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お色気枠からオチャメな乙女おばさんに…まんぷく母・松坂慶子が魅せるウザいほどの“愛嬌力”

  • 松坂慶子(C)ORICON NewS inc.

    松坂慶子(C)ORICON NewS inc.

 NHK朝ドラ『まんぷく』において、お笑い担当であり、物語を支える「大黒柱」担当でもある最も重要な立場にあるといえるヒロインの母・鈴役の松坂慶子。「私は武士の娘です!」の決めゼリフが、場面によって、おかしさ、調子の良さ、頼もしさなど、様々な役割を果たしている。SNSでは「武士の娘」が飛び出すと、トレンド入りするなど、人気の高い役どころでもある。若い世代は知らないが、かつての松坂慶子といえば、「艶女優」の代名詞的存在。自曲「愛の水中花」や映画『鎌田行進曲』などで見せた“色気”で勝負してきた女優だった。それが時を経て、180度のキャラ変を遂げた理由はどこにあるのだろうか。

もはやドラマの肝に?『まんぷく』松坂慶子の絶妙な“かわいらしさ”と“ウザさ”

 『まんぷく』における松坂慶子の役割は、序盤から現在に至るまで、様々に変化してきている。最初は、ヒロイン・福子を頼りない子ども扱いし、福子と二人暮らしになるのが心細いこと、寂しいことから、仮病を使ってまで長女・咲の結婚を阻止しようとする自己中ぶりを見せた。また、次女・克子の夫の「画家」という職業を嫌い、福子の結婚相手を自分で決めると断言するなど、娘たちを意のままにコントロールしようとする様には、SNSで「毒親」という指摘も多数挙がっていた。

 決めゼリフ「武士の娘です!」は、非常に便利な言葉で、「やりたくないこと」を拒否するときや、無理難題を押し付けるときなど、およそ「武士」とは関係ない件で発動する。その権力たるや、まるで水戸黄門の印籠のようで、相手に有無を言わさぬ効果を持ち、ときには家族以外の他人をもひれ伏させてしまう。しかも、「武士の娘」→「ご先祖は源義経」→「(ヒロイン夫の先祖は)どうせ足軽」と、設定がどんどん広がっていく調子の良さ。この自分勝手さ、ワガママさは、物語の序盤では「ウザい」と言われることも多かったが、シリアスな展開ではスパイスとして作用。物語が停滞しそうなときには、先に推し進める起爆剤となり、お人好しのヒロイン夫妻の弱点・ヌケた部分を補う頼もしさ、安心感も持っている。

 松坂慶子演じる鈴さんについては、SNSでも「鈴さんが可愛いのは、松坂慶子っていうのもポイントだよなぁ」「松坂慶子さんの『私は武士の娘です!』がうざかったけど今はなくてはならない存在になってきたね」など、好意的意見がほとんど。しかも、「ウザい」「毒親」から「可愛い・面白い」「実はいちばんまっとうな人」と評価が変わってきているが、物語内で「キャラ変」したわけでは決してない。一人の人間の持つ多面性が、場面や状況に応じて、さまざまな見え方をするというのは脚本の上手さであり、また、その多面性に説得力を持たせる役者の力だろう。

大人の色香で魅了、濡れ場にヌード写真集…かつては世の男性を魅了した“お色気枠”代表

 かつての松坂慶子といえば、現在とは180度違うと言っても良い”お色気枠”であった。ドラマ『水中花』(1979年)ではバニーガールの衣装で登場。自ら主題歌「愛の水中花」も担当し、胸元があらわになった、大きくスリットの入った黒のセクシーなドレスに網タイツ姿で「これも愛♪あれも愛♪」と妖艶に歌い、大ヒットさせる。この曲は当時、真似をして遊ぶ子どもがたくさんいたほか、多数のバラエティ番組のコントや替え歌などが作られるほどのインパクトを放っていた。

 実はそれまで清純派の役が多かったのだが、その前年(1978年)に映画『事件』に出演。殺人事件の被害者を演じ、初めてヌードを披露した同作はアカデミー賞最優秀作品賞を受賞したことから、松坂の「色気枠」としての道がスタートする。そして同年、ドラマ『青春の門・第二部(自立篇)』で娼婦・カオル役を体当たりで演じたことで、原作者・五木寛之がほれ込み、自らの作品をドラマにした『水中花』に抜擢。主題歌の作詞も手掛けたという経緯があった。

 さらに、深作欣二監督と出会い、映画『青春の門』(1981年)で大胆なヌードを披露し、日本アカデミー賞最優秀女優賞を受賞。さらに、翌年の『蒲田行進曲』では、風間杜夫演じる主人公に思いを寄せ、ひたすら尽くすキュートさの一方で、手荒く扱われながらも欲情する濃厚かつリアルなベッドシーンを見せ、大評判に。『道頓堀川』でも真田広之を相手に濃厚な濡れ場演技を披露する。そこから時を経て、2002年には、なかにし礼が原作・監修を手掛けた意欲的なヘアヌード写真集『さくら伝説』を出版。当時、50歳でありながらも変わらぬ体のライン、肌のなめらかさには、美しさと大人の色気が両立し、男性だけでなく女性からも絶賛されていた。

“30の壁”を乗り越え、体系の変化で“貫禄”を身に付け演技に幅が

 ところが、2000年代になり年を重ねるにつれて“お母さん役”が増えていく。『熟年離婚』(2005年)では、一回りほどしかトシの離れていない高島礼子が松坂慶子の娘役を演じた。親子というよりも姉妹のように見える違和感があったが、と同時に、松坂慶子の体型にふっくらした中年っぽさが漂い始めていることに、驚きを感じた視聴者は多かっただろう。

 しかし、「太った」ことはマイナスどころか、新たな路線の開拓にもつながる。映画『ホノカアボーイ』では、いつも何か食べている、食いしん坊でキュートな映画館の女主人・エデリーを好演。これまでの「色気」とは異なる、親しみやすい「おもしろ可愛いおばちゃん」として、貫禄ある演技を見せつけた。また、朝ドラ『ゲゲゲの女房』では、戦争で傷ついた夫を支え、たくましく生きる貸本屋の女主人を演じた。ヒロイン・松下奈緒の味方として、陽だまりのようなあたたかな包容力を放っていたのも印象的だった。この包容力も、体型変化がもたらした部分があるだろう。

 松竹の専属女優として活躍していたときは、清純派路線だった松坂。30歳目前にして大胆な濡れ場や歌手活動などに果敢に挑戦したことが、作家や監督を夢中にさせ、視聴者の心をとらえ、現在になってさらに芸の幅を広げることにつながったのではないだろうか。

 かつての「美人」「色気」女優が、まさかここまで面白さと貫禄、さらに気品も感じさせる女優になるとは。一時期「太った」ことが注目された際も、本人がインタビューなどで「太った」と自ら語ったことがあるように、体型変化を苦にする様子もなく、あっけらかんとして明るく素敵だった。そうした明るさ、天真爛漫さは“お茶目で可愛いオバちゃん像”につながり、失うことのない誇り高さは“気高く上品な印象”を与えるのではないか。それこそまさに「ブシムス」の精神。思えば、『まんぷく』で演じる鈴のオチャメでかわいい演技は、まるであてがきされたようでもあり、間違いなく松坂の集大成だろう。今後どんな活躍を見せるのか、ますます楽しみだ。

(文:田幸和歌子)

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