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エンタメの“鉄道コラボ”が増加、あえての“アナログ戦略”が有効なワケ
昔ながらの装飾や発車メロディー、“ご当地感”やゆかりの地への“恩返し”として重宝
駅(鉄道会社)側にしてみれば、乗客により親しみやすさを持ってもらい、曲を提供した側にとってもゆかりの地へ恩返しができるということで、キャンペーン的な要素は薄い。どちらかと言えば“地元愛”を表現する場であったり、“ご当地感”を楽しむことを基本としていたのだ。
ところが今年の夏だけでも、渋谷ヒカリエで展示会を開催中の「安室奈美恵×東急東横線・渋谷駅」や、ABCテレビ『夏の高校野球』応援ソングを務めた「嵐×阪神電車・甲子園駅」のような近くで開催されるイベントにちなんだ発車メロディーや、「京急線(120周年)×北斗の拳(35周年)」、「西武線(スマイルトレイン10周年)×ぐでたま(5周年)」、「リラックマ(15周年)×山手線」のように、 “アニバーサリー(周年)”に紐づけて開催されたもの、また、ドラマを盛り上げる「おっさんずラブ×西武池袋線」など、“ゆかりの地”だけではない期間限定のコラボレーションが話題になっている。
前述の京急電鉄と『北斗の拳』のコラボレーションは「北斗京急周年のキャンペーン」であり、京急蒲田駅の他にも上大岡駅が「上ラオウ岡駅」、県立大学駅が「北斗の拳立大学駅」に駅名を変更。その他、北斗七星の形になる7駅でのスタンプラリー、ケンシロウたちをあしらったラッピング電車も運行。また、本日9月1日発売の限定切符「北斗の券」も即日完売が予想されており、すでに販売されているコラボグッズも完売が続出している。さらに京急百貨店で肉まん→「『ひでぶ』まん」、から揚げ→「『あべし』揚げ」が販売されるなど、京急グループ全体で盛り上げているのが特徴だ。
“日常”にある宣伝効果に期待 SNS拡散がカギに
近年、“キャンペーン”と言えばネット上の印象だったが、鉄道コラボは実際に目で見て触れられるという、いわばアナログな手法がメイン。だが、もともと多くの人が集まる駅は日常生活の中に溶け込みながらも、ユーザーが物珍しさからSNSで拡散。それを見たユーザーが実際に足を運ぶなど、今の時代ならではの更なる宣伝効果が見込める。
このように鉄道コラボが話題になる理由について、伊藤さんはこう分析する。
「生活の身近にある鉄道だからこそ、お客様がSNSなどで発信しやすいという側面があると思います。また、鉄道全般の堅いイメージとは一転した企画というところに興味関心をもっていただいたお客様も多いのではないかと思います」
実際、SNSが普及する前後で比較すると、「ネットが普及する前は中吊りや駅貼りの広告を目にする沿線の方の利用がどうしても多かったのですが、ネットやSNSの拡散効果により、京急を知らない・乗ったことがないという人の利用が増えております」(伊藤さん)とのこと。主流のネット先行型ではなく、アナログ先行→SNS誘導型の鉄道コラボは、より拡散力を強化して集客する流れになっている。
企業同士の相乗効果、利用路線への愛着が作用する“愛されコンテンツ”に
『北斗の拳』とのコラボでは、そのようなメリットに加え、さらなる効果を期待して『北斗の拳』側から話があった。
「『北斗の拳』は 40歳代の男性に特に人気のある作品ですが、若年層の方にも興味を持っていただきたいというお話もありました。鉄道自体の、生活の身近なところにあり、かつ幅広い年齢層のお客様にアプローチできるという点を評価いただいているのではないかと考えております。そして、毎日当たり前に乗る電車、毎日当たり前に利用する駅が少し日常と違うだけで、インパクトがかなりあるようです。また、自分が利用する電車・駅には皆様すごく愛着を持っていただけているという土壌があるので、コラボするキャラクターへの愛着につながるということもあるようです」(伊藤さん)
近年、多くの企業が趣向を凝らしたキャンペーンをネット上で展開しているが、もはや飽和状態とも言える。ユーザーにどれも同じように思われたり、広告がうるさがられたりして、目に留まるのも大変。ましてや幅広い層にクリックさせるとなると至難の業だろう。しかし、鉄道コラボでは幅広い層にアプローチしながら、路線やコラボしたキャラクターなどを“愛されコンテンツ”に育てることもできる。互いのブランディングとしてもいい結果を出すことができるのだろう。
ネット社会だからこそ新鮮味もあるアナログな“鉄道コラボ”は、今後も有効な手法として重宝されるのではないだろうか。