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堺雅人&赤堀雅秋監督 SPECIAL INTERVIEW 人気俳優のオーラを消し去った唯一無二の「顔」 こんなにも崇高で美しい、そこら辺のゴミみたいな日常
ポケットからブラジャーにどん引き!?野次馬をもねじ伏せる力
堺そうだね。ただ、観終わってみるとすごく奥さんのことを愛していたんだなって分かるんだよね。やっていることは“部屋でパンツ匂っていただけ”なんだけどさ(笑)。
――あのシーン大好きです!
堺僕もなんだよね〜(笑)。その後で持ち歩くのがパンツじゃなくてブラジャーをチョイスしたっていうのがまたイイよねッ!
赤堀アハハッ!堺さんならパンツなんですか?
堺いやそうじゃなくて(笑)。その方が小さく丸められるでしょ!どうしてパンツじゃなくブラジャーを?
赤堀いやぁ、パンツだとなんか変態さが増してしまうから……。
堺(やや被せ気味で)どっちだって一緒でしょ!
【両者】 (爆笑)
――ポケットからブラジャーって、すごいロケ現場ですよね。
堺あの時は市営団地で撮っていて、子どもたちが野次馬になって集まって来たの。だけど、僕が深刻な顔してポケットから出した瞬間に、一斉にどん引きしたんだよね。
赤堀そうそう(笑)。
堺ある種、観ちゃいけない現場を観たっていう雰囲気。なんだコイツみたいな(笑)。
赤堀確かに。あの時の堺さん“ハァハァ”言ってましたからね。
堺まさか『新藤兼人賞』を取るような作品を撮っているとは思ってないだろうなぁ(笑)。あの反応はとても印象的だったし、そういう子どもの冷やかしの視線をねじ伏せるぐらいの力が僕らのチームにはあったということです。
この映画は“どうしようもない”が褒め言葉(堺)
堺この映画って男だけじゃなく女性もそうだよね。交通整理のスタッフ(谷村美月)と木島(山田孝之)との出会いも含めて。ただ、作品を観終わった後で、それぞれの登場人物が自分よりも劣った人間かといえば、決してそうは言えないと思う。
――確かに女性たちもそれぞれに“どうしようもない”。
堺でも、そのなかにリアルと美しさがある。『どうしようもなさ』というのは、この映画については褒め言葉になる。人物全員に小ささと、せせこましさ、ケチなところやエゴもいっぱいある。だけど観終わった時に全員愛おしく感じてしまう。その不思議な印象は、赤堀作品の魅力でしょうね。
――では、この作品で赤堀作品の色にたっぷりと染まったと。
堺もちろん。満喫しましたし、暫らくはもういいなと(笑)。最後の打ち合わせ(土砂降りのなかの犯人との対峙シーン)なんてつらすぎて覚えてないもん。人間はパンツまでびしょ濡れになると、思考回路が飛ぶんだよね。監禁された被害者が、犯人(※この場合は指揮官の赤堀監督)を好きになっちゃうのと同じ。ストックホルム症候群のようなものだった。
赤堀ハハハ。あの時は山田孝之さんと堺さんが初絡みの撮影だったけど、ずぶ濡れになりながら待ち時間をテントのなかで過ごすふたりは、心が繋がり合っている感じがしましたよね。
堺そうです!そこで暖かいタオルをかけてくれる監督をちょっと好きになっちゃう(笑)。間違っている、極限状態での錯覚だよね。後から現場に来た新井浩文さんの「ダメだ!全部持っていかれるよ!!」っていう言葉で、自分たちが人格ごと持って行かれ続けていたって気づいたもの(ふたりで爆笑)。
――では今後、赤堀さんの劇団のお芝居に堺さんがご出演になることは?
赤堀そんな大きなバジェットでやれる機会があれば、ぜひお願いしたいです。
堺僕も、ぜひ出たいです。
(写真:鈴木一なり)
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・『その夜の侍』映画公式サイト