(更新:)
ORICON NEWS
寺田心のシャウトでSNSをザワつかせた“ブックオフCM”の狙い「まずは過去のイメージの払拭を」
ブックオフに置いてあるのは本だけじゃないを伝える「今の時代に合った直感的なCM」
ブックオフ直営1号店が開店したのは1990年5月。約30年近く続くブランドで、 “本を売るならブックオフ♪”というジングルが流れるイメージが強く記憶に残っている人も多いだろう。そのCMなどの効果で“中古書籍”というイメージは定着したが、先述の通り、そのイメージを一新する必要性が生まれた。さらに「新たなことにも挑戦している」というイメージを世に浸透させるため、2年ほど前から「過去のCMとはまったく違うものをやろう」と動き始めたのだという。
「個人的には、以前のCMは、ただ言いたいことだけを言っている古臭いCMのイメージが強い。まずはそのイメージを払しょくしたいという思いがありました。ストレートにブックオフのサービスを淡々と伝えるCMというのも、あの頃は必要だったかもしれませんが、今の時代に合っているとは思わなかったんです。ブックオフブランドも30年近くやっていて、サービスも変わっているので、新しいことをやっているということを“言葉”ではなく、直感的に知ってほしかったんです」(宮岡直樹氏)
そうしてサービス内容をストレートに伝えるCMではなく、「まずは足を止めてもらいたい」という想いから、寺田のシャウトとともに「ブックオフには本以外もある」ということだけを直感的に伝えるCMが出来上がったのだ。
話題性を狙うも、想像以上の反響「SNSでのリツイート数は、普段の約40倍」
企画の決定の決め手になったのは「普通の企画じゃなかったこと」と宮岡氏。「今回からタレントさんが出演することは先に決まっていました。もちろん候補は他にもあったのですが、その中でも心くんがこの企画を演じてくれれば、可愛らしさと毒々しさのギャップで、これまでのCMとはまた違ったものになると確信しました。それとクリエイティブの方々の熱意と面白いモノを作ろうとする団結力、パワーが本当にすごかったです。」(同氏)。CMの長さは15秒。放送エリアは関東と中京エリアのみで、放送されたのはたったの10日間。そうした制限の中で「視聴者にしっかりと、そして正しい情報で、インパクトを与えたい」と生まれたのが、あの“尖った”CMだったというわけだ。
寺田といえば、16年の舞台挨拶で共演の大泉洋に「なんか怪しいんだよなぁ」とイジられたように、「子どもらしくない振る舞い」や「あざとさ」がキャラのひとつになっている。その寺田の“負”のイメージを揶揄したように感じられる可能性も充分にあっただろうが、寺田側の寺務所はこれを「おもしろいじゃん」と快諾。千田氏も「これには感謝しかありません」と頭を下げる。
そしてこれが奏功する。振り切った寺田の演技力や、振り切ったセリフ回しなどを称賛する意見や、「中毒性がある」などのツイートが激増。さらに同CMをパロディした動画も視聴者の手で大量に作られ、テレビ放映された関東・中京エリアを超え、インターネットを通して全国区に。「インターネット時代ならではの、これまでとは違う、今どきのプロモーションの形が露わになった。拡散されるパロディ作品や大喜利も、こちら側が伝えたかったメッセージであるキラーコピー“本ねえじゃん”を中心に出回っている。これは想像を絶する反響と言ってもいいです。費用対効果を考えた場合、大成功の部類に入るでしょう」(千田氏)。
実際、ネット店舗やフリマアプリなど、増えたライバルに苦戦した時期もあったが、2019年3月期には2度の業績上方修正を行った。地域や各店舗の特性に応じた新商材の導入を進め、従来の本やCD以外の売り上げが力を付けてきたという。
広告よりも、サービスを向上に費用を使いたい「今はまだいろいろな施策の過程段階」
休憩時間にはスタッフと談笑をする場面も見られたという。撮影現場は本物の店舗だったため、見慣れない商品に興味を持つ姿も。店舗には足を運んだことがあるものの、トレーディングカードを取り扱っていることは初めて知ったらしく「今度、売りに行きますね」と千田氏に語ってくれたという。
「社交辞令だったとしても、本当にうれしかった。また、店舗にお店に置いてあるものをお客さんが皆知っていると思い込んでしまうのは、我々の驕りであることにも気づくことができました」と唇を引き結ぶ。
「我々の考え方としては、CMや広告にお金をかけるなら、お客様からの本や服をもっと高い値で買い取れるようにしたいし、web展開でのシステムに投資して、サービスを向上させたいという思いの方が強い。それと同時に、ブックオフがどんなことをやっているのか知ってもらいたい。今はまだ、いろいろな施策の過程段階なんです」(千田氏)
その寺田心出演の新CMが4月29日からGWに渡って放送される。「前回のテイストとはまた違っており、それでもやはり攻めており、かなりいい仕上がり。楽しみにしていてください!」(千田氏)
(取材・文/衣輪晋一)