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(更新: ORICON NEWS

綾野剛『トコトン堕ちていこう……意識した“記号”』

蜷川実花×沢尻エリカのタッグで注目の映画『ヘルタースケルター』で“堕ちていく男”奥村を演じている綾野剛。どこか危うげな存在感をにじませながら、作品に独特な彩りを加えている。役柄に見出したもの、そして俳優としての今の素直な思いについて聞いた。

危険なことでも魅力的に見えたら踏み込んでしまう…

──奥村という役は、どんなことを意識して演じましたか?
【綾野】 この役は、作品にとって明確な“記号”だと思っていました。登場人物のなかで、最もわかりやすく“堕ちていく様子”を表現している記号。トコトン堕ちていこう、ということだけを意識していました。

──確かに、危うい道へまっすぐ突き進んで行きますね。
【綾野】 自分を客観的に見ることがない役なんです。「そこにいたら危ないよ」と自らに言い聞かせることをしないで、主観だけで生きている。だから危険なことでも、魅力的に見えたら足を踏み入れてしまうんだと思います。それは、役と向き合って発見したことでした。だから、常に主観でいることを心がけていましたね。

──ストーリーには、いろいろな世代の女性が登場します。
【綾野】 女性って、時代を背負えるんだなと思いました。沢尻さんの役はバブルを知らない世代。僕もそうですが、変容していくことが割と得意な世代なんです。一方で、別の世代の桃井かおりさんや寺島しのぶさん、水原希子さんたちが演じる役の存在がある。それぞれ、生きてきた時代を象徴する空気を持っていますよね。僕、この作品で時代を感じると思っていなかったんですよ。でも女性は成長していく、時代を背負っていく生き物なんだと、映画を観て改めて実感しました。とくに水原さんの吉川こずえ役は強烈。まさにこれが“今”なんだと思いました。


──主演の沢尻さんはどんな女優さんだと感じましたか?
【綾野】 真摯に役と向き合う、すごくまっとうな方だと思いました。普段の生活にも影響しているんじゃないかと思うくらい、自分に厳しくされている様子もうかがえて。女優らしい女優、という印象です。短い言葉では語りきれない、素敵な方だと感じました。

──今作をはじめとして、各方面から引っ張りだこの綾野さんですが、現状をどう感じていますか?
【綾野】 僕自身は基本的に変わっていません。周りが変わっているだけだと感じています。もちろん、いろいろと声をかけていただけるのは、純粋にありがたいこと。それに対して僕は作品で応えていく、それに尽きる。そういう感覚ですね。

未来のことを考えられない

──将来の方向性について考えることはありますか?
【綾野】 僕、どちらかというと未来のことを考えられないんです。目の前のことを地に足つけてやっていく、ということしか考えていません。3年後、5年後のことを考えてしまうと、そこに向かって走らないといけないから、苦しくなってしまう。足もとの大事なモノを見落としてしまいそうな気もするんです。だから、今目に見えているモノ、耳に聞こえているコトをきちんと受け止めるというスタンスで、仕事と向き合おうと考えています。

──目の前の仕事に全身全霊でのぞむのみ、と。
【綾野】 そうですね。逆にいえば、そうじゃないといい仕事ができると思えない。同時に危機感というか、「このままじゃダメだ」と自分のことを疑い続けてもいます。

──ご自身の“核”となっているモノは?
【綾野】 “人”です。僕じゃない、他の人。人生のなかで「自分ってこういう人間だな」とハッキリわかることって、そうそうないと思うんです。僕自身30年間生きてきてようやく自覚したことが、自分って単純だなということくらい(笑)。でも周りの人は、いろいろ言ってくれます。「優しいね」という人もいれば「冷たいね」という人もいる。「ミステリアス」という人もいれば、「子どもっぽい」という人も。そういうのが全部血や肉となって、僕を形成していると思います。だから人がいないと、自分を知ることができないです。

──お話を聞けば聞くほど、素顔への興味が増します。オフの日は何を?
【綾野】 寝ています(笑)。そういえば、最近タクシーに乗っているときに改めて思ったことがあって。車のウィンカーの音が好きだなって気づいたんです(笑)。ふと耳に入ってくることが重要なんですけど、無になれるというか……そういう感じは好きですね。

──アンテナが引っかかるポイントが、綾野さんらしい。それでは最後に、この映画を観て感じて欲しいこととは?
【綾野】 さっき女性と時代の話をしましたが、そんな時代感を感じてほしいです。そして自分に興味を持って、自由であることを知ってほしい。何が本当かウソかわからない今の時代で、きちんと何かを見極めたり、見つめたりする。そういうことを、作品を観る方それぞれの銀幕に投影してもらえたら嬉しいです。
(文:奥浜有冴/写真:片山よしお)

映画情報

ヘルタースケルター

 ものたんない!いつか私は叫び出す――美・名声・金・愛の欲にまみれた芸能界で光り輝くトップスターへ上りつめたりりこ。しかし、彼女には誰にも言えない【究極の秘密】があった……。「もとのままのもんは、骨と目ん玉と髪と耳とアソコぐらい。あとは全部つくりもんさ」全身整形でつくりものの美を纏ったりりこは、突き刺さる羨望に灼かれながら、欲望渦巻く世界をめちゃくちゃに疾走していく。りりこが巻き起こす【事件】の真相とは、何か?冒険の果てに辿り着く場所とは、どこか?

監督:蜷川実花
出演:沢尻エリカ 大森南朋 寺島しのぶ 綾野剛 水原希子 新井浩文 鈴木杏

2012年7月14日(土)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
(C)2012映画『ヘルタースケルター』製作委員会
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