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声優交代から10年…新たに確立した新世代の『ドラえもん』

 人気アニメ『ドラえもん』が大幅リニューアルしてから今年で10周年を迎えた。声優や制作陣が一新されたことで、登場キャラクターの服装や言葉遣い、持ち物などが現代風に変わっていたり、キャラクターデザインがより原作に近いものになったりと、様々な変化があり、リニューアル当初はファンから反発もあった。しかし、年月が過ぎるにつれ新ドラえもんも少しずつ定着し、今の子どもたちにとっては「ドラえもんの声=水田わさび」となっている。国民的人気を誇る巨大コンテンツが無事に次の世代へと受け継がれた理由はどこにあるのだろうか? 『ドラえもん』の歴史を振り返りながら、探っていく。

原作のブラック要素が残されていたリニューアル前

  • 写真は昨年11月発売のメインキャラ5人による「夢をかなえてドラえもん」ジャケット写真 (C)Fujiko-Pro, Shogakukan, TV-Asahi, Shin-ei, and ADK

    写真は昨年11月発売のメインキャラ5人による「夢をかなえてドラえもん」ジャケット写真 (C)Fujiko-Pro, Shogakukan, TV-Asahi, Shin-ei, and ADK

 基本的に『ドラえもん』は何をやってもダメな小学生・野比のび太の日常の悩みを、未来からやってきたドラえもんが四次元ポケットから取り出した「ひみつ道具」で解決する、という1話完結型のストーリー。といっても、ドラえもんが未来の道具で何でも夢を叶えてくれるわけではなく、間違った使い方をすれば前より悪い方向に動いてしまうこともあれば、のび太が道具に頼らずに自分自身の足で歩くことが大切だと気づくこともあり、示唆に富む作品でもある。こと原作に関してはブラックユーモアの要素も多く、子どもが純粋に楽しめる一方で、“大人のためギャグ漫画”というイメージも強い。

 旧ドラえもんアニメに関しては、ガキ大将・ジャイアン、そんなジャイアンに媚びるスネ夫の意地悪な部分が露骨に表現されていたり、特に大長編(映画)においては何かしらの問題提起がされていたり、人間の愚かさなどの部分が強調されていたりと、原作にも通じるブラックな部分が残されていた。例えば『のび太と雲の王国』『のび太とアニマル惑星』では環境問題にフォーカス。『のび太と鉄人兵団』や『のび太とブリキの迷宮』では、人間がロボットに頼りすぎてしまったが故に起こってしまった争いを描いた。中にはドラえもんが敵から執拗な拷問を受けた末、壊れてしまう作品も。旧映画に感動したという一方で、子どもの頃に映画館で観て「怖い」という感想を抱いた人も多いのではないだろうか。

時代に合わせて変化

  • 劇場版は今年35周年。3月7日には『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』が公開される。写真はmiwaによる主題歌「360°」ジャケット写真(期間限定盤)

    劇場版は今年35周年。3月7日には『映画ドラえもん のび太の宇宙英雄記(スペースヒーローズ)』が公開される。写真はmiwaによる主題歌「360°」ジャケット写真(期間限定盤)

 一方、リニューアル後の新ドラえもんアニメはこうしたブラック要素は薄まり、ギャグ要素が強調されていたり、友情や心温まるエピソードがよりクローズアップされていたりと、純粋な「娯楽作品」としての価値が高まっているように思う。劇場版作品に関しても、いい意味で毒気が抜けて、肩の力を抜いて感動できる作品に仕上がっている。

 例えば、1986年に公開された劇場版をリメイクし、2011年に公開された『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団〜はばたけ天使たち〜』。この映画で一番変わったのは、ロボット「ザンダクロス」の“脳”だ。旧作では見た目には無機質な青い球だったが、リメイク作品ではヒヨコのような可愛らしい見た目に改造されたことに加えて、“ピッポ”という愛称も。キャラクター化されたことで、より本編に重要な関わりを持つと同時に、のび太たちとの“友情”にもスポットがあてられた。当初は侵略者として、のび太たちに反抗していたが、次第に心を通わせていくピッポ。劇場では、序盤は可愛い見た目からは想像もつかないピッポの生意気な言動に子どもたちがゲラゲラ笑い、後半はのび太たちを助けようとボロボロになりながら奮闘する姿に大人たちが涙を流していた。

 旧作と新作は比べるものではないと思うが、「むしろ今の『ドラえもん』のほうが純粋に楽しめる」という意見もある。ある意味では挑戦だったとも思うが、リニューアル以降、人と人との「絆」など、世の中が娯楽作品に求めるニーズに合わせて少しずつ変化してきたことで、時代が変わっても親子二世代で楽しめるコンテンツ、という揺るぎない立ち位置を確立したのだ。

継続することに意味があったこの10年

 大山のぶ代がドラえもんの声を務めた『ドラえもん』はテレビ朝日系で1979年に放送開始。実はこの前の1973年にも一度テレビアニメ化(日本テレビ系)されており、大山はドラえもん声優としては厳密には“3代目”となるが、大山ドラえもんの声を聞いて、原作者の藤子・F・不二雄が「ドラえもんってああいう声をしていたんですね」と言ったエピソードは、あまりにも有名。それほどまでに当時、大山の声は個性的で、ドラえもんのイメージにぴったりで、他に取って代わることのできない唯一無二の存在感を放っていた。

 それだけに、新たにドラえもんの声を演じることとなった水田わさびをはじめ、新声優陣のプレッシャーは相当なものだったと思う。しかし、現在開催中の『ドラえもん映画祭2015』で旧声優陣が今の声優陣に対して贈った「10年続いたら本物」という言葉通り、この10年で培ってきたものは非常に大きい。10年かかってようやく新ドラえもんが定着したのであれば、本当のスタートはここからなのかもしれない。

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