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(更新: ORICON NEWS

“遊びの達人”所ジョージ、他人の評価に頓着しない『無関心力』

 今年の3月、『とんねるずのみなさんのおかげでした(みなおか)』(フジテレビ系)、『めちゃ×2イケてるッ!(めちゃイケ)』(同)、『「ぷっ」すま』(テレビ朝日系)といった長寿番組が立て続けに終了し、バラエティ番組が節目を迎えている。ところが、所ジョージが持つレギュラー番組への影響は“皆無”。今では、長寿番組を持つ司会者として“筆頭”とも言えるポジションになっているのだ。なぜ所は世代を超えて愛され続けているのか? タモリの系譜とも言える“遊びの達人”所ジョージの『無関心力』とは?

次々と「長寿番組」が終了する中、見渡せば所ジョージの“独壇場”に

 『みなおか』や『めちゃイケ』など、一時代を築いた長寿番組が終了していくなか、所の番組はいまなお健在。実際、29年続く『所さんの目がテン!』(日本テレビ系)、28年続く『世界まる見え!テレビ特捜部』(同)、22年続く『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(同)、13年続く『学校では教えてくれないそこんトコロ!』(テレビ東京系)、11年続く『所さんの世田谷ベース』(BSフジ)といった具合に、10年以上続く番組が5本。

 さらに、14年開始の『所さん!大変ですよ』(NHK総合)、17年開始の『所さんお届けモノです!』(TBS系)などを加ればレギュラー番組だけで8本。そのほか、不定期番組で1991年開始の『はじめてのおつかい』(日本テレビ系)、02年開始で現在は特番として放送する『大改造!!劇的ビフォーアフター』(テレビ朝日系)など人気の特番も持っている。

芸人? シンガー? 所ジョージは「一体何者」? 視聴者を惹きつける“謎のおじさん”感

 生粋の“趣味人”として知られ、自動車、バイク、ガン、各種骨董などのコレクターとしても有名だが、そもそも彼は芸人なのか、役者なのか、シンガーなのか…その立ち位置は実に曖昧。いわゆる“謎のおじさん”なのだ。

 所は、77年にシンガーソングライターとしてデビュー。同年に『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)のパーソナリティに抜擢されて以降、タレント業に進出。79年から『ドバドバ大爆弾』(テレビ東京系)のMCとなり一躍知名度を増していく。83年から『笑っていいとも!』(フジテレビ系)のレギュラーとなり「金言・格言 色紙でどうじょ!」などのコーナーで人気を博した。

 俳優としては、『うちの子にかぎって…』、『パパはニュースキャスター』などTBS系のドラマに出演。93年には黒澤明監督映画『まあだだよ』で日本アカデミー賞助演男優賞を受賞。さらに、声優としても『トイ・ストーリー』のバズ・ライトイヤー役、宮崎駿監督アニメ映画『崖の上のポニョ』などに出演し、その器用な役者っぷりを披露してきた。ただ、どんな分野でも一定の評価を得ながら、そのシーンでトップになろうという“執着”は感じられない。

 今でも多くのレギュラー番組を持ちながら、その実「カンペは見ない」と公言するなど、TV局側の意向に染まる気もない。そんな“力の入っていない”自然体な進行だから、所のアンチは極端に少なく、子どもからお年寄りまで“全方位的”に支持されている点は特筆だ。実際、ネットの声を拾うと「人生を謳歌するっていうのを体現している」、「人を貶めないから安心して見ていられる」、「常に自然体で見ていて疲れない」といったポジティブな声がほとんどなのだ。

 ORICON NEWSによるアンケートでも、『理想の上司ランキング 2014【男性部門】』で1位、『理想の父親ランキング2014』2位、『ボスになってほしい有名人ランキング』2位と上位に君臨。その醸し出す“包容力”と“安心感”で、視聴者からは理想の大人として見られていることが見てとれる。

所ジョージを形成した赤塚不二夫の「面白グループ」 座長っぽくないのはタモリの系譜?

 そんな自然体のスタイルが支持される所だが、17年1月11日に行われた『人生で大事なことは〇〇から学んだ』(テレビ朝日系)の会見で「デビューしたときからずっと視聴率を気にしていない。いい番組をやっている自信があるから、それでいいんじゃないかな」と、視聴率や他人の評価に対する“こだわりの無さ”を飄々と語っている。

 特に、自身のMCについては「番組が用意したVTRを見て、いっしょに出ている人たちに話を振ってみたりね。かんたんに言えば、VTRを見ているだけの仕事(笑)」とまで豪語。そんな発言からも分かるように、MCとして「番組を回すぞ!」という気負いや、座長っぽさは所からは見られない。

 実際、2014年10月8日放送の『ナカイの窓 秋の二時間SP』(日本テレビ系)で所は「出てくるゲストの方の情報なりは頭に入ってる。でも、その昔話をしても、今が光らないから。今の面白いことで盛り上がってもらって、帰ってもらいたい」と発言。あくまで、現場で生まれる“自然な雰囲気”を大切にしていることを明かしていた。

 前述の通り、所には視聴者を何がなんでも「笑わせるぞ」という気負いがない。そのため、視聴者も気構えず、肩の力を抜いたリラックスした状態でTVと向き合うことができる。人を貶めて笑いを取るような発言もしないため、“害のない司会者”として子どもからお年寄りまで家族揃って安心して見られる存在なのだ。

 実は、そこには漫画家・赤塚不二夫を師匠とするタモリの系譜があるという。79年頃、赤塚を中心とした「面白グループ」といわれる集まりがあった。芸人・歌手・俳優から放送作家までメンバーは様々。そこで生まれたのがタモリの伝説の芸・「イグアナのモノマネ」や、「中洲産業大学の冴えな教授」のネタであったようだ。

 本グループに所属していた所は、それを「くっだらないことをしてる大人だ」と思って見ていたのだという。しかし、実際は赤塚やタモリが見せる「仕事をしない」、「仕事で遊ぶ」という姿勢は所の“土台”となっており、師匠筋からの影響を如実に受けていることが伺える。

お笑いBIG3・明石家さんまも憧れる、TVで“力を抜く”所ジョージの凄み

 自分の番組に対する評価を気にせず、自分がやって楽しいかどうかを主軸に生きてきた所。そのため、昨今バラエティ番組が次々と打ち切りとなっている中でも、所の“尻に火がついた感”は全くない。明石家さんまも15年9月26日放送のラジオ『ヤングタウン土曜日』(MBS)で、所のこだわりのなさについて次のようにコメント。

 「たまに所さんとタモリさんは羨ましい時がある。『ようこれだけ力が抜けるな〜』っていう。俺たち(さんまとビートたけし)はでけへんねん」と、力を抜いて仕事をしている両者への畏敬の念を隠さなかった。

 所本人も番組作りについて、頭で考えた“机上の空論”ではなく、“暮らしを見せること”が大事だとORICON NEWSのインタビューに答えている。「指示されたことをやるだけなら、ボクじゃなくていい。どれだけ“暮らし”をいっぱいやっているか、その人の話を聞きたい」と、生活感のあるリアリティを大切にしていると語っている。つまり、所にとって必要以上に作り込んだ演出や、タレント自体の気負いは“リアルではない”という感覚なのだろう。

 また、2015年4月3日放送の『あさイチ』(NHK総合)で所は、「なりたいものになるんじゃなくて、なったものが自分なんだよ。なりたいものを求めるんじゃなくて、そこで楽しく暮らせよってことだよ。そしたらやがて、勝手に夢が出てくるから」と発言。赤塚が『天才バカボン』で描いた「これでいいのだ」の自己肯定感を元に人生を歩んできたことを明かしている。

 つまるところ、所の最大の武器は、他人の評価を気にせず「これでいいのだ」と自己肯定する『無関心力』。それはまさに、赤塚不二夫からタモリに受け継がれた系譜そのもの。所もタモリも、TVでは暮らしの“楽しさ”や“遊び”を見せることが重要だと強調してきた。近い将来、その系譜を引き継ぐ『無関心力』を備えたタレントが現れることに期待したい。

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