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“経済効果”と“迷惑”が紙一重 「ロケ地巡礼」の問題点とは?

 脚本家の野木亜紀子氏が先日、自身のSNSで「見学者が集まってしまうとご近所迷惑にもなるし撮影できない」と苦言を呈した。以前、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の公式サイトがロケ地巡礼に注意喚起を促したように、人気作品・人気俳優のロケ現場は、見物人によって周囲に迷惑がかかってしまう事例も少なくない。一方で、番組のロケを誘致することで観光客を呼び戻す“イメージアップ作戦”や、町おこしにもつながる“聖地巡礼”など、ロケ地が新たな地域資源になることも。経済効果を上げている一方、野次馬の迷惑行為も叫ばれる“ロケ地巡り”の正しい在り方とは?

ロケ地めぐりの経済効果は、”聖地巡礼”ブームとの相乗で年々加速

 一部の映画ファン、テレビドラマ・アニメファンや漫画ファンの間では、作品に登場した場所を実際に訪ねて歩く“聖地巡礼”が流行している。特にアニメやアイドルファンの間ではそれが顕著で、“聖地”を紹介するサイトも複数ある。そのモデルケースとして挙げられるのが学園アニメ『らき☆すた』。作品の舞台・鷹宮神社のモデルとなった埼玉県鷲宮町の鷲宮神社には多くの“巡礼者”が殺到。2008年は30万人だった初詣客が2009年には42万人に激増。神社の方でもアニメとコラボするなど街をあげての盛り上がりとなり、埼玉県久喜市(鷲宮町は後に久喜市に編入)はアニメ放送後3年間で22億円もの経済効果があったと発表した。
 
 また2011年に放映されたアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(通称“あの花”)のクライマックスシーンを飾る、埼玉県秩父市の龍勢祭に11万人が殺到(前年は7万5000人)。ほか、アイドルがMVやバラエティ番組で使ったカフェや居酒屋を聖地としてファンが訪れることも。お店側も、そのアイドルが食べたメニューを“セット”として打ち出す例もある。

 実際、知名度アップと大きな経済効果が見込めることから、聖地巡礼を歓迎する自治体は少なくなく、町おこしの一貫として自らアピールすることもある。例えばアニメ『ガールズ&パンツァー』の聖地、大洗町。売店にはガルパンのクリアファイル、ストラップなどがグッズ販売。鹿島臨海鉄道の車両がガルパンのキャラでラッピングされているほか、商店街でも店主たちがキャラクターのステッカーをプレゼントする光景が当時見られていた。“巡礼者”の方もこれらに“お布施”することで、単なる当該箇所へ行きたい欲のほかに、作品を盛り上げたいという想いも充足。実際に功を奏したWinWinの関係が築かれている。

“あまちゃんロケ地巡り”が根強い人気 ロケ地としての活動が“地域資源”に

 中でもNHK朝ドラ『あまちゃん』(2013年)は、幅広いファン層から愛されたおかげかそのロケ地巡りが現在も盛況だ。今も久慈市産業経済部観光交流課の公式で『あまちゃん』のロケ地を詳細に紹介されており、“聖地巡礼”の最も成功した例に数えられる。これらは映画などの撮影場所誘致や撮影支援をする機関「フィルム・コミッション」が関わっており、これは全国に点在している。番組や映画のロケを誘致→露出を増やす→イメージアップ→観光客を呼び戻す…という一連の流れを狙ったもので、ブランド力のある大きな都市“以外”での活動が盛んだ。

 「エンドロールで地名や施設名などが流れることによってブランド力アップにつながるというのが自治体の思惑」と話すのはメディア研究家の衣輪晋一氏。「これが“地域資源”になっており、実際に様々な自治体で試そうとする動きはある。ただお金がかかることなので、資金難の小さな自治体ではやりたくてもやれない状況。また『フィルム・コミッション』のノウハウの少ない新たに始めた自治体だと互いの理解が噛み合わないことも当然あり、その結果、様々なトラブルを生んだ例も少なくない。どんなことにも問題点はつきもので、この潮流もまだ過渡期という証左」(衣輪氏)と続ける。

迷惑がられる“野次馬”の存在、一方で撮影側のロケ地選定に問題も?

 もう一つの問題点、それが“野次馬”だ。前述の野木氏の発言では、近所迷惑と、撮影ができなくなることを懸念して「SNSなどで場所などをつぶやかないで」と発信。実際『逃げ恥』の時も撮影を中断せざるを得ない事態もあったようだ。また、放送当時、一般の方が住んでいるマンションの近くを大勢のファンがつめかけ、撮影中ではない時間帯にも迷惑をかけていたことなどをホームページで“公式”に注意喚起。今はSNSの普及によりロケ地の特定、拡散が容易になっているため、大勢の人が詰めかけやすい状況なのだ。

 しかし、自分の知っている土地や馴染みのある場所がテレビで映るとつい “お知らせ”したくなるのは人の性。ただ野木氏の発言には「放映が終わった後にロケ地巡りしたいです」「撮影終了後の節度を保った聖地巡礼と、撮影中の迷惑なロケ地押しかけをちゃんと区別していきたいです」など多くの賛同も寄せられており、ファン間でも節度を守ろうとする動きはある。

 逆に「ロケ現場の選定に問題はないのか?」という声も。公共の場であれば、人が集まるのは当然のこと。そこを通りたい人、使用したい人もいる。SNSを見ると「撮影のせいで迂回させられた」のほか、「店員ですが、お店の前でロケがあったとき、ADさんが謝りに来たのに、立場が上っぽい人が横柄で興ざめした」などの苦言も。

 「まだ完全ではないですが撮影側もさまざまなアイデアでこの問題を減らそうとしています。例えばリフォーム系番組であれば、ロケ現場の周囲を撮影ではなく“工事中”(ウソではない)としてスムーズな通行を促す場合も。ですが今後のさらなる改善が望まれています」(衣輪氏)

 聖地巡礼は作品の応援にもつながるし、地域や店舗を応援することにもつながる。しかし節度がないと成り立たない。特定・拡散による撮影に迷惑をかける行為はもちろんのこと、ドラマ撮影後も近隣に住んでいる方にとっては日常の場であることは忘れてはいけない。また撮影側も「いい作品を作る」だけでなく、配慮を忘れないよう日々アイデアを出し合うことも作品作りの重要な一部となるのではないだろうか。

(文/西島亨)

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