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『イッテQ!』『エヴァ』『銀魂』…声優&ナレーター立木文彦が語る“声の仕事”の極意

 『世界の果てまでイッテQ!』(日本テレビ系)でのナレーションをはじめ、アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウ役などを担当する声優・ナレーターの立木文彦。アニメ『銀魂』のマダオこと長谷川泰三役も代表作のひとつだが、今回、dTVオリジナルドラマ『銀魂2 −世にも奇妙な銀魂ちゃん−』(第3話)で、同役柄を実写で演じることとなった。アニメからバラエティー、洋画まで、幅広く活躍する立木。誰もが一度は聞いたことのあるダンディーな声を持つ彼の、“声の仕事”への向き合い方とは?

アニメに洋画、バラエティーで活躍する、異色の声帯の持ち主

  • ドラマ版に実写で出演する立木文彦

    ドラマ版に実写で出演する立木文彦

 1980年代から声優の仕事を始め、『うる星やつら』や『新世紀エヴァンゲリオン』、『機動戦士Zガンダム』など、多くの有名アニメ作品で脇役の“声”を担当してきた立木。一方、洋画でも『キル・ビル』、『スパイダーマン』、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどの吹き替えを担当。『世界の果てまでイッテQ!』や『炎の体育会TV』(TBS系)など、バラエティー番組のナレーターとしても活躍している。多種多様な仕事をしながらも、「声が枯れたことはない」という、“異色の声帯”の持ち主でもある。

 そんな立木は、映画『銀魂2 掟は破るためにこそある』公開に伴って製作された、dTVオリジナルドラマ『銀魂2 −世にも奇妙な銀魂ちゃん−』に出演。アニメ版で声を担当した長谷川泰三役を、なんと実写で演じているのだ。

 「オファーが来たときは、まさかと思いました。声優の仕事だと、周りは古くからの知人ばかりなので、その中で自分を出していけばいいだけなんです。でもドラマの現場は、ある意味で孤独。戦地に赴くような緊張感でしたね」。

 アニメでは、「自分なりに、独特のマダオ感、悲哀を感じさせるよう心がけている」というマダオ役。それほど大事にしている役柄でも、実写となると「勇気と愛情なしではできないこと」だったという。撮影ではもちろんマダオの衣装をきっちり着込み、「コスプレが好きな人の気持ちがよくわかりました」と、新たな発見もあったようだ。

 映画で主演を務める小栗旬とも、ドラマで共演。「衣装を着た僕と会ったときの小栗さんのリアクションが、まるで有名な人を見たときのようで。小栗さんに『一緒に写真を撮ってもらえませんか』と言われましたが、思わず心の中で『逆だろ!』とツッコミました(笑)。あれほど楽しい現場はそうそうないですね」。

『イッテQ!』では“生身の人間”としてツッコむ

 このように、声優ばかりか実写の演技にまで挑戦する立木だが、ナレーションもまた、活動の大きな柱だ。ナレーションと一口に言っても、バラエティーのナレーション、アニメのナレーションでは、大きな違いがある。立木はその差異について、「アニメのナレーションは物語にはいないキャラクターとして捉えています。世界観から外れてはいけないから、バラエティーより難しい」と語る。

 それぞれに魅力はあるが、とくに幅広い世代に浸透しているのは、やはり『世界の果てまでイッテQ!』のナレーションだろう。ときには声のみで出演者をいじり倒してツッコミを入れ、何か失敗すれば「イエーイ」と喜ぶ。VTRを面白くするために、立木の声はもはやなくてはならない存在と言ってもいいだろう。

 「バラエティーではアニメと違い、“生身の人間”として出演者にツッコんでいます。番組の“裏の顔”のような感覚ですね」。

 そんな立木にとって声の仕事は、「芸人さんの生き方に近い」という。「声で演じるだけでなく、パーソナルな部分、自分を出さなきゃいけない仕事。そういう意味では、芸人さんと共通するところがあるんじゃないかと思います。おそらく芸人さんも、個性を出さないとネタは面白くならないんじゃないかな。声の仕事でも同じようなところがあるので、そこが難しいんですけどね」。

声優の仕事に悩んでいた頃、『エヴァ』碇ゲンドウ役がターニングポイントに

 長く声の仕事を続ける立木にとって、ターニングポイントとなった役柄は、『新世紀エヴァンゲリオン』の碇ゲンドウ役だそうだ。ゲンドウは主人公・碇シンジの父親で、目的のためには手段を択ばない非情なキャラクター。その圧倒的な存在感は、立木の声なくしてはあり得ないという声は多い。

 「当時は声優という仕事について悩んでいたというのもあります。でも碇ゲンドウを演じることで、多角的に物事をとらえることができるようになりました。そんな時代もあったせいか、昔より今のほうが遊び心が出てきたというか、気持ちが若くなっている気がするんです。今は常に前を向いて、新しいことと出会うたびに喜んで、犬みたいにキャンキャンって近寄っていく感じですね(笑)」。

市民権を得た声優という職業、「本質を磨くことも忘れないでほしい」

 では、ここまで多くの作品やジャンルから求められる、自身の声の魅力とは?

 「魅力かどうかわかりませんが、これまでの役の反響が大きいことを考えると、おそらく妙に目立っちゃっているんだろうなって思います(笑)。でも、色々な分野で起用されるということは、自分を信頼してくれているということ。それはありがたいことですし、とてもうれしいことです」。

 元々は、『銀魂』で演じる長谷川=マダオ(まるでダメなおっさん)と同じような部分があるという立木。「僕は決断が遅くて。あっちもいいな、こっちも楽しそうだなって、マダオのように欲張りなところがあるんです。そういう資質が、色々な仕事を自然にできることと関係しているのかもしれません(笑)」。

 好奇心を持って様々なジャンルで活躍する立木だが、そんな彼の目に、アイドル的な活動も行う最近の若手声優たちはどう映っているのだろうか。

 「声優という職業が市民権を得られたことは良いことだと思います。今や、ダンスがうまい人が映画の主役もやるし、アイドルが吹き替えもする時代。色々なものとリンクした相乗効果で作品が高められれば、悪い方向には絶対にいきませんから。ただ、ビジュアルを重視しすぎて、芝居の力が欠けてしまうと、もしかしたら後から苦しくなってしまうかもしれません。若い人にありがちなことですが、本質を磨くことも忘れないでほしいと思います」。

「マダオもそうですが、偶然にもサングラスをかける役が多い」

 声の仕事について、向き合い方について語ってくれた立木。真剣な話から、ユーモアを交えて盛り上げる様子まで、非常に話術が巧みで、サービス精神が旺盛だ。

 取材の最後には、「マダオもそうですが、偶然にもサングラスをかける役が多いんです。もし今後も実写に出させてもらうことがあったら、キャラがサングラスをかけているかどうかで出演を決めたいと思います(笑)」と笑顔。ベテランでありながら、新たな分野にも果敢に挑む立木は、これからも様々な声や演技で楽しませてくれそうだ。

(文:今 泉)

dTVオリジナルドラマ『銀魂2 −世にも奇妙な銀魂ちゃん−』

■配信開始日:8月18 日(土)0:00〜配信スタート
※立木が出演する第3話は9月1日(土)0:00〜配信スタート
■配信話数:全3話(「眠れないアル篇」「土方禁煙篇」「いくつにっても歯医者はイヤ篇」)
■出演: 小栗旬・橋本環奈/柳楽優弥
吉沢亮 立木文彦・中村勘九郎/堤真一
■脚本/監督:福田雄一
■原作:『銀魂』空知英秋(集社『週刊少年ジャンプ』連載)
(C)空知英秋/集英社 (C)2018映画「銀魂2」製作委員会 (C)2018 エイベックス通信放送
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