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プロデューサーが語る『若おかみは小学生!』メイン館打ち切りからの復活劇の教訓

テレビアニメ版からの大人ファン層が興行を支える

 初週の興行成績が伸び悩んだことによる、1週でのメイン館の打ち切りは、作品の質の高さを認めていたアニメファンたちを突き動かした。その声は徐々に大きくなり、テレビアニメ版からの大人のファンを中心に拡大。配給側もこの動きを敏感に察知し、ターゲットをファミリー層から大人へシフトした。顕著な例が、監督とスタッフという制作者のみの舞台挨拶だ。10月5日に行われた、高坂希太郎監督、齋藤プロデューサー、豊田智紀プロデューサーのトークイベントは、発売から10分ほどでチケットが即完売となった。

「スタッフのイベントは、お試しという意味合いが強かったのですが、まさかの完売(笑)。この時点で大人に対する需要が高いことが明確にわかりました。同時に、アニメ好きの目にもしっかりした品質が保たれているという自信はさらに深まりました」。

 制作陣が「クリエイティブに誠実に向き合えば、観客にしっかり届く」という強い信念のもと、同作に向き合ったことが、腰の強い興行に結びついていることは事実だが、一方で、ジワジワと広がっていった評判を、もう一段階、広く拡散させたのが、『君の名は。』の新海誠監督の賞賛ツイートだ。「新海さんが作品を評価してくれたことで、アニメファンの注目度は高まったと思います。さらにYahoo!ニュースのトップに本作が取り上げられたことで、一般層にも広がったのでは」と齋藤氏は分析する。

子どもが好む題材でも『子ども向けに作らない』ことが大事

 その作品テーマやストーリー性から映像まで、あらゆるクオリティがアニメファンを納得させる仕上がりの力作だったにも関わらず、興行スタートでつまづいてしまった同作。しかし、そこから再起させ、今なお興行は上向きをキープしているなか、齋藤氏に今作の特異な興行から得たことを聞くと、「アニメーションというのは、やはり子どもをターゲットにする場合が多いのですが、この作品を経験して、改めて子どもが好む題材でも『子ども向けに作らない』ことが大事なんだなと実感しました。それはプロモーションだけでなく、映像制作の段階からです」と語る。
 実際に同作の観客のメインは、テレビアニメ版からの大人のアニメファンだった。ファミリー層に加えて同層をしっかりと動かしていることが現状の興行を支えているのだ。齋藤氏は、当たり前のことだがと前置きし、そうしたファンを動かすためにもっとも大切なのは「映像制作に真摯に向き合うこと」であり、なによりも心に響く、心を動かす作品そのものの力を痛感したことを、改めて今作の特異な興行の教訓として語ってくれた。
(文:磯部正和)

『若おかみは小学生!』

 小学6年生のおっこは、交通事故で両親を亡くし、祖母の経営する旅館「春の屋」に引き取られる。そこで、旅館に住み着いている幽霊のウリ坊や、転校先の同級生でライバル旅館の跡取り娘・真月らと知り合う。そんなおっこは、春の屋の若おかみの修行を始めることになり、失敗の連続に落ち込みながらも、不思議な仲間たちに支えられ、日々奮闘するなかで少しずつ成長していく。
監督:高坂希太郎
声の出演:小林星蘭 水樹奈々 松田颯水 薬丸裕英 鈴木杏樹
全国公開中 【公式サイト】(外部サイト)
(C)令丈ヒロ子・亜沙美・講談社/若おかみは小学生!製作委員会

提供元: コンフィデンス

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