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チョン・ジェヨン『感情は推測することしかできない』

東野圭吾氏原作の『さまよう刃』を、壮絶な復讐劇が真骨頂の韓国映画界がリメイク! 観るものに正義と悪を問いかける、心をえぐるような衝撃作に仕上がった。そんな同作に主演したのは、ホン・サンス監督の『ソニはご機嫌ななめ』、ヒョンビンと共演の『逆鱗』など話題作への出演が続く、韓国の演技派俳優チョン・ジェヨン。気さくで冗談好きな一面を垣間見せながら、作品への向き合い方から、現在の韓国映画界に思うこと、俳優ポリシーについてまで語ってくれた。

理論的なアプローチをしなかった

――この作品は、東野圭吾さんの原作ですが、実際に映画の撮影に入るまでに、原作や日本の映画版などはご覧になりましたか?
ジェヨンシナリオを読んで非常にリアルな話だなと思っていたら、その後に、原作があることを知りました。その時点で読んでみようかと思ったんですけど、本が分厚かったので……それは冗談です(笑)。読むことで、良い効果があるかもしれないんですけど、もしかしたら演技のさまたげになるかもしれない。良い部分よりも、短所になってしまう部分を考えて、あえて読みませんでした。同様に、日本版の映画もほんのさわりだけしか観ていないんです。これも演技がひっぱられてしまうと思ってやめました。今となっては、どちらの方法がよかったかはわからないのですが、監督とも話しあって観ないでいこうということになったんです。

――ジェヨンさんの演技方法は、理論的で徹底的なキャラ分析が特徴という記事を読みました。今回は素で演じることに徹したということですが、実際にはどういうふうに演じられましたか?
ジェヨン撮影現場では、そのときどきによっても、役に取り組む方法は違ってきます。理論的というのは、本来の私とは違うかなと思いますね。きっとなにかのインタビューのときに、そういう部分が際立って記事になったのだと思います。理論的に分析しようとしても、なかなか私の頭ではついていけませんからね(笑)。今回の作品では、普段よりも一層、理論的なアプローチをしなかったかもしれません。作品の特性上、そのときどきの感情は推測することしかできないからです。事前に考えて組み立てていくのではなくて、実際に撮影する段階で、その状況に放り込まれてみて、そこで初めて感じた気持ちを演技にぶつけていきました。だから、今回の作品はとくに精神的に大変でしたね。

――今、インタビューではすごく気さくな雰囲気ですが、撮影現場ではどうでしたか?
ジェヨン実際、私は真面目な雰囲気が好きではないので、現場ではふざけたり冗談を言っていることが多いんです。でも、本作では、そういう雰囲気になることは少なかったですね。というのも、この『さまよう刃』では、ストーリーにそって順番に撮影していたんですが、序盤に私が演じるサンヒョンは、娘を失うという大きな出来事があるので、その後は、常にその事実を背負っているんです。だから、普段のような楽しい現場にはなりませんでした。今回の現場で初めて会ったスタッフさんは、僕のことをすごく真面目な人だと思ったかもしれないですね。普段は、真面目な雰囲気は10%くらいで、残りの90%は冗談ばかりなのに! 韓国の取材でも、いつも冗談ばかり言っているんですが、今日は通訳さんも入るので、なかなか笑わせられないのが残念です……。

――でも、おもしろい方というのはわかりますよ。
ジェヨン日本にまでその噂が伝わっていましたか! 韓国ではいつもどっかーんとウケているんです(笑)。

男同士で気心がしれているから自然に呼吸があう

――日本ではこれから『さまよう刃』に加え、ホン・サンス監督の『ソニはご機嫌ななめ』、ヒョンビンと共演の『逆鱗』など、チョン・ジェヨンさんの出演作が次々と公開されます。そのなかで、ホン・サンス監督の現場では、少しでも気を抜くと気づかれてしまうと話していたのを読んだのですが。
ジェヨンそうなんです。ホン・サンス監督は俳優に休む時間をくれない人なんです(笑)。よく長回しをするんですが、長いときには20分くらいずーっとアングルを変えることなく撮っているんですね。だから、俳優がちょっとでも気をゆるめたり、集中力がとぎれると、ばれてしまうんです。ふつうカット割りがあるものですが、ホン・サンス監督の現場は、演劇のようなもので、決してごまかしがきかない。それに、シナリオもその日の朝に渡されて、そこで初めてセリフを覚えて撮影に入るんです。だから、本当にいろいろな意味で、気が抜けないんです。

――『さまよう刃』ではイ・ソンミンさんと、『逆鱗』ではヒョンビンさんと共演されましたが、ふたりの男性俳優と演技をしてみていかがでしたか?
ジェヨン『さまよう刃』は、ソンミンさんと一緒のシーンの現場は少なかったんです。『逆鱗』でご一緒したヒョンビンさんとは、王と宦官という関係性なので、常に一緒にいて息をあわせないといけないという意味で、ソンミンさんとの共演とは違いがありました。それに僕とソンミンさんは平凡なおじさん、ヒョンビンさんはハンサムなので、そこも違いますね(笑)。でも、普段のヒョンビンさんはすごく男らしい人で、ソンミンさんは意外にも繊細な部分を持った方でした。どちらの作品も、男同士で気心がしれているし、事前に演技プランなどについて話し合わなくても、呼吸は自然とあうし、やりやすい現場でしたね。

――近年の出演作を見ても、ラブコメ、サスペンス、時代劇と幅広いのですが、作品を選ぶ基準はありますか?
ジェヨン特別な基準はありませんが、シナリオ読んで共感できるもの、新しいと感じられるものを選んでます。ストーリーや作風が新しくても、自分が演じるキャラクターが過去に演じたものと似ていると、新鮮味がないのでやらないときもあります。あとは誰が演出するかなども重要ですが、基本的にはそのときどきで決めているんです。

――韓国映画は、ここ数年観客動員数も増えていますし、良い作品もたくさん排出しているイメージがあります。ジェヨンさんは、実際に現場にいて、韓国映画をどう見ていますか?
ジェヨン韓国の映画界の変化と言えば、韓国式ブロックバスターともいえる規模の大きな作品が増えてきて、1000万人を動員する作品もたくさん出てきたということが良い変化だと思います。それと同時に多様性も出てきて、質、量ともに良くなっている。その反面、大きく成功するものとそうでないものの差が以前以上に激しくなっているかなと思います。制作の部分では、スケジュールがきっちりしてきて合理的に進んでいくのがいいところですが、昔のように臨機応変に対応したり、融通を利かせるということが少なくなっているのかもしれません。今後どうなるかは未知数ですが、映画を作っている人たちが一生懸命であれば、短所もどんどん補われていき、良くなっていくのではないかと肯定的にみています。私個人の変化を言えば、どんどん歳をとってきています(笑)。

――では、歳をとってきて、これからどういう俳優になっていきたいと思われますか?
ジェヨン歳をとったらこうなりたいというよりも、そのときどきにあう役を忠実にやっていきたいですね。でも、これまでは実年齢よりも上の役が多かったので、これからは、実際よりも若い年齢の役ができたらいいなと思いますね。そうしたら、息の長い役者になれそうじゃないですか。いかに息の長い役者になるかということが私の課題ですから!

――今日のジェヨンさんも『さまよう刃』のときよりも、ずいぶんと若々しいイメージです。
ジェヨン今日は、そういう言葉を聞きたかったんですよ!(笑)
(文:西森路代)

さまよう刃

 町内の廃墟と化した銭湯で、冷たくなった死体で発見された女子中学生スジン。 父親のサンヒョンは妻を亡くしてから男手ひとつでスジンを育ててきた。一人娘の死を目の前に、喪失感でただただ茫然とする。
 そんなある日、サンヒョンに犯人の情報が書かれた匿名のメールが届く。そこに書かれている住所を訪ねると、少年たちに暴行され死にゆく娘スジンの動画を見て笑うチョルヨンを目撃する。一瞬、理性を失い誘発的にチョルヨンを殺してしまうサンヒョンは、また別の共犯者の存在を知り犯人を捜そうとする。
 一方、スジンの殺人事件の担当刑事オッグァンはチョルヨンの殺害現場を見てサンヒョンが犯人だと見抜き、追跡し始めるのだった。正義とは何か?誰が犯人を裁くのか?世論を巻き込み、事件は予想外の結末を迎える――。

監督:イ・ジョンホ
出演者:チョン・ジェヨン イ・ソンミン ソ・ジュニョン
【映画予告編】 【公式サイト】
2014年9月6日(土)公開
(C)2014 CJ E&M CORPORATION, ALL RIGHTS RESERVED

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『さまよう刃』公式サイト

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