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阿川佐和子、『陸王』での好演で女優としても評価上昇 持ち前の“聞く力”が相乗効果に
阿川の好演に視聴者が涙 「女優じゃないの?」との声も
そんな阿川が演じるのは、老舗足袋業者「こはぜ屋」縫製課の女性工員リーダー・正岡あけみ。阿川の芝居に、視聴者から最も好評価が集まったのは、第1話終盤のクライマックスシーン。役所演じる「こはぜ屋」社長・宮沢紘一が、融資を渋る銀行員・大橋(馬場徹)を怒鳴りつけるシーンで、あけみは、社長のマラソン足袋製作と仲間への熱い想いを聞き、涙をこらえる…。この迫真の演技にSNSでは、「阿川さんがこの物語のヒロイン」「泣けた」「演技が自然すぎて、普通に“えっ女優さんじゃないの?”ってなった」などの絶賛コメントが多く上がった。
当シーンの現場に密着していたメディア研究家の衣輪晋一氏は、当時を振り返りこう語る。「リハーサルから、宮沢社長の“バカにするのは止めて頂きたい!”の激高の台詞を役所さんが全力で演じるなど、現場は緊迫感に包まれていました。そんな中でも、阿川さんは合間には談笑するなどリラックス。さすが『TVタックル』などで、たけしさんなど大物や、大竹まことさんのようなクセ者を相手に平然と進行、ツッコミを繰り広げられる方ですよね」と感嘆の声。役所という大物のすぐ側で丁々発止のやり取りをすることが多いあけみ(阿川)を見て、衣輪は「『TVタックル』の光景のようだと感じられる方も多いのではないでか」と語る。
お芝居に連続性を産み出す“聞く力”の効果
さらに言えば、著書『聞く力』には、「インタビュー時、次にどんな質問をするかばかり考えていると、肝心の相手の話はほとんど入ってこない。全然聞いてないに等しい。それを続けていると、相手の話を聞いてないから話に連続性が生まれません」と記述がある。これについて衣輪氏は「某キー局プロデューサーに芸人の俳優起用伺った際、芸人さんは、相手を受けてリアクションする芸に長けているから下手な役者よりお芝居や話に連続性が生まれやすいと話していました。これは『聞く力』の記述につながりますよね」と解説する。
「福澤組」が阿川のさらなる魅力を引き出す
テレビドラマは俳優以外を“飛び道具“的に活用することが多いが、「福澤組」はその傾向がとくに強く、さらに極めて上手い印象がある。阿川自身も今回の役柄のキャスティングについて「阿川佐和子の本質を見抜かれていたのではないかと思った」と話したほどだ。
俳優以外の起用については、福澤監督は過去に「テレビではよく見ても、芝居は見たことないような人が出ると、視聴者としてはそこだけでも楽しみがある」と語っている。付け加えて衣輪氏も、「『逃げるは恥だが役に立つ』(同)に携わり、現在『監獄のお姫様』(同)をプロデュースする宮崎真佐子さんも、俳優以外を起用すると、どんな芝居の転がり方をするか読めないところがあり、それは作る側にとっても新鮮で良い物が生まれやすいと分析されていました」と語る。阿川を「ヒロイン」とする声が視聴者から上がる通り、阿川には初レギュラーながら、ドラマ界に新風を巻き起こす存在になる可能性が、すでにあるのだ。
「福澤組」から、その“聞く力”を最大限に引き出され、大物に負けない好演を見せる阿川。『陸王』でのあけみの活躍は、今後の同作を占う重要なファクターであることは間違いない。
(文:中野ナガ)