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感情移入を拒否? 新しいオーディション番組の形を確立させた『ラストアイドル』
挑戦者が好きな立ち位置の暫定メンバーを指名 前代未聞のサバイバルバトル
番組スタートの翌週から、オーディションで選ばれた挑戦者が、暫定メンバーの中から指定したひとりと歌唱パフォーマンスを競っていく。暫定メンバーが敗北した場合は即解雇、翌週からいなくなり、挑戦者は去った暫定メンバーの“立ち位置”をそのまま引き継ぎ、新たな暫定メンバーとなる。そんな超過酷なサバイバルバトルをくぐり抜け、ついに今月の17日に最終メンバーが決定した。そして、これも予定通りに12月20日、ラストアイドルはめでたくメジャーデビューを飾ったのだ。
視聴者の感情移入を“拒否”? メンバーの友情やアイドルの成長物語は一切なし
ただ、敗北した暫定メンバーや挑戦者も、別に始動するセカンドユニットへの参加の可能性が残されており、実際すでに4つのグループが結成されている。となれば、1997年に『ASAYAN』(テレビ東京系)で行なわれた「シャ乱Q女性ロックボーカリストオーディション」で落選したメンバー5人によるモーニング娘。を思い起こす人も多いだろうが、当時は視聴者が敗者復活という“物語”に感情移入し、後の大ブレイクにつながったのだ。
秋元氏本人の手による一連のAKB48グループにしても、“会いに行けるアイドル”を標榜し、ファンたちが“推しメン”と一体となって応援するというスタイルが絶大な支持を得たわけだが、『ラストアイドル』の場合は選考方法があまりにも“ガチ”であるため、ファンがメンバーに感情移入する暇がないというか、感情移入自体を“拒否”しているかのようにすら見え、ひたすら波乱万丈な展開に最終ゴールまで目が離せなくなるのだ。
“個”を重視した審査 狙うは本物の“アイドル・オブ・アイドル”か?
しかしこの方式も、「審査は多数決にしたらどうか」という演出家・田中経一氏の提案に対し、秋元氏が自ら「(多数決では)指原莉乃は生まれない」と否定したことからはじまる。おニャン子クラブやAKB48など、“素人っぽさ”や“親しみやすさ”をコンセプトに入れてきたはずの秋元氏が、これまでの“民意”に信をおいた手法から、アイドル候補者にも審査員にも、徹底的に“個”であることを要請した手法に変えたと言うこともできるだろう。それも長年、芸能界を見てきた氏に思うところのある“壮大な仕掛け”なのかもしれないし、本物の“アイドル・オブ・アイドル”を作りたいという本気度なのかもしれない。
そして先日の17日、最後の7人目のメンバーが確定する回にも、吉田氏がまさかの審査員指名。スタジオのみならず視聴者にも緊張が走る中、吉田氏は暫定メンバーに軍配を上げ、チャレンジャーはセカントユニットへと拾われていくのだが、この吉田氏のジャッジに関しても、ネットでは「空気を読んだ」、「守りに入った」などと揶揄される反面、「(番組としては)いいスパイスになった」という見方もあり、いずれにしろ番組を盛り上げる効果としてはたしかに絶大なものがあったのは事実なのだ。
『ラストアイドル』は、これまでのアイドルのオーディション番組とは一線を画した、まったく新しいオーディション番組の姿であることはたしかだろう。そしてそこには、新しい“アイドルの形”が誕生する可能性も秘められているのかもしれない。