実施しており、これらの取り組み含め第三者暴力行為の件数を減少させていければと考えています。
――これから飲み会が増えるシーズンですが、悪質な暴力行為がなくなることを願っています。
尾嶋さん鉄道は多くのお客さまにご利用いただいている公共交通機関です。今後、忘年会や新年会など飲酒の機会が増加していく時期になるかと思いますが、多くのお客さまにご利用いただく鉄道であるからこそ、当たり前のマナーをお互いに守っていただき、ご利用されるすべてのお客様が快適にお過ごしいただきたいと考えております。駅や電車で見かけるポスターが暴力行為などを抑止する一助となれば幸いです。