ラスボス・R-指定とDJ松永、昨今のラップ“バブル”語る 若者へ「努力をしないと化石化する」
突撃レポ!Creepy Nuts・R-指定の真実
突撃レポ!Creepy Nuts・DJ松永の真実
2代目ラスボスに就任で怖い部分もあるけど、飛び込んでいくことも大切
R-指定HIP HOP(ラップ)表現のひとつに、自分がいかにカッコいいか、すごいかを誇示する「ボースティング」という手法があるんですが、その部分が今作では表現できているのかなと。それはライブをやってきた自信から生まれたものというか。年がら年中、マイクを握って喋ることが自分のアイデンティティーになっていて、それが自然に表現されたような気がするんです。
──R-指定さんは、今年よりテレビ朝日系『フリースタイルダンジョン』の2代目ラスボスに就任。でも、その立場にありながら、マイクを持って闘う姿勢を崩していません。このあたりの経験も、本作の放つ「強さ」に反映されている部分があるのかなって。
R-指定あんまり面白くもないラップがテレビで流れるのならば、自分がやった方がマシという気持ちで番組に参加させていただくようになって、徐々にイメージが定着してしまったので、一度そこから距離を置いたんです。でも、1代目ラスボスである般若さんが、自分の活動を続けながら、俳優とか他の活動にも積極的に取り組んでいる姿や、またバトルで若いラッパーに倒されてしまった時の姿などを見て、カッコよさを感じた。怖い部分もあるけど、飛び込んでいくことも大切だなって思って。
──DJ松永さんは、本作が完成するまでの時間はどんなものだったのでしょう?
DJ松永今までの活動の文脈を踏まえて完成した作品と言えますね。今回のタイトル・トラック「よふかしのうた」は、ラジオ番組『オードリーのオールナイトニッポン10周年全国ツアー』(ニッポン放送)のテーマソングに起用していただいたんですけど。思い返すと、僕の学生時代は自意識が凝り固まり過ぎて、辛いことや恥ずかしいこと、後ろめたいことを友達と共感しあったり共有しあったりということはせず、ずっと偽りの仮面をかぶり続けて生活していました。そんな時期にオードリーさんのラジオに出会い、特に若林正恭さんが僕の封じ込めていた思いをしゃべっていると、初めて芸能人に共感するという体験をしたのを覚えてます。そして、若林さんと南海キャンディーズの山里亮太さんのユニットである「たりないふたり」からタイトルを拝借して、Creepy Nuts最初の作品「たりないふたり」を完成させました。いろんな流れがあって、この作品へとたどり着いたという感じなんですよね。
HIP HOPは移り変わりの激しいジャンル、努力をしないと化石化する
R-指定僕らラジオのリスナーは、そういう方であることはわかっていましたから。あんなに面白くて、弁の立つ人がモテないわけがないって。
DJ松永金星なんて一ミリも思わなかったですよね。あんなカッコいい人ですから。
R-指定僕らが尊敬するライムスターの宇多丸さんも、ルサンチマン(攻撃)的なラップをするけど、実際にお会いすると紳士的。そういう方々の影響は受けていますよね。人間性を含めて、表現するものすべてにおいてカッコよくありたいなって思わせる。
──カッコよさを表現するために「時代性」みたいなものは意識しますか?
DJ松永それはありますね。特にHIP HOPは移り変わりの激しいジャンルなので、手法を増やす努力をしないと。そこを怠ってしまうと、すぐに化石化していく。また新しい表現方法を見出した瞬間の快感もあるし。
R-指定また以前は、古いと思われようが自分のスタイルを追求していた部分があったんですけど、今は流行に飲み込まれない腕力がついた気がするというか。若い世代に対して「お前らがやっている手法でも泳げるし、ノセられる」というところを見せておきたいなって。そこも、ひとつの「ボースティング」ですよね。今回の作品では、トラップ(現在チャートを賑わせている重低音にエレクトロのビートを効かせたサウンド)の要素に、リリカルなラップをのせたらどうなるか?とか、自分たちらしい試みを表現している楽曲もあるし。
──なるほど。
R-指定また今どきの要素を取り入れながらも、桂米朝さんの落語を拝借したフレーズもあったりなど古典も取り入れたりして、自分たちのバランス感覚でいろんな要素をミックスしていきました。
──おふたりの音楽には「お笑い」の要素が重要なんですかね。
DJ松永HIP HOPというのは、自分たちのリアルを表現するカルチャーなので、どんな要素といえど、その瞬間に感じたことや経験が、すべて作品に反映されるものなんですよ。