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おばちゃん演じて30年、“再現女優”上村依子の矜持「“続ける”という才能が私にはあった」
親に啖呵を切って家を出た手前、簡単には帰れなかったことが女優を続けることへの原動力に
【上村依子】私の生きがいは、どんな形であれキラキラ輝きながら過ごすこと。それを貫いてやってきただけなので、これまで女優を続けられたことが幸せだなって思います。昔はたくさんの仲間がいましたけど、今はほとんど辞めてしまっていますから。再現女優と呼ばれることについては、あとからついてきたことなので、特にこだわりはないのですが、ひとつの道を歩けたかなという思いはあるので、嬉しいですね。
――女優になったきっかけはどんなものだったのですか?
【上村依子】鹿児島で暮らしていた中学2年生のときに、文化祭の出し物として舞台に出演したんです。「人が足りないから」とお願いされて仕方なく立った舞台だったのですが、人前でスポットライトを浴びるという高揚感にカルチャーショックを受けました。そのあとくらいから女優になることは決めていたのですが、両親からは「看護師になってほしい」と言われていたので、東京に出てくるのは結構大変でした。
――ご両親は許してくれたんですか?
【上村依子】だいぶモメて、半ば無理やり出てきた感じですね。最終的には許してくれたんだと思いますが、モメて出てきたって言うのも、今となっては良かったなって思うんです。上京したときは東京には知り合いが一人もいなくて、仕事もないし、とにかく食べていくのがしんどくて、お風呂もないようなところに長いこと住んでいたんです。それでも頑張れたのは、両親に啖呵切った手前、泣きっ面で実家に帰れないなという思いだったんだと思います。
――今は女優のお仕事だけで食べているんですか?
【上村依子】はい。再現ドラマだけではなく、連続ドラマにも出させていただいていますし、YouTubeを配信したり、舞台で演劇やコントをしたりもしています。20歳から、結婚するまでの20年間は、昼は演劇をやって、夜はホステスをしていました。当時はホステスの仕事で生計を立てていましたね。時給がいいだけでなく、ノルマ制の舞台のチケットをお客さんが買ってくれることも多くて、とてもいい職場でした(笑)。
【上村依子】私が演じていたのは、若い時からクセのあるおばちゃんとか、変な少年とかばっかりで。そのころは、まだ私も細くて可愛かったんですけど(笑)、役のイメージに本人も引きずられるところが多くて、全然モテなかったんですよ。40歳の時に、クラブのお店のお客さんと結婚しました。正直言うと結婚を決めた当時は、この人だったらお芝居を続けさせてくれるかな、という打算もありました(笑)。主人は数年前に他界しましたが、結婚生活は幸せで、とても楽しかったですね。
――女優を続けたいという思いが強かったんですね。
【上村依子】私なんかよりももっともっとキレイで女優としての才能がある人もたくさんいたけれど、それでもなかなかお金にならなくて辞めていくのをたくさん見てきました。私に才能があったとしたら「続ける」っていう才能かなって思いますね。
30歳くらいからおばちゃん役を演じ続ける「本当は薄幸のヒロインを演じたかった」
【上村依子】いえいえ、徹底なんかしていないですよ。本当は幸が薄そうな二枚目がやりたかったんですから!(笑) でも女優ってたくさんいるから、スキマを狙って行かないといけないでしょう? もともと実年齢よりも上の役をもらうことが多かったし、「おもしろい方を狙って行こうかな」と、二枚目を諦めた瞬間はありました。
――どんなことがキッカケが覚えていますか?
【上村依子】30歳くらいのときに、舞台で薄幸のヒロインを任せてもらったんです。もちろん最善を尽くしたつもりではありますが、どこかしっくりこない部分があって。そのとき、「わたしには、周りの人が与えてくれる“三枚目の役”が合っているんだな、みんな見る目あるなぁ」って思いました(笑)
――再現ドラマには、どうして出演することになったんでしょうか?
【上村依子】最初はオーディションだったと思います。最初に出演したのは27歳くらいだったかな。撮影に呼んでもらったときに、何か爪痕を残そうと思っちゃって。普通の役だったんですけど、ものすごく弾けてぶっ飛んだ芝居をしたんです。それで「おもしろい」と思ってもらえたみたいですね。続けて読んでいただけるようになって。
――再現ドラマの特異性はどんなものでしょうか?
【上村依子】今は用意していただけることも増えましたけど、当時は衣装やかつら、小物なども全部自前でした。1日に何役も演じますから、引越しのような荷物を引っ提げて移動しないといけないのが大変でしたね。それと、基本的に台本は当日手渡しです。20分くらいでバーっと見て、役をイメージして。何本も収録していく、嵐のような現場でした(笑)。
――何役も演じるのに、20分で台本を覚えるなんてかなり難しそうです。
【上村依子】再現ドラマの撮影は、普通のドラマと違ってデフォルメOKなので、みんなで大きな声を出して、テンション上げて撮影することが多かったです。だから台本を覚えるのも、勢い(笑)。ハイテンションを何時間もキープしての撮影なので、すっごく体力を消耗します。監督にはよく体力を褒められるけど、正直言うと「あと何年できるかな〜」っていう不安もありますね。
今後の夢は朝ドラに出ることと、たくさんの人に名前を知ってもらうこと「親に親孝行がしたい」
【上村依子】なんでしょうね。大きな声で、元気に挨拶することかな? 最初の印象って強烈に残るから「私は元気な人間ですよ」って伝わるような挨拶を心掛けていました。それと、さっきも言った「続ける」という才能。振り返ってみるとそれらが武器かもしれないですね。
――再現ドラマのイメージが強いですが、実はドラマにも多数出演していますよね。今後は、どんな役者を目指していますか?
【上村依子】はい、ありがたいことに、連続ドラマにも出演することが増えました。近い夢としては、朝ドラにレギュラー出演することです。両親はまだ健在ですが、もう夜のドラマは見ないんです。でも朝ドラだったら見てくれると思うので、少しでも親孝行になればいいなという思いもあって。もう少し大きな夢としては、「もっと売れること」ですね。顔は見たことがあっても、名前はほとんどの方が知らないと思うんです。樹木希林さんや吉行和子さんのような人間のわびさびを出せるような女優になって、上村依子というブランドを築いていきたいです。
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