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ORICON NEWS
最後だから徹底的に楽しむ『スター・ウォーズ』
一夜限りの「スター・ウォーズ歌舞伎」
ジョージ・ルーカスが日本文化に多大なる影響を受け、日本との結びつきが強い「スター・ウォーズ」シリーズ。劇中にはたくさんの日本的要素が盛り込まれており、日本が世界的に誇る伝統芸能の歌舞伎だからこそルーカスフィルムが公認した舞台が実現した。
海老蔵によると「『スター・ウォーズ』を歌舞伎でできたらいいな」といった関係者との他愛もない会話が発端だったという。「『スター・ウォーズ』は光と闇が描かれていて、歌舞伎の勧善懲悪を描く歌舞伎と似ているところがあります。心の中の恐怖や恐れからダークサイドに堕ちてしまうところが、好きだなと感じていました。以前からやってみたいと思っていたことが実現し、うれしく思っています」。
今回の演目は、カイロ・レンが初登場した『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(2015年)と、ルークとカイロ・レンの対決が描かれた『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』(17年)を元に、登場人物の名称やせりふなどを歌舞伎の世界に置き換えて再構成されたもの。
歌舞伎の世界では、「名前を変えて演じることがよくある」ことで、カイロ・レンは「魁煉之介(通称:魁煉)」、ルーク・スカイウォーカーは「皇海大陸琉空(すかいおおおかるくう)」、ルークの双子の妹・レイアは「澪殷(れいあん)」、カイロ・レンの父ハン・ソロは「半蔵(はんぞう)」、レイは「麗那(れいな)」、カイロ・レンをダークサイドに引き込んだスノークは「數能角(すのうかく)」の名で登場した。
海老蔵は「特に、『スター・ウォーズ』の世界を忠実に歌舞伎で再現することにこだわりました。世界中の『スター・ウォーズ』ファンの方々の気持ちを裏切らないように、ストーリーを忠実に再現しつつ、歌舞伎で表現したいと思いました」と、話していた。
映画と同じくお馴染みのオープニングクロールとテーマ音楽とともに始まった「スター・ウォーズ歌舞伎」。一転、附け打ちの音や三味線が鳴り、最新の映像技術と伝統的な歌舞伎が融合した舞台を繰り広げた。
この特別な演目を演出・振付を担当したのは、日本舞踊界で長い歴史と伝統を誇る“宗家 藤間流”の八世 藤間 勘十郎。ボーカロイド初音ミクと歌舞伎のコラボや、歌舞伎×オペラ×能楽を融合させた「源氏物語」を創り上げるなど、伝統を重んじつつも、斬新なチャレンジを続ける勘十郎が、今回もその手腕を存分に発揮。
歌舞伎の代表的な演出がふんだんに盛り込まれ、魁煉と琉空が対決する場面では海老蔵が「早替わり」で2役を演じ、「荒事」と呼ばれる豪快な立ち回りを披露。「スター・ウォーズ」シリーズに欠かせないライトセーバーを持った「見得」の連続は最大の見せ場となっていた。勸玄くんも、幼少期の魁煉之介として、家族や師匠への複雑な思いを感情豊かに演じた。
本番前の舞台あいさつでは、海老蔵と勸玄くんだけでなく、人気ドロイドのBB-8、R2-D2、C-3POらが登壇。意気込みを聞かれた勸玄くんが「堀越勸玄です。がんばります !」と答えると、会場は温かい拍手と笑顔に包まれた。そして、大本山増上寺の御導師らによって歌舞伎の成功のための祈願も実施された。
芸能界きっての「スター・ウォーズ」ファンとして知られる海老蔵。「実は私と『スター・ウォーズ』は偶然にも1977年に生まれた同い年。父の團十郎と一緒に初めて映画館で観た映画も『スター・ウォーズ』でした。そして『スター・ウォーズ』が完結を迎え、私も十三代目市川團十郎を襲名させていただくという大きな節目を迎えるのも、不思議な縁を感じます」と感慨深げ。さらに、「子どもたちも『スター・ウォーズ』をよく観ています。特に勸玄は昔のシリーズが好きみたいです」と話し、思いは受け継がれているようだ。
『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』について聞かれた際には、「本当に終わるんですか?」「夜明けはくるんですよね?」と逆質問で会場の笑いを誘い、「完結するのであれば、正義に勝ってほしいと思いますが、そうではないのかもしれない。カイロ・レンが光と闇のどちらにいくのかというところが見どころだと思います」と、期待を語っていた。