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かついで帰ればミュージシャン気分 マツキヨの「ラジカセ」トイレットペーパー誕生の背景
これは、4月中旬よりマツモトキヨシのプライベートブランド「matsukiyo」から販売された『mkふんわり3枚重ね12Rトリプル18mラジカセ』という製品で、その名の通りパッケージに「ラジカセ」のプリントが大きくされたもの。コンパクトなmp3プレーヤーも無かった1980年代、音楽を聞くためにラジカセは必需品で、アメリカではアーティストがミュージックビデオでラジカセをかつぐシーンも見られた。そのため、このトイレットペーパーをかついで帰れば、気軽にミュージシャン気分を味わえるというわけだ。
そもそもトイレットペーパーは、大きくて持ち運びにくいという印象があったが、そこに「matsukiyo」は“エンタテインメント要素”をプラス。ラジカセ以外にも、「赤ちゃん」や、野菜がはみ出た「買い物バッグ」など4種類がラインナップされており、デザインによって持ち方を変えて楽しむことができる。
これが功を奏し、1953年から続くドイツの国際デザイン賞「iFデザインアワード」ほか、計3つの海外デザイン賞を受賞するなど、SNSだけではなく海外でも認知度が上昇中。今回、開発を担当した株式会社マツモトキヨシホールディングス商品部の乙幡満男さんに背景を聞いた。
「持ち帰るのが恥ずかしい」を「楽しい」に変えて世界のデザイン賞に
【乙幡さん】 「日本中をあっと言わせるようなブランドにしよう!」との思いでしたが、まさか世界の賞を取るとは夢にも思っていませんでした。そもそも以前の「マツモトキヨシ」のプライベートブランドは、品質や価格とのバランスの面についてはお客様に高く評価していただいたのですが、デザインについては、「ほかの商品と似たようなデザインの製品が多い」とご指摘されていました。このことから、装い新たにブランドを刷新することになり、2015年12月にできたのが、「matsukiyo」になります。
――もともと、“トイレットペーパーを持ち帰るのが気恥ずかしいと感じている生活者のインサイトに着想を得た”とのことですが、他にも開発するに至ったポイントがあればお聞かせください。
【乙幡さん】 ECが台頭する中、“店舗で買うことの良さ”をどう打ち出すべきかが開発のベースにありました。ECでは家まで届けるのは配送業者の方かもしれませんが、“お店から家まで持ち帰る”という行為はリアルの店舗でしかできません。正直、ラジカセがプリントされたトイレットペーパーなわけですから、もしかしたら通常のトイレットペーパーよりもっと気恥ずかしいかもしれませんが、「マツキヨって面白いもの出してるよね」と思っていただければ我々としては嬉しい限りです。
乙幡さんは「他のデザインについても順次発売する予定」と話しており、今後もインパクト大なトイレットペーパーはシリーズ化されていくようだ。
Twitterで話題になったエナジードリンクは売上が10倍に
【乙幡さん】 『EXSTRONGエナジードリンク』がTwitterで話題となりましたが、売上がそれまでの10倍以上となりました。今でも高い売り上げを維持しております。このトイレットペーパーも、SNSで話題になることで、今後さらに人気が出ることを期待しております。
――こうした自社規格で、既存にはない製品を生み出していける理由はどこにあるのでしょうか。
【乙幡さん】 「matsukiyo」の商品は、暮らしを楽しくしているか、彩りを与えているか、驚きがあるか、いわゆる“マツキヨらしさ”があるかどうかが開発の判断基準になります。会社としても、他社がやらないことにチャレンジするのを推奨しており、開発しやすい環境が整っています。
トイレットペーパー以外に注目すべきは「医薬品」?
【乙幡さん】 トイレットペーパーとはひと味違ったユニークさを打ち出しているのは、“医薬品シリーズ”です。ご存知のようにマツモトキヨシはドラッグストアですので、当然医薬品も扱っております。そんな中でお客様と薬剤師とのコミュニケーションはとても重要になります。しかしながら、薬剤師は裏面の小さい文字に指をあてて説明をしなければなりません。これではユーザーフレンドリーとは言えません。
このことに着想を得て、「どの症状に有効か」「薬のそれぞれの成分が何に効くのか」をパッケージに大きく書いたデザインを採用したとのこと。今後、「matsukiyo」ブランドでは、“第2のトイレットペーパー”を狙ったプロダクトも開発中とのことだ。