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起用モデルの高齢化が続く背景とは? 化粧品CMの変化
アンチエイジング商品の細分化 CMにはベテラン女優、レジェンドモデルが続々起用
これは単に、主要視聴者層の高齢化という理由も挙げられる。現在テレビを観ている視聴者層で最も多いのはF2(35-49歳の女性)、F3(50歳以上の女性)層。そのターゲットに向けて商品が開発され、CMをうつのだから当然だと言える。「しかし、それだけでは語れない」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「過去の若さや美しさだけを求めるのではない、女性の意識の変化がここから感じ取れるのです」(同氏)
これに伴って、CMモデルも高齢化している例が増えている。「資生堂プリオール」の宮本信子、原田美枝子を筆頭に、「キスミー フェルム」の賀来千香子、「コフレドールグラン」の戸田恵子、「サントリーエファージュ」に起用されている50年のキャリアを持つレジェンドモデル・我妻マリなどがその例だ。
求められるのは“リアルさ” 過ぎた若作りよりも“手が届く美しさ”を訴求
昨今は仕事を持ち、自立して自分のために時間やお金を使う女性が多いため、年齢を重ねても美しさを忘れない女性が増えている。また近年のエクササイズブームで、体を鍛えることでスタイルを維持する女性が増え、高齢の女性でも“美”を追究することに違和感がなくなっていることもあるだろう。若さに執着しなくても美しくいられるんだという価値観が根付いてきているように見える。
「そのため年相応の美しさ、つまり、自然体の“美”が求められるようになっている気がします。ユーザーも年齢に合った“リアル”を求めるようになっているのかもしれません」(衣輪氏)
ターゲットと同世代のモデルを起用することで、「こんなふうに美しくなれるのでは」という希望は“リアル”を増す。つまり、“手が届く”“なれる”の訴求だ。輝く同世代を見れば、自分の美と改めて向き合うきっかけになったり、「もう一度頑張ろう」という気持ちが生まれるきっかけにもなるだろう。
“すべての女性が美しい“を打ち出す広告のフィット感 年齢に応じた美を追求が指標に
出演した女優やモデルは、田中麗奈、竹内結子、仲間由紀恵、広末涼子、観月ありさ、荒川静香、香里奈、森泉、吹石一恵、黒木メイサ、鈴木京香など。年齢を重ねることで、美の表現が変わるだけで、女性はいつまでも美しくいられるんだという思いを、広告によって浸透させた。
「モデルや女優さん、メイクさんらと話をすると、20代女性の肌がキレイなのは当然といえるが、40〜60代女性の肌が美しいというのは、相当な価値だと自信を持ってよいと言う方が結構います。実年齢の若さだけでない、その年齢だからこそ価値のある“美しさ”を、資生堂のCMをはじめ、各社、高齢女性モデルの起用でも表しているのではないでしょうか」(衣輪氏)
幸せな女性、美しい女性の基準が明確だった時代は終わり、それはますます多様化している。若い女性だけが美しさを表現できるという考えはナンセンス。そんな時代だからこそ、“化粧品”という美を追求したCMにも、見ていて違和感のない、購入意欲の沸く“リアルなCM”が求められているのだろう。
(文/中野ナガ)