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(更新: ORICON NEWS

“キレ芸”の系譜を受け継ぐバイきんぐ・小峠英二

 近年、お笑いコンビのバイきんぐ・小峠英二の“キレ芸”が、ネットを中心に「レベルが高い」「キレ芸芸人では現時点でNo.1だ」と注目を浴びている。コンビとしては『キングオブコント』(TBS系)の2012年の優勝者で、歴代最高得点をはじき出し、その実力は周知の通り。これまで“キレ芸”といえば、古くは故・横山やすしさん、ダチョウ倶楽部の上島竜兵、出川哲朗、カンニング・竹山隆範などによって脈々と受け継がれてきたが、なぜ今、小峠の“キレ芸”が注目を浴びているのだろうか。

小峠のキレ芸“味”は、人柄の良さや気の小ささが見えるところ

  • “キレ芸”が注目を浴びるバイきんぐ・小峠英二 (C)ORICON NewS inc.

    “キレ芸”が注目を浴びるバイきんぐ・小峠英二 (C)ORICON NewS inc.

 そもそも“キレ芸”は、どちらかと言えばお笑い界内部から発生してきた類の芸で、会話の最中で突然怒り出す(キレる)ことで笑いをとる芸だ。“キレ芸”という言葉自体は、カンニングの竹山が生みの親とされる。ハリセンボン・近藤春菜が「『幸楽』のご主人ですか?」と問われ、「角野卓造じゃねえよ!」と叫んだり、アンジャッシュ・児島一哉が「五島さんですか?」と聞かれ、「児島だよ!」と答えるのもキレ芸だ。竹山以前でも、ダチョウ倶楽部の上島竜兵や出川哲朗らが、さんざん過酷な芸に挑戦させられた後、リアクション芸の一環で「殺す気か!」と激怒するのも、もはやキレ芸の“古典”といえるだろう。そうした“お決まり”のネタを有吉弘行や山崎弘也などにいじられることによって、“キレ芸芸人”のポジションも徐々に確立されてきた。


 では、小峠のキレ芸はどういったものか。たとえば炎天下に、坂口杏里との破局をレポーターに突っ込まれると、しょっぱなから「とにかく頭が暑いんだよ!」とキレ、“ハゲモンスター”などの自虐ネタをまぜた挙句、最後はお決まりの「なんて日だ!」で締めるというもの。ドッキリ企画に見事に引っかかり、最後にやはり「なんて日だ!」で締めつつも、微妙に人柄の良さ、気遣い、気の小ささをちょこちょこと出してくるのが、小峠のキレ芸の“味”だ。もともと、お笑いの実力としてもバイきんぐは『キングオブコント』(TBS系)の2012年の優勝者で、歴代最高得点をはじき出している。小峠の「なんて日だ!」もこのときのネタ。今年の6月に『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)の「第2回キレ芸No.1決定戦」オーディションに出場したあたりから、急速に小峠のキレ芸の認知度も上がったようだ。


 ちなみにキレ芸は最近、市民権を得たように思われるが、実はカンニング竹山や上島竜兵以前にも存在していた。古くは故・横山やすしさんのブチ切れ芸もそうだし、ダウンタウンの浜田雅功の激怒ネタもそうだ。浜田にいたっては『ごっつええ感じ』(フジテレビ系)や『ガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ系)などの冠番組での“ブチ切れドッキリ”が定番の人気企画で、ココリコの田中直樹や今田耕司、篠原涼子というレギュラー陣が本気で泣くほどだったのだ。ただしこれは観ている者を本当に怖がらせ、当時は視聴者からの苦情が殺到したという。現在では、この手のキレ芸を超えた“ガチキレ芸”は放送倫理的によろしくないのか、ほぼ見られなくなった。

視聴者側も安心して笑える現在の“キレ芸”は、新しいお笑いスタンダード

 そうした意味で、かつてのカンニング竹山のように、一連のキレ芸は、視聴者にも何となく「この人、実はいい人なんだろうな」と思わせるような芸人を中心に行なわれることが多い。そのため、権威があるような大物芸人ではなく、少しマイナー感がある芸人が多いのも特徴。だからこそ逆に、先日の『24時間テレビ』(日本テレビ系)内の『しゃべくり007』(同系)のように、大物芸人に絶妙に絡むキレ芸も本人からは許されるし、視聴者側も安心して笑っていられるのだ。

 “キレ芸ブーム”も、かつての“本当に怖い”マジギレ芸が許されなくなり、今という時代が生んだどこか“フェイク”っぽい、新しいお笑いの形と言えるかもしれない。視聴者側も自分が脅かされるような“本気度”は芸人には求めていないし、キレ気味の芸を演じる芸人もキャリアを積むごとに不自然になっていくので、“キレ芸”を徐々に抑えていく。となると、今後も“キレ”る対象のネタのバリエーションを広げていきながら、新しい“キレ芸芸人”たちは、まだまだ誕生してくる余地があるということが言えるかもしれない。

 現在では、キレ芸の第一人者である竹山のお笑い界での地位も上がり、かつてほどキレ芸を披露しなくなっているし、披露しても、お約束的に一瞬である。そんな竹山の“後継者”を狙って、小峠や児島が台頭してきたといった図式だろう。そして、スキンヘッドの強面ふうで、声も大きくハリもあるが、どこか小市民的な親しみやすさを醸し出している小峠が、一歩先んじている状況だ。果たして、小峠は名実ともに竹山の“後任”に納まる、あるいは超えることができるのかは、小峠の“キレ”るネタのバリエーションが増えることで、自然と道も開けてくるのだろう。

(文:五目舎)

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