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素朴でナチュラルな“昭和顔”が人気のワケ

 ファッションやメイク、重めボブヘアもそうだが、「昭和風」が再注目されているなか、芸能界でもその動きを象徴するように“昭和顔”の女優たちが台頭している。字面のごとく、“昭和っぽい顔”の持ち主ということだが、そこから導かれそうな“古臭い”というイメージはなく、その“素朴さ、ナチュラルさ”が醸し出すホッとさせる雰囲気に、昭和を知らない平成世代の支持が集まっているという。有村架純や松岡茉優らといった“昭和顔”と言われる若手女優の活躍が目覚ましいが、なぜ“昭和顔”が注目されているのか? その背景には何があるのだろうか。

“昭和を知らない世代”の代表的な“昭和顔”は、有村架純や松岡茉優

  • 『春子の部屋〜あまちゃん 80’s HITS〜ビクター編』

    『春子の部屋〜あまちゃん 80’s HITS〜ビクター編』

 みなさんは、昭和に対してどのようなイメージをお持ちだろうか。リアルタイムで昭和を過ごしてきた人にとっては、懐かしく心が癒される“古き良き時代”なのかもしれないし、平成生まれの人々には“得体の知れない前時代”なのかもしれない。映画『ALWAYS 3丁目の夕日』のヒット以降、温故知新ではないが、何かというと昭和の文化が引き合いに出されようになった。世紀をまたいでの東京五輪も加わって、より一層昭和のクローズアップ度は増している。ただ、それらの多くはノスタルジーを求めるものが主であり、そこに安心感や癒しを求めたり、日本の良さ、本来の日本を取り戻そうという“懐古趣味”的なものだった。

 しかし、ここで取り上げる“昭和顔”はそれらとはやや異なる。“昭和の町並みや生活スタイルが似合いそうな素朴な顔立ち”でありながらも、“昭和を生きた人々”ではなく、“昭和を知らない世代”が支持する顔立ちだということだ。代表的な“昭和顔”として注目されているのが、有村架純や波瑠、松岡茉優、黒木華、蓮佛美沙子など。有村はブレイクのきっかけとなったNHK連続テレビ小説『あまちゃん』の中で1980年代半ばの女子高生を演じ、“聖子ちゃんカット”を披露。黒木は映画『小さいおうち』で昭和初期の女中を演じ、国際的な評価も獲得した。有村は93年、黒木は90年、ともにバリバリの平成生まれ、平成育ちである。もちろん、それぞれの役柄が映像の時代性にフィットしたのは制作スタッフの努力もあるだろうし、女優なのだからそのシチュエーションに合わせるのは当たり前じゃないかと言われればそれまでだが、彼女たちならばたとえ“素のまま”でカメラの前に立っていたとしても、映像の示す“昭和”に溶け込んでいたと思えるのだ。それこそが彼女たちがもともと持っている“昭和顔”のポテンシャルにほかならないと思う。

平成世代にとっての“昭和顔”は“今の時代”に適した顔

  • 『春子の部屋〜あまちゃん 80’s HITS〜ソニーミュージック編』

    『春子の部屋〜あまちゃん 80’s HITS〜ソニーミュージック編』

 そして、先にも述べたように彼女たちと同世代の“平成世代”がこの“昭和顔”に好意的な印象を持っていることが特筆すべきことなのだ。“昭和顔”の特徴である“素朴さ”は裏を返せば“垢抜けない”というニュアンスも感じさせる。「1億総モデル時代」とも称される現在にあって、“垢抜けない”という要素はデメリットでしかあり得ない、はずだった。ところが、現代の若い世代はそれらデメリットには目を向けず、“素朴さ”や“ナチュラルさ”が生み出す、“モデル顔”とは異なる魅力に注目した。太眉は“昭和顔”のポイントのひとつとされているが、“昭和から平成へ”という変遷を辿ってきた人にとっては“前時代的”に思えるこの要素も、その流れを知らない世代にとってはむしろ“新鮮”であり、大きなチャームポイントに映っているのかもしれない。加えて、海外に目を向けると、メイクが濃くなくナチュラルめの素肌美人が人気を博しており、そうした海外のトレンドを“昭和顔”に投影させているようにも思える。昭和世代が思っているよりも平成世代にとっての“昭和顔”は“今の時代”に適した顔なのだ。

 来年下半期の連続テレビ小説『あさが来た』のヒロインに波瑠が抜擢されたように、“昭和顔”の女優たちは、どんな役柄もこなす“ナチュラルさ”を武器に、活躍のフィールドを無限に広げ続けている。1年後、この“素朴”な顔立ちは“昭和顔”ではなく、もうひとつの“平成顔”と呼ばれているかもしれない。

(文:田井裕規)

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