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TVの鉄板コンテンツ、時代と共に進化続ける “マジック”の魅力

  • “イリュージョン”で観客を魅了する引田天功

    “イリュージョン”で観客を魅了する引田天功

 昭和の時代からいくつものブームを巻き起こし、常にTVにおける鉄板コンテンツとして定番の人気を誇るのが“マジック”。『笑点』(日本テレビ系)の演芸コーナーに出演するマギー司郎&審司のようなユルい“伝統芸能”的なものもあれば、かつてのMr.マリックの“超魔術”や、引田天功に代表される“イリュージョン”などなど、様々なアプローチで視聴者を引きつけている。今なお色褪せず、エンタメ界の一大ジャンルとしてお茶の間に愛されるマジックの魅力は一体どこにあるのだろうか?

マジック界に大きな影響を与えた“超能力ブーム”の功罪

 トランプを使ったり、ハトを出したり、物を移動させたり…というわかりやすい手品(奇術)は、テレビ以外のお祭りなどのイベントでも見ることができたし、多くの日本人に親しまれてきた。そこに“新たなアプローチ”として登場したのが、1970年代の“スプーン曲げ”=ユリ・ゲラーに代表される史上空前の“超能力ブーム”だ。日本でも超能力少年・清田益章が誕生して、学校給食で使うスプーンが子どもたちの“手”で曲げられてしまい、社会問題化するほどの騒ぎだった。

 「スプーン曲げが“超能力”か否かはとりあえず置いておきますが、いわばスプーンを曲げるという手品的な技術を“超能力”という言葉で表現したことで、日本でも大ブームを巻き起こしたんです。ところが、タネや仕掛けがあるものを科学では説明できないとか、人智を超えたもののように煽るのはいかがなものか?とバッシングする流れも出てきた。テレビで、清田少年(当時は青年になっていた)が楽屋でスプーンを思いっきり力で曲げる姿を隠し撮りして、それを清田少年に突きつけると清田少年も認めて謝罪するという暴露番組を放映すると、ブームは一気に終息していきました」(エンタメ誌編集者)

 超能力ブームの一方では、引田天功初代・2代目などの“爆破現場に鎖で繋がれているが脱出する”的な大掛かりな“イリュージョン”ものも人気を博しており、“自分で手品ができる”グッズが販売されるなど、マジックは親しみやすいものとして一般層にも浸透していた。そんな80年代末期、再び大ブームを巻き起こすマジシャンが登場した。“超魔術師”Mr.マリックである。

マリックのカミングアウトで“超能力アプローチ”は完全消滅

  • “ハンドパワー”で一世風靡したMr.マリック

    “ハンドパワー”で一世風靡したMr.マリック

 「日本テレビの『木曜スペシャル』の2時間枠に登場して、マリックさんの人気は爆発しました。30%近い視聴率を記録するほどでしたから。マリック現象はバブルが弾ける90年代頭くらいまで続きましたが、手品師であることをカミングアウトすると、“インチキ”としてバッシングされました。そもそもマリックという名前自体が“マジック”と“トリック”を合わせた造語だし、マリックさんは超能力とはひと言も言ってません(笑)。“超魔術”であり“ハンドパワー”なんです。でも“ハイ、これは手品です”と言ってしまえば、演出的にも面白くも何ともない。そのあたりの曖昧さも、バッシングの要因でしょうね」(前出・編集者)

 その後、デビッド・カッパーフィールドやセロといった“東京タワーを消す”といった大掛かりなイリュージョンから、日本の山下兄弟といった正統派マジシャン、ナポレオンズやマギー審司などのコミカルなものまで、多種多様なマジックが共存するようになる。視聴者が“超能力”ではなく“マジック”として受け入れ、テレビの中の一コンテンツとして楽しむ風潮が再び戻ってきたのである。

“超能力”から“超能力級のマジック”に進化、一方で禁断の“タネ明かし”も

  • 人の脳に入り込むという“ブレインダイブ”を駆使する新子景視

    人の脳に入り込むという“ブレインダイブ”を駆使する新子景視

 そして今では、相手の心理を読みながらスプーン曲げをしたり、今までとひと味違ったパフォーマンスを披露するという“メンタリスト”DaiGoや、さらに人の脳に入り込むという“ブレインダイブ”を駆使する新子景視などが出現してきた。17歳からプロのマジシャンとして活動してきたという新子は、タネも仕掛けもあることを前提に、紙に書いた数字を当てたり、手をつないでいる人の感覚を共有したりという、“超能力級”のマジックで見る者を魅了する。つまり、マジックであると事前に告知しているにも関わらず、一体何が起こっているのかわからないレベルまで進化しているということである。

 「メンタリストもブレインダイブも、言ってみれば“心理分析”の一種ですよね、でも、その響きが何となく科学的だし、インチキ臭さも弱まります。今や“頑固じじい”の代表格でもある石原(慎太郎)元都知事も、新子さんのブレインダイブを間近で見て“危ない人だよ”と驚いてましたから(笑)」(前出・編集者)

 ただ、そうした心理分析も、今や一般人でも“飲み会の席”でネタとして使うし、正統派のマジックもいわば“モテネタ”として定着している。一方、現代の最高レベルのマジックの技術でも「これは○○(非科学的能力)です」みたいな野暮なことは言わなくなったし、最近ではこれまで“掟破り”とされてきたタネ明かしも番組のコンテンツとして盛り込まれるケースが増えてきています。つまり、タネや仕掛けがあることはわかっていても、無心・童心に帰って、純粋に楽しむことができる。それこそが、マジックが今なお“最上のエンタメ”の位置をキープしている理由なのであろう。

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