自宅学習の影響も…「教養」テーマにした児童書の需要増 市場はすでに前年超えで出版社に商機
外出控えで増える子どもの読書 「児童書」市場はすでに前年同月上回る
中には、2009年刊行の『新型ウイルスのサバイバル 1』(朝日新聞出版)というタイトルも17位にランクイン。外出を控え、自宅で過ごす時間が増える子どもたちに向けて、読書をうながす親たちの心境がうかがえる。
「臨時休校発表当日から、お子様連れのお客様が増加し、児童書、学習参考書やコミックの販売部数が伸長しています」と話すのは、TSUTAYAの広報担当。
また、30万部を突破するヒットとなっている『東大教授がおしえる やばい日本史』など、“楽しくてためになる”児童書に力を注ぐダイヤモンド社の宣伝プロモーション担当者は、「臨時休校発表当日から、すべての児童書の売り上げが急増している」と言い、「家庭で過ごすことが多くなる子どもの時間つぶしという需要はもちろん、学習機会が減ることにならないよう、ゲームやマンガではなく、少しでも知識になる本を読ませたいという親の願望があるのだと思います」と分析する。
児童書市場動向をみると、2020年1月度が77.2億円で対前年同月比は104%、2月度が59.8億円で同112%(3/9付時点)。この調子だと、3月はさらに伸びることが見込まれる。
教養本ヒット、背景に垣間見える「常識ある子ども」を願う親の心境
また、『お金の使い方と計算がわかる おかねのれんしゅうちょう』(学研プラス)は学研の頭脳開発シリーズの一冊。キャッシュレス時代を背景に、日常生活で買い物をする際、計算ができなかったり、小銭を使いこなせなかったりする小学生が増えていることを受けて、楽しくおかねの知識を身につけられる教材として、2017年刊行された。
発行元の学研プラスの営業担当者によると、「休校要請以降にテレビで紹介されたことも影響してか、約120%増で売り上げが伸び、品切れ店も出ており、補充対応に追われている」と言う。
未就学児対象の教養本としては『おやくそくえほん』(日本図書センター)が好調だ。小学校入学前後に身につけたい42の習慣を「おやくそく」として紹介しており、今年2月に刊行され、売り上げを伸ばしている。
それら教養本の好調な売れ行きに「本を通じて教養を深めてほしいという親御さんの心境が感じられます」とTSUTAYAの広報担当者。休校要請以降、学習ドリルが異例の売れ行きとなっていることが全国各地のニュースで取り上げられたが、勉強だけでなく、たっぷり時間が与えられたこの機会に、教養や常識も身につけさせたいという親の思いが表れているということだろう。
その願望を受け、TSUTAYAでは、より自宅で過ごす時間に読書を楽しみ、想像力、表現力を育む手助けになればと、好きな本を題材に、印象に残ったシーンを絵に描いて応募する「読書感想画コンクール」を3月13日より開催する。また、各書店も、入口付近に児童書を集めた特設コーナーを配するなど、様々な工夫で対応していることから、学研プラスでは、「店頭飾り付けTwitterコンクール」を実施中。自社のサイトにフリーでダウンロードできる飾り素材や、読者用のノベルティシールを用意するなどして、書店員が取り組みやすいようフォローしている。