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『アンナチュラル』を支えた音楽の効用

金曜ドラマ『アンナチュラル』(TBS系)の劇伴を手がけた得田真裕氏 (photo by hashimoto yu)

 「第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞」において、作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚本賞の4部門を受賞したTBS系ドラマ『アンナチュラル』。同ドラマの人気に音楽も大きな役割を果たしていた。同ドラマの音楽を担当した得田真裕氏に、制作過程や劇伴について話を聞いた。

「荘厳さ」を出すためにブルガリアンボイスを使った

――『アンナチュラル』のサウンドトラックが、3/16付「週間デジタルアルバムランキングで12位を記録しました。
得田 ありがとうございます。デジタルの場合、特定の曲がほしいといった場合もDLしやすいですし。

――視聴者の(楽曲の)選択は気になりますか。
得田 そうですね。以前はドラマ音楽について視聴者の意見を聞く機会はなかったのですが、今はSNSで「この曲いいな」とか「この曲合わないな」といったお話を聞くことができるので、それが勉強になっています。
  • TBS系 金曜ドラマ「アンナチュラル」オリジナル・サウンドトラックのジャケット写真 (C)Anchor Records

    TBS系 金曜ドラマ「アンナチュラル」オリジナル・サウンドトラックのジャケット写真 (C)Anchor Records

――その『アンナチュラル』ですが、オープニング曲「アンナチュラルUnnatural Death」のブルガリアンボイスが印象的でした。
得田 演出の塚原あゆ子さんが打ち合わせのときに、「荘厳さみたいなものがほしい」とおっしゃっていて。それを出すにはコーラスがいいのではないかと思って使いました。「不条理な死」とか「不自然な死」という、死に対してこれまでにない感覚を狙っていると感じたので。

――作曲する際、使われるシーンを想定することはないんですか。
得田 場面を想定して書いてしまうと、その場面しか使えない曲になってしまう可能性があるので、場面のことは考えません。「アンナチュラルUnnatural Death」も、そもそもオープニング用で書いたわけではなかったんですが、曲を完成に向けてブラッシュアップしていく過程で、「脚本のこの場面から始めたい」と言われたりして、その分書き足したためにイントロが長くなっています。1話目を観て「ああ、こうなるんだ」と。ドラマ音楽は基本的にプロデューサーや監督、選曲の方が、そのドラマをどう見せるかによって使われ方が変わりますから。

――つまり劇伴作家は、制作サイドが打ち合わせなどで発信する言葉から、どんな音楽にしたらいいのかを考えるのがテクニックのひとつ、ということですか。
得田 そうですね。どんなドラマにしたいのかが、お互いかみ合わないと、うまく行かないのかなと思います。

制作サイドからは“新しい音色”を要求されることが多い

――作家性についてはどう考えていますか。
得田 ドラマを観てくださる方に、「あの人がやるとこんな音楽が流れる」とは、なるべく思ってもらいたくないんです。ドラマは1つ1つ新鮮なもので、さまざまな手法で新しいものを作ろうと頑張っていますから。だから、1回1回新鮮なものを作るためのトライはしたいと思っています。

TBS系金曜ドラマ『アンナチュラル』は、『第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞』で作品賞に輝いた (C)TBS

TBS系金曜ドラマ『アンナチュラル』は、『第11回コンフィデンスアワード・ドラマ賞』で作品賞に輝いた (C)TBS

――そういう意味では、『アンナチュラル』は得田さんにとって、挑戦的なものだったと思います。
得田 例えば推理シーンの場合、思考をイメージさせる落ち着いた曲が流れるケースが多いと思うんですが、このドラマでは4つ打ちの速い曲がガンガン流れる。解剖で緻密さが要求されるところでロックが流れたり(笑)。どんどん前に行く感じ。1話目を観た視聴者の感想でも、「(音楽の)スピード感があったという声が多かったんですが、それは野木亜紀子さんの脚本など、いろいろな要素が絡んでいたからですが、私自身も確かにこれまで携わった作品のなかでも1番物語のテンポ感を速く感じたかもしれません。先ほど話したように、普段演出とは異なった印象を持つ音楽が流れたり、普段のドラマのメインテーマや楽曲はBPM(Beats Per Minute)120とか、上がっても130〜140が多いですが、今回のメインテーマは172くらいあるんです。140を超えていた曲もいくつもあったと思います。

――ドラマのサウンドトラックでは、メロディーもさることながら、音色が気になります。今回のブルガリアンボイスとか

得田 なにかひとつ、特徴が出せる楽器を主軸に置くというのは重要で、制作サイドからもそれを毎回言われます。「今まで聞いたことがない楽器ないですか?」と(笑)。

『正義のセ』では「ハンマーダルシマー」という楽器を使う

――次回作は、現在放送中の日本テレビ系『正義のセ』ですが、どんなことを大事に作られましたか。
得田 女性検察官の物語なのですが、まだ新人なので、いろいろな失敗がいっぱいあると思うんです。でも、そこで奮闘して頑張るお話だと思って作っています。検察官ですが、ヒロイックになり過ぎないで、視聴者目線になればいいなと。

――聴きどころは?
得田 先ほどの音色にも通じますが、今回はイントロに「ハンマーダルシマー」という楽器の音色を使っていて、「なんの音だろう?」と思うかもしれません。鍵盤打楽器なんですが、変な使い方をしているので。それから、事前に提案された楽器のイメージがマリンバ、マンドリン、ブズーキだったのですが、それらの音が今回のドラマの音色かなと思って作りました。どのように使われるか楽しみです。

――視聴者のなかにも、劇伴に注目する流れができつつあるように思います。ドラマファンに向けて、ひと言いただけますか。
得田 『アンナチュラル』で興味深いなと思ったことがありまして、高校生のいじめの回(第7話「殺人遊戯」)で、犯人っぽい子といじめられている子のシーンがあって、そこは辛いシーンだったのですが、映像とは反対にとても穏やかな曲が流れていたんですね。それを見た視聴者のなかには「音楽が合ってないな」と書いた人もいれば、「音楽が合っている」と書いている人もいたんです。自分なりに分析してみたのですが、たぶんそれは、視聴者がどの役者の立場(目線)に立って観ているのかによって、音楽の捉え方が変わっているということだと思いました。どうして悲しく辛そうなシーンなのに、反対の優しく穏やかな曲が流れたのか、音楽に違和感がある時に、そこになんらかの制作者の演出の意図があって、このような表現をしているのではないかと一歩立ち止まって考えると、ドラマを見る角度みたいなものが変わってさらに面白くなると思います。是非劇伴を、ドラマを観る角度のひとつ、切り口にしてもらいたいですね。

(インタビュー:柿谷浩一)

提供元: コンフィデンス

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