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かつてはメガヒット連発も…“テレビ発”でヒット曲が生まれなくなったワケ

  • 2008年に大ヒットした「羞恥心」

    2008年に大ヒットした「羞恥心」

 「およげ!たいやきくん」から、「WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント」「慎吾ママのおはロック」まで……これら一連のヒット曲に共通するのは、“テレビ番組発のヒット曲”ということだ。特に2000年代前半は、番組内の企画やネタから派生したユニットによるヒット曲が大流行していたが、近年の同アプローチによるヒット曲はと言うと、2008年にヒットした『クイズ!ヘキサゴンII』(フジテレビ系)内の企画ユニット・羞恥心による「羞恥心」が最後だ。もはやテレビ番組からは、ドラマ主題歌以外のヒット曲が生まれることはないのだろうか?

子ども向け番組からバラエティまで ヒット曲を生んだ様々な番組

 テレビ番組発のヒット曲と言えば、今の中年以上で最初の記憶となっているのは、おそらく「およげ!たいやきくん」だろう。同曲は1975年、フジテレビで長年放送されていた子ども向け番組『ひらけ!ポンキッキ』内でアニメと一緒に放送されたものだが、放送開始直後から哀愁を帯びたメロディと歌詞が大反響となり、457.7万枚を売り上げ、いまだにオリコン歴代シングル売り上げランキングの第1位なのである。同時期には、『みんなのうた』(NHK)発の「山口さんちのツトム君」(1976年)も大ヒットし、以後「だんご3兄弟」(1999年)、「おしりかじり虫」(2007年)と、『みんなのうた』発のヒットが続く。

 これらは子ども向け番組発のヒット曲だが、1990年代後半になって流れが変わってくる。1995年、音楽番組『HEY! HEY! HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ系)内で、ゲストで登場した小室哲哉にダウンタウンの浜田雅功が、「僕にヒット曲プロデュースしてください」と言ったことをきっかけに発売された『WOW WAR TONIGHT 〜時には起こせよムーヴメント』(H Jungle with t)が、200万枚を超える大ヒットを記録。すると、『ウッチャンナンチャンのウリナリ!!』(日本テレビ系)から派生した音楽ユニット・ポケットビスケッツのCDもヒットし、それに対抗する形のBLACK BISCUITSもCDデビューするという、番組内を巻き込んだ“企画”に発展。以後、その流れはスタンダード化していくのである。

番組の飽きさせない“遊び心”がヒット曲誕生へと発展

 1996年には、『進め!電波少年』(日本テレビ系)でユーラシア大陸横断ヒッチハイクを成功させた猿岩石(有吉弘行がいたお笑いコンビ)の「白い雲のように」もミリオンセラーとなり、『ダウンタウンのごっつえぇ感じ』(フジテレビ系)のコント内のキャラ「エキセントリック少年ボウイオールスターズ」が1997年にシングルを出すにいたると(オリコン最高4位)、“バラエティ番組内の企画発ヒット曲”は完全に“主流”に。その流れは2000年代に入っても続き、『笑う犬』シリーズ『笑う犬の冒険』(同)の「はっぱ隊」がブレイクし、「YATTA!」が週間ランキングでTOP10入りする(2001年)。元SMAPの香取慎吾が『サタ☆スマ』(同)内で扮するキャラクター・慎吾ママ名義で発売した「慎吾ママのおはロック」(2000年)も“番組発のヒット曲”と言えるだろうし、『ココリコミラクルタイプ』(同)のユニット「時給800円」(2003年)や、『ワンナイR&R』(同)のゴリエとくずもヒットを飛ばしていく。

 これらのヒットの背景には、新人タレントの悪戦苦闘や成長過程をうまく演出し、視聴者を飽きさせない番組作りができる制作スタッフや所属事務所、そして企画段階からCDデビューへの流れを戦略的に組んでいたレコード会社側とのウィンウィンな関係があったと思われる。しかし、2005年前後からデジタル化が急速に進み、CDの販売数も右肩下がりになると、番組発のヒット曲も誕生しにくくなっていく。

趣味嗜好の分散、視聴者層の高齢化…厳しい現状を打開する新たなヒット曲誕生は?

 昨今はYou Tubeなどの普及により、個人のニーズに合わせた視聴が当たり前となり、CDを買う前に各自の趣味嗜好で楽曲を選ぶことができるようになったし、またダウンロード販売など楽曲購入の手段も多様化した。楽曲の人気自体も番組の企画などとは関係なく、YouTubeの再生回数が指標となりつつある。今や番組の企画から生まれた曲でなくても、大きなムーブメントとなりうるヒット曲は生まれづらくなっているのである。

 一方、テレビ側としても視聴率の低下、制作費削減などの事情もあり、バラエティ番組でもコストのかかるコント番組が減少すると同時に、人気キャラのCDデビューという流れも減少傾向に。再現フィルムを観ながら、MCを含むレギュラー陣+毎週変わるゲストがひな壇形式でトークを回す……という形式が主流になり、かつてのコント番組を引っ張っていた強烈な破天荒キャラなどは絶滅寸前だ。もはや『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ系)発の矢島美容室(2008年)に代表されるような、大物芸人の“お遊び”的なノリでCDデビューという流れは、“古きよき時代”的な昔話になりつつあるのである。

 以前は子どもたちをターゲットにしていたバラエティ番組も、最近は中高年層に狙いを定めており、かつてロンドンブーツ1号2号の田村淳が子どもたちのために作ったキャラクター“もずくん”など、子ども向け楽曲のヒットが出る余地もなくなっている。インターネットやSNSの爆発的な普及により、テレビ番組のコンテンツのあり方や内容に急激に変化を求められている影響なのだろうが、ほんの10年ほど前までは、その年を象徴するようなヒット曲を生み出していたこともあるだけに、再び番組発の楽曲コンテンツの誕生を願ってやまない。

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