• ORICON MUSIC(オリコンミュージック)
  • ドラマ&映画(by オリコンニュース)
  • アニメ&ゲーム(by オリコンニュース)
  • eltha(エルザ by オリコンニュース)
ORICON NEWS

“盛れる”写真撮影の変遷 なぜ若者は自撮りをするのか?

 若者を中心に流行しているスマートフォン向けの自撮りアプリ。パソコンの写真加工ソフト並みのレタッチを指一本で簡単にできてしまうだけでなく、動画を顔認証して自動で加工&可愛いスタンプを貼って撮影できるものなど、様々に進化している。思えば使い捨てカメラの登場で“写真を撮る”行為が身近ものとなり、1990年代に入ってから「プリクラ」が登場して以降、“自分の写真を撮って他人に見せる”ことは当たり前に。最近では、自撮りやカップル写真・動画を撮ってSNSに公開することも珍しくなくなっている。なぜ有名人でもない普通の若者が自分の写真を撮って、多くの人に公開するのだろうか? 自撮りの進化と若者たちの心理の変化に迫ってみたい。

自分の写真を撮って共有する 若者の心理の変化

 Camera360、Snapchat、Candy camera、snow…これらは若者たちを中心に人気を集めているカメラアプリの名称だ。従来のカメラアプリ同様に色味の変更やトリミングが簡単にできることはもちろん、特別な技術がなくても肌をきれいにしたり、目を大きくしたり、小顔にしたりとプロ並みの加工が可能で、さらに無料で利用できるとあって、若者を中心に絶大な支持を集めている。こうしたアプリで撮影した写真や動画は、自分のスマートフォンに思い出として保存しておくだけでなく、メッセージアプリなどを通して友人同士で見せ合ったり、さらにはSNSで知らない誰かと共有したりすることも当たり前となりつつある。

 かつて庶民にはなかなか扱いづらかったカメラが身近になったのは、1980年代、フジフイルムの『写ルンです』に代表されるような、“使い捨てカメラ”と呼ばれるレンズ付フィルムが登場してからだろう。シャッターやフラッシュなど撮影機能を極限まで抑えた使い捨てカメラは、通常のカメラのような質の高い写真こそ撮れはしないものの、一般庶民が日常生活の1シーンを収めるには十分な撮影能力を有しており、旅行や女子高生などの間では欠かせないアイテムになった。きちんとした格好をして撮影に臨むのでもなく、運動会やお祭りなどイベントの撮影をするのでもなく、普段の自分たちの生活の様子を撮影して、楽しむ。筆者も中高生時代、使い捨てカメラを持ち歩いて写真を撮っては、親しい友人同士で交換などして楽しんでいたものだ。

写真加工機能の進化で“他人に見せる”ことに抵抗がなくなる

 そうやって若者の間で根付いていた日常生活の風景を記念として写真に収める、という行為は、その後、プリントシール機の登場によって“他人に見せたい”という願望が加わることになる。1995年に初代「プリント倶楽部」が発売され、2000年前後に女子中高生を中心に大ブームを巻き起こしたプリントシール機は、可愛く撮影できるだけでなく、文字やスタンプなどでデコレーションして遊べて、さらにシールとして他人と交換して遊べたため、中高生はこぞって“プリクラ帳”を持ち歩いていたものだ。思えば、プリントシール機により、若者たちは(主に仲間うちではあるが)“自分の写真を撮って他人に見せる”ことに完全に抵抗がなくなったように思う。

 そしてこのプリントシール機のブームや、カメラ機能を搭載した携帯電話で撮影したいわゆる“写メ”がブームになった頃から、いかに自分の写真を“盛れる”かが重要視されていったように思う。写メが流行った頃には角度や光の具合を調整していかに奇跡の一枚を撮れるか、若者たちはテクニックを磨いていたし、近年のプリントシール機は目を大きく、体型を細く…など、過剰なまでに写真を加工できる。これにより、普通の子にも「他人に自分の可愛い写真を見せたい」という願望が生まれたし、これが今の写真加工アプリの過熱ぶりにつながっていることは間違いないだろう。

 昔は家族や仲間内で楽しむだけだった写真は、プリントシール機、写メという段階を経て、日常生活を撮影し、他人に見せることが当たり前となった。さらにSNSの普及により、写真を誰かと共有し、“いいね”と認めてもらいたい、という願望も高まっている。今後、この流れにさらに拍車がかかっていくのだろうか? いずれにせよ、“自撮り”文化は素人撮影文化の進化とともにあるようだ。

あなたにおすすめの記事

 を検索