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テレビ東京・佐久間宣行プロデューサーインタビュー『ゴッドタン』に舞い降りた奇跡

ディレクター自らが“歌いだす”壮絶な現場

――『ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE』の何が素晴らしいって、劇場サイズになっても、本質を変えなかった部分にあると思うんです。
佐久間 最初はちょっと悩みましたけどね。特に1作目のときはテレビから映画にするって、ドラマを作ってるワケではないので相当難しいなって。でも、もともとやっていることが、強度が高いお笑いなんだなって改めて感じたので、そこからは吹っ切れたんです。テレビであろうとスクリーンであろうと、あの強度ならどんなサイズにも耐えられると。まぁ裏では怒号が飛び交ってますが(笑)。

――“笑いの強度”という部分で、『THE MOVIE2』で特に印象深いシーンが終盤のレジスタンスが決起するシーン。劇団ひとりさんが突然アドリブで歌いだしますよね。あれは腹抱えて笑いましたよ。
佐久間 実は当初の予定では結構長いフリを用意してたんですよ。レジスタンスのメンバーが劇団ひとりを演説で説得するっていう。そしたら途中から劇団ひとりが歌い始めちゃったから、どうしようかって(笑)。そしたらレジスタンスのメンバーのマキタスポーツが一緒に歌いだしたんです。これはもう全員歌うしかない!って思ったんですけど、それを出演者に直接伝えられない。劇団ひとりについてるディレクターが後ろに立っていたので、無線で「お前が歌え!」と指示して。それを見た共演者たちも歌いだしたという(笑)。

――アハハハハ! ディレクター自ら歌いだすってどんな現場ですか(笑)。
佐久間 ディレクターが歌っているのであれば出演者も歌わざるを得ないですからね(笑)。

――あの即興性はまさにジャズだと思いましたよ!!
佐久間 そうですよね! 劇団ひとりのアドリブに、ディレクターやカメラマンまでが口ずさんで、共演者全員で合唱ですから。

――でも、あのような場を作れたことは監督冥利、プロデューサー冥利に尽きる瞬間じゃないですか?
佐久間 そうですね。あのような“瞬間”が、まさに『ゴッドタン』なんです。

僕は今でもテレビには面白い番組が沢山あると思っています

――佐久間さんは『キス我慢選手権』で、現在のバラエティにおける“コント”の新しい流れを作ったなって思うんです。現状、なかなかコント番組を作り辛い状況の中で、踏みとどまっている感じを凄く感じます。
佐久間 確かに製作費等の問題で、なかなか純粋なコントを作ることは難しいですね。でも、僕はずっとコントを作りたいと思っていて、自分なりにアプローチしてきたという思いはあります。『キス我慢』はコントとドラマの中間のような作りでやってますし、『ウレロ☆未体験少女』という番組では一発本番だからこそ低予算で済んでいる即興コント番組をやっています。

――佐久間さんの番組からは、コントへの欲求というのが凄く伝わってくるんですよ。
佐久間 そうですね。今って作り物のお笑いの時代じゃないのかも知れないですけど、その灯を絶やしたくはないですね。

――それはやっぱり、いちテレビマンとしての使命感ですが。
佐久間 使命感というと大げさですけど、やっぱり僕は作り物の笑いで育ってきた部分が強いんです。もちろん、何が起こるか分からないトークバラエティも好きですけど、『夢で逢えたら』(フジテレビ系)などに強い影響を受けたのは、紛れもない事実。でも今の時代、ただコントを番組として継続すると、回顧主義の作品になってしまうことが多いので。だったら今の時代に即した要素を入れた形で、今の若い世代の視聴者にも届けたいなっていう気持ちはあります。

――『ゴッドタン』や『ウレロ』で、コントの魅力や面白さを再確認させたいというのは感じますね。
佐久間 はい。それは凄く意識してます。

――今って、ハードとしてのテレビがなかなか難しい時代に突入したと言われることが多いですよね。そのことについて佐久間さん自身はどのように感じていますか?
佐久間 僕は今でも沢山面白い番組がテレビにはあると思っています。その面白さが届いていないとすると、視聴するフォーマットが生活スタイルと合っていないということが多分にあります。今は丁度その過渡期だと思います。でも、“ソフト”としてのテレビは弱まっているワケではなく、むしろどんどん強度を増していると思うんです。

――上手くそれぞれのライフスタイルに合ったフォーマットさえ整えば、ソフトの面白みは伝わるということですね。
佐久間 そのためにも、どんなシチュエーションでも楽しめる番組作りは常に心がけていますね。映画を作ったり、舞台をやったりして改めて思うのは、これだけお金をかけて無料で届けられるテレビの良さって、やっぱりあるなって。無料だから誰にでも平等に届くというか。そういう意味でいろいろなきっかけになる可能性があるし、忘れられない1作になる。そこがテレビの良さだと思う。僕は『ゴッドタン』で常に考えているのは、“ついでに好きになってもらう”ということなんです。芸人好きの人が“ついでに”アイドルや声優に興味を持ってもらう。逆に声優ファンの方にも、芸人って面白いんだよって興味を持ってほしいなって。

“視聴者との共犯関係”を保てれば、規制のラインは下がる

――ただ、佐久間さんが思春期の頃に観て影響を受けた番組の手法って、現在は“自主規制”という名目で企画が通り辛いのも事実ですよね。そこにジレンマを感じる瞬間ってあるんですか?
佐久間 うーん……どうなんでしょうね(笑)。興味が多様化しているし、テレビを観ている視聴者の声が可視化される時代なので、確かに難しい面もありますけど、根本的には“視聴者との共犯関係”を保っていれば、その(自主規制)ラインっていうのは下がると思います。これは暴言ではなくギャグなんだ、これは悪口ではなくイジリなんだということを、制作側と視聴者で同じように認識する。視聴者との信頼関係がそれぞれの番組ごとに握られていれば反発は少ないと思います。

――制作側と視聴者の間で乖離があるから反発を招くおそれがあるんですね。
佐久間 そうです。ですから、僕が『ゴッドタン』でちょっと過激なことをやる場合には、「今、僕は視聴者と信頼関係を結べてるかな?」って常に考えますね。「多分大丈夫だろう。行っちゃえ!!」という気持ちでは動かないです。

――視聴者との共犯関係、信頼関係というのは、『ゴッドタン』に関しては確かに握れていると思います。これって『テレビ東京』という点が大きいんですかね? 佐久間さんも常々、“隙間産業”と仰っていますが、そのスタンスが他局とは一線を画しているからこそ信頼関係が結べているような気がします。
佐久間 まぁ、社風として「失敗は“ある程度は”許す」という部分があるので(笑)、そういう意味でいうと比較的やりやすいというのはありますね。

現状のテレ東はただの“バブル”、調子に乗っちゃダメ(笑)

――“隙間産業”って、いわゆる王道があるからこその隙間じゃないですか? でも現状って、その王道が崩壊して“テレ東的アプローチ”が新たな王道になりつつあるのかな?って思うんですよ。それはバラエティだけでなく、テレ東制作のドラマ、情報番組などを観ても感じます。
佐久間 いやいや! それは違います。会社の同僚ともよく喋るんですよ。「ただの“バブル”だから調子に乗っちゃダメだよね」って。本当にテレ東がメインストリームになってしまったら、それこそ危機感を感じるかも知れないですけど、ウチの社員誰もそんなこと思ってませんよ(笑)。「“一瞬”だから、逆に浮かれないようにしようね!」って。

――アハハハハハ! 冷静だなぁ(笑)。
佐久間 だって、別に製作費も増えてるワケでもないので、浮かれようがない(笑)。

――よく“ブレないテレ東”って言われますけど、そういう意味でも全く変わらないと。変わらないという意味では『ゴッドタン』は8年も続いていながら、未だに“ド深夜”ですよね。そこに凄くこだわりを感じるんですよ。もっと良い時間帯に移せた可能性もあるはずなのに。
佐久間 そういう話もありましたけど……。『ゴッドタン』に関しては今の時間帯でいいのかなぁって。

――番組の純度が薄まる危険性がある?
佐久間 その可能性はありますね。そうならないような作り方をすればいいんでしょうけど、向いてないなって(笑)。

――視聴者から見ても、ド深夜から常に渦を巻き起こしているという部分に美学を感じます。
佐久間 そんなカッコいいもんじゃないですけどね。まぁ、確かに珍しい番組ではあります。自分自身、こんなに収録中に笑ってしまう番組もないですから(笑)。

ゴッドタン キス我慢選手権 THE MOVIE2 サイキック・ラブ

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(C)2014「キス我慢選手権 THE MOVIE2」製作委員会
【公式サイト】(外部サイト)
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