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(更新: ORICON NEWS

原宿文化を世界に、アソビシステム代表取締役社長・中川悠介氏

『きゃりーぱみゅぱみゅ』との出会い

――学生時代によく見ていたエンタメコンテンツはありますか?
 中学校が家から遠くて、朝7時に出て21時に帰ってくるという生活だったんです。だから、あんまり家でゆっくりテレビを見るというのはなかったですね。帰宅してからの遅い時間で、ドラマは少し見ていました。あと音楽はけっこう聞いていて、メロコア世代です。Hi-STANDARDが特に好きで、ライブにもよく行っていました。大学時代はイベントを企画して運営もやっていたので、ファッション誌はよく見ていましたね。当時はほとんど家にいない生活で、朝から学校に行って、その後、サークルにバイトにイベント。ほとんどテレビは見れていなかったです(笑)。

――もともとイベントを企画することが好きだったのですか?
 そうですね。中学の時は、近くのライブハウスを借りて「卒業ライブ」をやったり、高校の時もホールを借りて「ライブイベント」を開催していました。「たくさんの人が集まる場所」が好きで、その「空間」が大好きでしたね。大学時代も多くのイベントを企画して『学生だけのファッションショー』やクラブが安く借りられる月曜日に、翌日が休みの美容師さんを集めたイベント『美容師ナイト』を開催して、当時は1000人規模の集客がありました。このクラブイベントが、今の『アソビシステム』の原点です。

――当時から、エンタメ分野を仕事にしたいというのはあったんですか?
 イベントを企画するのが好きだったので、エンタメ分野にはすごく興味を持っていたと思います。ただ、就職活動はほとんどやっていなくて「リクナビ」に登録したくらいです(笑)だから、どこにも就職せずに、そのまま『アソビシステム』を設立しました。サラリーマン経験は一度もないんですよ。

――設立当初はどのようなことをやっていたのですか?
 会社の原点はクラブイベントなので、学生時代からの繋がりを生かして、色んなイベントを企画していました。『アソビシステム』という会社の強みは「イベントを企画してお客さんも呼べる」こと。その強みを生かして、クリエイターや広告代理店などのビジネスパーソンを繋げ、どんどん新しいものを作っていく。それが最初の『アソビシステム』の形でしたね。

アソビシステム代表取締役社長・中川悠介氏(C)MusicVoice

アソビシステム代表取締役社長・中川悠介氏(C)MusicVoice

――「原宿」という場所へのこだわり、魅力は何ですか?
 自分たちが「好きだった場所」というのが第一にあります。色んなストーリーを作っていく上で、自分たちが「大切にしている場所」というのはとても重要な要素です。当時はよく原宿で遊んでいましたし、原宿から生まれる「ヒト」や「モノ」は絶対にヒットするという確信がありました。この街は、「自由」な中で常に「変化」していて、『おもちゃ箱』のような場所なんですよね。

――2007年設立されて、2011年に『きゃりーぱみゅぱみゅ』さんがデビューされました。きゃりーさんや音楽プロデューサーである中田ヤスタカさんとの出会いは大きかったですか?
 そうですね。中田ヤスタカとは会社を作る前から一緒にイベントなどを作っていて、「『原宿のアイコン』を作りたい」とはずっと話していたんですよ。きゃりーと出会った時、この子なら行けるんじゃないかと。SNSではすごく攻撃的でインパクトがあるけど、実際に会うと本当に真面目だった。時間も守るし、連絡もちゃんと返す。SNSのパワーもそうですが、きゃりー自身がちゃんとしていて、地に足がついている感じがありました。僕が意識していたのは、彼女の魅力をいろんな人に引き出してもらうこと。彼女も含め、色々なクリエイターと一緒に「きゃりーぱみゅぱみゅ」を創り上げていった感じです。紅白やワールドツアーなど、怒涛の日々でしたが、当時は日々勉強でしたね。最初は「色もの」的なものだと思われていたかもしれませんが、その中で彼女は堂々と出ていった。だからこそ、「本物」になれたんだと思います。

――なぜ、「原宿のアイコン」を作りたいと思ったのですか?
 海外は「ファッションアイコン」=「アーティスト」というのが多いのですが、日本は「ファッション」と「音楽」の距離感が遠いんですよね。それをもっと近づけたいというのはありました。そんな中で、原宿ならそれが生まれるんじゃないかなと。だから、きゃりーとの出会いは大きかったですね。

――『アソビシステム』では、どのように新しい子を見つけてくるのですか?
 街でスカウトはめったにしないです。「綺麗」「かわいい」だけではなくて、ちゃんと「ファッションが好き」で自分のスタイルがある、という子。『アソビシステム』に入ってくる子はおしゃれな子が多いですね。今年、アソビシステム主催のオーデションを開催したのですが「こういう子が欲しい」という固定概念よりも、集まってきた子の中から、その子の良さを引き出して「新しいもの」を作っていきたいというのはありました。うちに所属しているモデルの『ゆうたろう』も、初めから映画に出そうというのではなく、マネージメントしていく中で、幅が広がって演技の方向にも進んでいった感じです。

アソビシステム代表取締役社長・中川悠介氏(C)MusicVoice

アソビシステム代表取締役社長・中川悠介氏(C)MusicVoice

――内閣府の「クールジャパン官民連携プラットフォーム」の委員でもある中川氏。日本のポップカルチャーを海外に発信する「もしもしにっぽん」プロジェクトにも力を入れていますね。
 きっかけは、きゃりーのワールドツアーです。その時に、日本のポップカルチャーが世界中から大きな支持を得ていることを実感しました。アニメ、食文化、ファッション、音楽は、それぞれの分野で世界中に多くのファンがいます。ただ、そういう中で、日本は「発信力」がほかの国と比べて弱い。パリでライブをやったとき、近くのスタジアムで韓国アーティストのイベントがおこなわれていましたが、スポンサーも韓国企業が集まっていました。国家レベルで応援していると感じましたし、僕らも「オールジャパン」で発信するべきなんだと思いました。「原宿」という街もそうですし、日本の良さを世界中に知ってもらう事は、結果的に自分たちのところに必ず戻って来ます。SNSが普及して、今までよりもさらに世界と繋がれるようになったことは、とても大きなことだと思います。

――日本の作品は、海外に向けてアレンジしたほうが良いと思いますか。
 それはあまり意識しない方がいいと思っています。「クリエイティビティ」(発想力・創造力)はすごく大事だと思っていて、アニメ作品や映像作品、トヨタ自動車やホンダなどの日本を代表する企業の技術力は世界で誇れるものがあります。そういった「日本人のクリエイティビティ」はすごく大切です。僕らも何かを作り出すときに、「海外仕様」というよりも、「日本で良いと言われるもの」を作り続ける。それが結果的に海外でも広がっていくと思います。それくらい、日本のポップカルチャーには自信を持っています。

――インバウンド施策も含め「アソビシステム」の事業は、多岐にわたっていますね。
 自分たちの価値、自分たちにしかできない事を見出していったら、横展開に事業が広がっていった感覚です。ゼロからイチを作る。自分たちが良いと思うことをずっと続けてきました。ファッションやライフスタイルを軸に、「HARAJUKU」や「カワイイ」は世界の共通言語になり、原宿という街で、新しいカルチャーがどんどん生まれています。外国人観光客もどんどん増えてきましたよね。

――エンタメの最前線で活躍されて、この10年で一番大きく変わったものは何だと思いますか?
 やっぱり、「お茶の間のスター」が減ったというのは感じますね。YouTubeやSHOWROOMなどのプラットフォームができてより細分化され、その中からスターがどんどん出てきた。原宿カルチャーの中からも、小さなコミュニティがたくさん生まれています。インスタグラマーはまさに、プラットフォームから生まれた存在ですよね。そんな中で、僕らとしては『本物のスター』を作りたいと思っています。それぞれのプラットフォームの中にとどまらない子。きゃりーは最初、YouTubeで話題になりました。メジャーデビュー作品『PONPONPON』という楽曲のMVをYouTubeでフル尺で流した。当時は珍しかったと思います。それが話題を呼んで、ケイティ・ペリーやリンキン・パークがTwitterで反応してくれた。そこからテレビにも出て、紅白にも出場して、ワールドツアーも開催することが出来ました。そうやって、既存のプラットフォームから、さらに他のプラットフォームへと広がり、多くのファンを獲得しました。インスタグラマーになれる子は、個性が強くて自分のファッションスタイルをちゃんと持っています。それだけの魅力があるので、「インスタグラマー」で終わるのではなく、テレビなどにも幅広く活躍できる子を作りたいですよね。

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