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平成アニメ史、生存術だった『製作委員会』の功罪 「このままでは中国と韓国にパワー負けする」

平成初期、アニメ業界が生き残るための方策だった「製作委員会方式」

――昭和から平成となったアニメ史を振り返った時に、「製作委員会」(※作品を製作するための資金を複数の企業に出資してもらう資金調達の方法)の存在は大きいと思います。アニメ業界に与えた影響とは?

布川ゆうじアニメ業界が生き残る策として「製作委員会方式」しかなかったんです。というのも、バブルのときには潤沢な宣伝費がテレビ局・広告代理店に集まっていたので、アニメを放送する30分という短い枠はなくてもよかったんです。お金が潤沢にあるときは2〜3時間のワイドで番組を作りたい。そのほうがお金がたくさん集まるし、大量に番組が作れるわけです。

――バブル時代、30分アニメだとスポンサーに売りづらかった面があると。

布川ゆうじアニメのスポンサーは、当時はだいたい玩具、飲料メーカー、文具メーカーなどに限られていました。そういう面で代理店としては売りづらかったっと思います。そうしているうちに、だんだんアニメの枠は深夜などに追いやられていきました。

――今のアニメはほとんど深夜放送ですね。

布川ゆうじいま30分の深夜アニメの制作費は1本1500万円くらいですが、普通、深夜ドラマやバラエティを1500万円で作るなんてないですよ。でもアニメだと1500万のクオリティの番組で、かつスポンサーもそれほど必要でない。色んな問題がありますが、製作委員会方式によって大量のアニメ番組が制作されました。

日本アニメに求められる、プラットフォームを活用した“メディア革命”

――90年代から2000年代の変化でいうと、『Netflix』といったプラットフォームの誕生があるかと思います。

布川ゆうじ海外のプラットフォームについて言うと、日本のアニメが海外を意識して作られていないということに問題があると思います。あくまでも日本国内でヒットするかヒットしないかっていうところでせめぎ合ってるわけです。

――現状は、国内向けの作品が“たまたま海外に評価された”っていうだけだと。

布川ゆうじそうですね。とはいえ、僕は日本のアニメは“今が売り時”だと思っています。国内の1億2000万人だけを対象にした作品作りはもう終わりにしなければいけない。そうしないと、いま韓国も中国も“日本のアニメビジネスを何とか追い抜いてやろう”って必死になっていますからね。今のままではいつか、日本のアニメが中国や韓国の作品にパワー負けてしまうっていう可能性は十分あります。

――では、プラットフォームを利用しつつ、日本のアニメを海外展開するために必要なこととは何でしょうか?

布川ゆうじクリエイティブの問題ではなく、プロデュースの問題だと思います。いまはプラットフォームを使ってクリエイターが輝ける場があるわけであって、プロデュースする人はそういうことに目を向いていかないといけない。じゃないと、日本のアニメもマンガもそろそろ飽きられてしまいますよ。僕はその点で凄く危機感を感じてます。

――昨今、アニメ業界は“ブラック業種”の代表格のように言われています。クリエイティブな作品を作りつつ、働き方を改善するというミッションが業界全体に課せられています。

布川ゆうじいまは製作委員会があまりにも多くなっている。アニメの需要はそれほど多くないのに、供給過多な印象です。本数が多いのでスケジュール面でも日本のアニメは非常にタイトになってきてるし、それに伴って“お粗末”になってきてる面も感じます。モノ作りは人に見られてナンボの商売なんで、何となしに「手を抜いたな」っていうのはすぐにわかるし、飽きられてしまいます。

――平成が終わり、令和の時代となります。アニメ界の今後に期待する部分とは?

布川ゆうじ今が分岐点なんだと思います。これから5Gの時代が来て、映像業界は大きく変わっていきます。今は『Netflix』も『Hulu』も『Amazon』もありますが、ひとつに集約されていく可能性もある。それはまさに“メディア革命”だと思いますね。今後、日本の主要メディアも含めてどういうふうにプラットフォームを組みなおしていくのか、とても重要になると思います。

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