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ORICON NEWS
新生活を予感させる本・映画
自由を謳歌する学生たちの新生活の期待と不安
『バッド・チューニング』(1993年)
「進級や新学期など、新生活を目前に控えたロング・バケーションのある1日の騒動を描いた作品。そんな長い休み中のことだから、スクール・シネマの例に漏れることなく、しっちゃかめっちゃかな1日。上級生は新入生に洗礼の儀式をするために追いかけ回し、パーティーを計画するも親にバレて、ケンカやロマンス、ビールにドラッグと、自由奔放に思い思いに過ごします。退屈だった生活のガス抜きとしての1日を通して、これから始まる新生活への期待と不安を、見事に描いた作品です。まだ無名だった若きマシュー・マコノヒーを筆頭に、ベン・アフレック、ミラ・ジョヴォヴィッチ、レニー・ゼルウィガーなどが脇役として出演しているので、ぜひ探してみてください。また、監督のリチャード・リンクレイターの最新作「エブリバディ・ウォンツ・サム!!世界は僕らの手の中に」は、こちらは新学期が始まろうとしている4日前からの新入生の日々を描き、「バッド・チューニング」の続編とも言える作品なので、あわせておススメです」
新天地で人々の為に働く型破りな神父の物語
『我が道を往く』(1944年)
「名匠、レオ・マッケリー監督に2度目のアカデミー監督賞をもたらしただけでなく、主演男優賞など、アカデミー賞7冠に輝く名作中の名作。歌手としても名高いビング・クロスビーが、副神父として、ニューヨークの下町の教会に赴任するところから、物語は始まる。神父らしからぬ副神父で、老神父が訝る中、不良少年たちやギャングを更生させたり、町のいざこざを解決したりと、新天地で人々のために働く姿を描きます。と、書くと何とも地味だが、飄々としたクロスビーが、ユーモアと謙虚さを持って人々を支えていくのが感動的なのです。そして、まるで聞き分けのない子供のような老神父役のバリー・フィッツジェラルドの渋い演技もお見逃しなく。忙しい日々でも、こう在りたいと思わせてくれるー本です。もちろん、クロスビーの美声も聞くことができます」
中学生になる少女の葛藤と成長を描いたヒューマンドラマ
『お引越し』(1993年)
「父親が引越しして出て行ってしまい、両親が離婚しようとする中で、一人反旗を翻した少女の奮闘を描く相米慎二監督の傑作です。現状では、母親役の桜田淳子の女優としての最後の作品であるとともに、ヒロインの田畑智子のデビュー作でもあります。公開時には、作品ととも田畑さんが新人賞を総なめにしたことでも話題となりました。相米監督のワンシーン・ワンカットや、映画的な突然の雨など、演出が冴え渡っているとともに、後半でのお祭りでは、一転、静の演技で彷徨う少女が成長する姿を詩的に描いていてすばらしい作品です。ラストで、田畑さんが真新しい中学生の制服を、どのようにして身にまとい、頼もしい姿を見せてくれるかを、どうぞお見逃しなく」
引っ越しにより離れ離れになる中学生男女の淡い恋物語
『秒速5センチメートル』内の「桜花抄」(2007年)
「『君の名は。』で、昨年から最大の話題をさらったと言っても過言ではない新海誠監督の『秒速5センチメートル』。3作品からなる短編映画ですが、その中の第1編『桜花抄』をおすすめします。親の都合で引越しを繰り返す中学生の男女が、互いに惹かれあいながらも、それぞれまた引越しすることで、すれ違ってしまう前に、再会を果たそうとする映画です。桜の花びらが落ちるスピードから表題が取られている『秒速5センチメートル』自体は、個人的に最も『君の名は。』に近い作品であると思っていますが、この『桜花抄』では、新海誠監督の圧倒的な自然の描写が遺憾なく発揮されています。まるで桜のように降る雪の下で、やがて離ればなれになってしまう男女が、淡い恋を成就していく美しい映画です。『桜花抄』の後の2編も、その男女の後日譚ですので、合わせてご覧ください」
代官山 蔦屋書店
シネマコンシェルジュ
上村敬さん
『代官山 蔦屋書店』は「次世代のTSUTAYA」をコンセプトに、本・映画・音楽を取り扱うだけでなく、文房具、トラベルカウンターなど、人生を楽しむためのコンテンツを豊富にそろえる。ライフスタイル提案型の店舗の草分け的存在として、新たな読書体験を創造。周辺には『代官山 蔦屋書店』を中核としていくつもの小さな専門店が集結する。「コンシェルジュ」は、豊富な知識を持ち、顧客ひとりひとりに対応できるプロのスタッフ。上村氏は特にカメラワークが面白い映画に精通している。
http://real.tsite.jp/daikanyama/
<紹介作品の詳細はこちら>
バッド・チューニング
我が道を往く
お引越し
秒速5センチメートル(桜花抄)