(更新:)
ORICON NEWS
働くことを考えさせられる本・映画・音楽
アメリカ好景気時代のビジネスマン描写が痛快
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2014年)
「ウォール・ストリートに君臨したヤリ手のビジネスマンの実話を、マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオの黄金コンビが映画化。アメリカ映画で男子のお仕事ムービーというとやはりウォール・ストリートを中心としたものか、華やかなハリウッドビジネスの世界。この映画の何が凄いかというと、主人公を取り巻くその時代の描写です。『仕事』『ドラッグ』『SEX』とよく働き、よく遊べの精神で、アメリカの好景気の時代を突っ走る男の栄光と挫折は痛快そのものです。本当によく働いた先に栄光があるのか、というシニカルなメッセージが匂う傑作です!」
男の仕事を支えるのは「人とのつながり」
『ザ・エージェント』(1997年)
「仕事をする上で大切なこと、それは人とのつながりです。この映画はスポーツ・エージェントの世界を描いた大変興味深い秀作です。アメリカン・フットボールというスポーツ・ビジネスで物を言うのは、すべて『金』であると言い切る一方、男の仕事を最後に支えるのは、人とのつながりだと気づかせてくれる映画なのです。大手のエージェント会社で主人公のジェリー・マグワイアは花形社員でしたが、ミスをしてクビになり、そのから彼の本当の人生が始まるのです。ジェリーを演じるのはトム・クルーズ。彼の数多い出演作の中で、アクション抜きのジャンルでこの作品が最も面白いと思います」
仕事に恋に全力投球、サラリーマン青春映画
『フレッシュマン若大将』(1969年)
「加山雄三演じる田沼雄一は日本の高度成長期の、庶民の憧れの象徴でした。京南大学に通う麻布のすき焼き屋の息子で、スポーツ万能で歌も唄えてかっこいい、最後に恋人を獲得し、めでたしという東宝映画が誇る人気シリーズでした。しかし年数を重ねシリーズを作っていくと、加山雄三の実年齢が学生という設定に無理が出てきたのです。そこで考え出されたのが東宝お得意のサラリーマンものと若大将の合体。大学を卒業した田沼は新入社員となって『日東自動車』(日産が全面協力!)に勤めるという、当時で言うモーレツサラリーマンに変化したのです。今見ても仕事に恋に全力投球の若大将の姿に、観客は励まされること必至の、日本映画が誇る青春映画です」
やりたい仕事に出会う、という幸せ
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』(2010年)
「平凡な男が主人公の映画ほど、演じる俳優の技量が問われるもの。演技は“普通”が一番難しいからです。この映画は会社一筋の仕事人間の男が、故郷の母が倒れたことなど家庭環境の変化によって人生を見つめ直し、幼い頃の夢だった電車の運転士になる物語です。その主人公を演じるのは日本映画界にはなくてはならない名優・中井貴一です。時代劇、コメディ、シリアスと幅広いジャンルをこなしていますが、多くが普通の男を演じているのです。それが見事です。この映画が多くの観客の支持を集めたのは、本当にやりたい仕事に出会う、この普通の幸せが何ものにも変えがたいものだと、この映画が教えてくれたからでしょう」
代官山 蔦屋書店
シネマコンシェルジュ
吉川明利さん
『代官山 蔦屋書店』は「次世代のTSUTAYA」をコンセプトに、本・映画・音楽を取り扱うだけでなく、文房具、トラベルカウンターなど、人生を楽しむためのコンテンツを豊富にそろえる。ライフスタイル提案型の店舗の草分け的存在として、新たな読書体験を創造。周辺には『代官山 蔦屋書店』を中核としていくつもの小さな専門店が集結する。「コンシェルジュ」は、豊富な知識を持ち、顧客ひとりひとりに対応できるプロのスタッフ。吉川氏は特に古き良き名作映画をこよなく愛し、精通している。
<推薦作品の詳細はこちら>
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』
『ザ・エージェント』
『フレッシュマン若大将』
『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』