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『仰げば尊し』の評価次第で絶滅寸前の“熱血学園ドラマ”ジャンルの復権なるか?

 『半沢直樹』『下町ロケット』など、近年でも高視聴率のヒット作を連発している日曜21時のドラマ枠「日曜劇場」(TBS系)。その7月期のドラマ『仰げば尊し』(寺尾聰主演)が話題だ。なぜなら、今や絶滅しかけている“熱血学園ドラマ”だからである。ベタな不良がタバコを吸ったり窓ガラスを割ったりという展開で、更生していく不良たちはラグビー部でも野球部でもなく、まさかの吹奏楽部。それでも初回視聴率は11.4%と好調なスタート。『3年B組金八先生』『スクール☆ウォーズ』『ROOKIES』など、数々の学園ドラマの名作を生み出してきたTBSは、2016年型の新たな学園ドラマを提示することができるのか?そしてフォーマットとしての熱血学園ドラマは再び復活することができるのだろうか?

キャスト、主題歌、スタッフから感じるTBSの意気込み

 『仰げば尊し』は、1980年代の神奈川県立野庭高校吹奏楽部を題材にした小説『ブラバンキッズ・ラプソディー』『ブラバンキッズ・オデッセイ』を原作として、設定を現在に置き換えたオリジナルドラマ。主人公の樋熊仰一(寺尾聰)は元プロサックス奏者で音楽教室を営んでいたが、美崎高校の校長(石坂浩二)に請われ非常勤講師として吹奏楽部の顧問に就き、夢を失くした問題児たちと“音楽の甲子園”を目指していく。

 不良の生徒たちには真剣佑(父・千葉真一)、村上虹郎(母・UA、父・村上淳)、太賀(父・中野英雄)、高畑裕太(母・高畑淳子)などの二世俳優がズラリと並ぶ。そのほか、E-girlsの石井杏奈、DISH//の北村匠海、佐野岳といった若い世代からの関心も高いキャスティング。さらに脚本はいずみ吉紘、監督は平川雄一朗という『ROOKIES』コンビ。主題歌もBUMP OF CHICKENの「アリア」が起用され、放送前からファンから注目を集めるなど、TBSの今作にかける意気込みがうかがえる。

いまや『スクール☆ウォーズ』は非現実的 現代の“熱血学園ドラマ”とは?

 それにしても吹奏楽部という設定は、現代の熱血学園ドラマにマッチするのだろうか?
 「『1億人の大質問!?笑ってコラえて!』(日本テレビ系)の「日本列島吹奏楽の旅」という企画が話題になり、吹奏楽部人口も増えました。それに、ヤンチャな子が一致団結すると、とんでもなく上手い演奏を見せて、全国大会で金賞…ということも実はよくあるんです。体育会系ではなく、不良が吹奏楽部で更正する、というのも今の時代にマッチしてると思いますよ」(エンタメ誌編集者・元高校吹奏楽部員)

 現代の学園ドラマとはいえ、第1話では不良が窓ガラスを割ったり、恐喝をしたり、校内をバイクで走ったりするなど、『スクール☆ウォーズ』を彷彿とさせるシーンもあり、特に定番の喫煙シーンをしっかり放送するあたりは(エンディングで未成年者の喫煙は禁止されている旨、クレジットが入る)、制作側が本気で熱血学園ドラマの復活へと取り組んでいる姿勢が見える。しかし今の時代、かつての鉄拳制裁などが許されるわけもないし、そもそも熱血教師という存在自体のリアリティとしては、いかがなものだろうか?

 「確かに『スクール☆ウォーズ』の山下(真司)さんのように、“これからお前たちを殴る!”と言ってみせたり、金八先生でも加藤優と松浦悟を殴るシーンは名場面でしたが、今ではあり得ないし、見る方もウソくさくて感情移入できません。第1話では、寺尾さんが生徒にボコボコにされても反撃しないし、ヨロヨロになってもしぶとく不良たちと正面から向かい合う。“お前を殴る!”ではなく、“殴りたかったら殴れ。ただ、殴っても何も変わらないぞ!”なんですね。むしろ初老の教師という設定の寺尾さんだからこそ、その熱意が伝わる。現代でも、十分リアリティはありますよ」(ドラマ制作会社スタッフ)

『金八』や『ROOKIES』 TBSの十八番、絶滅寸前からの復活なるか?

 昨今のドラマは漫画実写化や不倫ものが定番となり、加えて教育現場の規制もあって、リアルで熱い“学園もの”はすっかり姿を消してしまった。そうした中での今回の『仰げば尊し』はある意味、満を持してのスタートだと言ってもいいだろう。

 かつて“金八フォーマット”を生み出し、様々な亜流作品を生み出すきっかけとなたったTBSのお家芸・十八番の“熱血学園ドラマ”。しかも数々のヒット作を生み出してきている「日曜劇場」なのである。絶滅寸前の熱血学園ドラマを“本家”TBSが甦らせ、2016年型の“新・学園ドラマ”として成功させることができるのか、注目したい。

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