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水川あさみ『不器用なひとりの女性として見てもらえたら』
すごく鍛えられた気がします(笑)
水川今回は、撮影後にCG処理をしてやっと完成するシーンが多くて、撮影現場で完成形を確認することができず“大丈夫かな、ちゃんと成立しているのかな?”という不安が常にありましたね。例えばひとつの画のなかで、オリジナルとバイロケが対峙するシーンとか、真剣にやっているんだけど、(画として観たときに)笑えてしまったらどうしよう? って。そういう部分で、すごく鍛えられた気がします(笑)。でも出来上がりを観て、監督を信じて良かったと思いました。
――初仕事となった、安里麻里監督の印象は?
水川女性監督ならではの繊細さと、アクションシーンなどでの男性も顔負けのダイナミックなスピード感、両方の才能をお持ちの方でした。目の下にクマを入れるなど、監督と一緒に桐村の切羽詰まった感を細やかに作っていくことで、バイロケが出現してしまう彼女の哀しみを表現することができました。いろいろな伏線が張りめぐらされているので、内容を全部知っていても騙されちゃうような、不思議な魅力の作品になったと思います。公開時にも監督のミスリードにうまくひっかかって、深読みしてくださる方が多くて。実は加賀美(高田翔)は飯塚(豊原功補)の息子じゃないかとか、そういう話題を耳にする度に“よしよし”って思っていました(笑)。
――ドラマやCMなどでの明るいイメージとはひと味違って、初主演映画『渋谷怪談』や『絶対恐怖Prayプレイ』など、美貌を活かしたホラー映画への出演も印象深い水川さん。ズバリ本作の怖さとは?
水川自分の相反する感情から、もうひとりの自分が現れるなんて、誰にでもあり得そうなだけにちょっと怖いですよね。しかも、ないものねだりな気持ち、妬みやひがみといった隠しておきたい感情から、もうひとりの自分が出てくるわけですから! 人には見せたくない感情を、少し違った側面から描いていく手法は怖いけど、新鮮さも感じました。ホラー映画という位置づけになってはいますが、心霊的な恐怖ではなく、サスペンスとしてのおもしろさがあり、登場人物それぞれの心理描写も色濃く表現されているところもすごくいいと思っていて。不器用なひとりの女性の物語として見てもらえたら、うれしいです。
恥をかくことを恐れずに続けていきたい
水川どっちもありますね。客観的に演じるときも、こんな感情になるんだ! と発見するときも。その時々によって違います。今回は、役に没頭してしまうと、オリジナルかバイロケか混乱して成立しなくなるので、感情的なシーン以外はいつも以上に冷静に計算して、全体の流れを頭で考えながら、演じていました。私にとっては挑戦でした。
――本作の撮影が行われた昨年は『シェアハウスの恋人』でゴールデンタイムの連ドラ初主演、10年ぶり2度目の舞台出演となった『激動-GEKIDO-』でも座長を務め上げました。30代に入って、ますます活躍の幅が広がっていますね!
水川役の幅が広がっている、できる役が増えていくおもしろさはありますね。一方で、若いころはがむしゃらに何でも楽しめていたのが、年を重ねて、役の重要さがわかってきたことで、楽しんでばかりもいられない部分も出てくるようになりました。だんだん誉められることが多くなり、それが怖くなって、久しぶりに舞台に立つことにしたんです。自分を打ちのめすような役に出会いたかった。
この映画も、とても大変な撮影でしたが、チャレンジしてよかったと思っています。映画には、ドラマとはまた違った充実感がありますよね。ワンシーンにかける時間も違うし、話の着地点が見えているからこそできることもある。映画のお仕事は、女優をやる限りはやっていきたいですね。これからも恥をかくことを恐れずに、お芝居を続けていきたいと思います。
(文:石村加奈)
バイロケーション
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