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ドワンゴ・横澤Pが語るニコニコ超会議「成功のカギは“余白”」

  • 横澤大輔氏/ドワンゴ 専務取締役CCO ニコニコ超会議統括プロデューサー

    横澤大輔氏/ドワンゴ 専務取締役CCO ニコニコ超会議統括プロデューサー

 2012年から始まった「ニコニコ超会議」は今年7年目を迎え、リアルとネット・デジタルが融合したイベントの代名詞となるほど認知されている。大相撲や歌舞伎、自衛隊など思いも寄らないコラボレーションでも毎回話題をさらう同イベントは、その話題性と同時に“赤字収支”という点も話題となる。いよいよ4月28日、29日の開催が迫るなか、同イベントの統括プロデューサーの横澤大輔氏に、イベントの狙いや成功要因を聞いた。

当初からコンテンツで集客できても駄目と考えていた

――まず「超会議」を開催する目的から改めてお聞かせ下さい。
横澤大輔「ニコニコ動画」を運営する過程で、ドワンゴではユーザー同士のコミュニケーションを介してさまざまなコンテンツが生まれたり、あらゆるジャンルのクリエイターさんが出てくる流れを生み出し、これまで存在しなかった、人が集まれる「ネット上の空き地」が作れたと感じていました。
“ニコ動”は誰もが好きなことを好きと言えて、それを応援してくれる人がいるプラットフォームです。では、ネットで面白いと言われるコンテンツの本質とは何か、を考えた時、リアルなコミュニティで好きなものを好きと言える環境があること、そして価値観を否定される恐怖を減らすことだと思いました。「ニコニコ超会議」は同じことを好きな人が遊び方、楽しみ方に応じて集まれる文化祭のような居場所を作ることを心がけています。
 参加者は2日間のイベントから再びネットに戻れば、コミュニティが活性化されていきます。ニコ動にリアルやアナログの手法を組み合わせることで生まれる、ハイブリッドなプラットフォームやコンテンツを、次の方向性として見せたいと考えています。

――毎年、大手スポンサー企業が目立ちますが、協賛に超会議独自のスタイルがあるとお聞きしました。
横澤大輔協賛は、当初から1業種1企業の意識はありませんでした。僕達はイベント会社ではありませんので、リアルなプラットフォーム作りだけを考えています。競合だから入れないという従来のイベントの考え方ではなく、コンテンツと結びつけながら営業をしています。その結果、コンビニ業界やカラオケ業界の企業様など毎年多くの協賛社様に入っていただけています。
 また、「超会議だからこそ色々挑戦できる」と若手の社員の方が普段できない企画を実現されたりと、いい空間になっているな、と感じます。2日で15万人を動員する国内イベントでここまで多様な企業様が参加してくださるのは稀有じゃないでしょうか。

――コンテンツやインフルエンサーへのニーズが高まる昨今、企画単体への注目と超会議のブランドイメージのバランスについては、どのようにお考えですか。
横澤大輔まず、目玉コンテンツのアップデートは止めようと。当初からコンテンツで集客できても駄目だと思っていました。その分、超会議のブランディングは初期から強化していました。例えば、キャッチコピーやキービジュアルには時間を割きます。今年は「キミの日常は、誰かの特別。」というコピーを作りました。自分が好きな事、時間を割いてきた事は、自分軸で見ると普通であっても、他の人の目線では凄く特別に見える。超会議がそうした人たちが集まれる場所だというメッセージ性を掲げ、ビジュアルや動画でも一貫して伝えています。超会議にファンが付いてくださっているのは、弊社の強みです。

イベントは手段。他社とはマネタイズの仕組みが違う

  • 3回目の実施となる「超歌舞伎」。今年の演目は、最新作『積思花顔競(つもるおもいはなのかおみせ)』。主演:中村獅童/脚本:松岡亮。

    3回目の実施となる「超歌舞伎」。今年の演目は、最新作『積思花顔競(つもるおもいはなのかおみせ)』。主演:中村獅童/脚本:松岡亮。

――イベント開催への期待が国内でも高まる一方、利益化の課題もあります。超会議も毎年、赤字運営が話題にさえなっていますね。
横澤大輔毎回、数億円の赤字しか出していませんよ。ですが売上は2日でその倍以上上がっています。運営のお話をすると、毎年の規模感では十数億円を使って数億円の赤字という構造ですね。「2日でそんなに使うの?」とよく言われもしますが、どう楽しむかもエンタテインメントの余白を作ることに繋がると考えています。僕たちはその額を広告宣伝費として捉えています。ですので、前後のプロモーションやメディア露出には注力して、企業様や出演者様にどれだけ還元できるかを最大に考えます。単純に広告換算値として算出すると超会議は20億円以上の金額になります。わずか数億円で実現することは、他社が真似できない新しい手法なはずです。「赤字でしょ、ダサいな」と思われても構わないです。
 僕たちはイベントを手段として使っていますので、他社とはマネタイズの仕組みが違います。最近の消費者は、従来のマスメディアでのプロモーションを見てイベントへ行くという行動よりも、自分の好きなものを共有できる人に会いたいという思考が強まっていると思います。従って、イベントの目的もマネタイズの場合もあれば、コミュニティ作りもあるなど、多様化し始めています。

――「リアルとデジタルの融合」は国内のコンテンツ市場やエンタメ業界が積極的に取り組む姿勢を見せつつも、成功例は多くありません。
横澤大輔僕は熱量と曖昧さが重要と思っています。曖昧であるが故にコミュニケーションにも余白が生まれやすい。デジタルでは表せない会話や時間をリアルの場でみんなが一緒に埋めていくことに、ネット世代は面白みを感じていると考えます。完璧なコンテンツほど、コメントが付きにくいことがあります。あえて主張せず、ユーザーをコンテンツとコミュニケーションさせることが重要なのです。超会議の場合、絶対にすべてを見て回ることはできません。その分、終わった後に「どこ見た?」とそれぞれが好きなモノを共有し合うコンテンツ軸のコミュニケーションが始まります。

ポイントは「異質」なものをもってくること。今年はYouTuberも参加

――会場でしか見られないコンテンツやクリエイターの組み合わせは毎年注目を集めます。企画の立て方で意識していることは何でしょうか。
横澤大輔3つあります。1つはニコ動で活躍してくださった方を巻き込むこと。一般ユーザーから著名人の両方です。2つ目はネットで話題を集めた方の参加。3つ目は「異質」なものを持ってくること。今年は「テクノ法要」が来ます。ネットでも話題になり、超会議らしいかなと。音響ではBOSEさんとコラボしてコンテンツ化を狙っています。コラボレーションの実現とコンテクストの提供は綿密に考えます。
 例えば、松竹さん、NTTさんとともに作っている、伝統芸能の歌舞伎と最新テクノロジーを融合させた『超歌舞伎』は、若者に人気の初音ミクと中村獅童さんに共演していただいたり、『刀剣乱舞』とのコラボでは、刀鍛冶を実演する「超刀剣」(2016年実施)や、将棋AIで盛り上がる「超将棋」など、今の若者が興味のあるコンテクストを入れて、会場では違和感なくリアルで見てもらう企画作りをしています。今年はYouTuberも来ます。他社プラットフォームですが、YouTuberさえも入れて違和感がないのは、このイベントの強みだと思っています。

――20代の若者というターゲットユーザーを取り込み増やすための取り組みはいかがでしょうか。
横澤大輔コンテンツをプラットフォームとして考え、本来のターゲット以外を取り込む戦略を作っています。特に市場の分散化が激しい日本では、ターゲットを取り込み結合させる仕組み作りは大きな課題でもあります。
 ですが、コンテンツの世界観やストーリーを作り込めば、ユーザーが想像できる余白は減っていきます。となると没入感との勝負になり、客単価を伸ばす仕掛け作りに注力してしまうリスクがあります。外部を巻き込むための仕組み作りが逆に難しくなっていますね。
 僕達にとって戦略的なターゲット設定は非常に重要です。ターゲット化されたコンテンツが、コラボによって別のターゲットに訴求できたアニメやゲームの事例は幾つも見てきました。ユーザーが二次創作できる仕組みを開放したり、外部とコラボレーションするなど、世界観を横展開することにユーザーは面白みを感じています。その仕組み作りには綿密なプロデュース力が求められる時代になったと思います。

――超会議を継続させるためのドワンゴの戦略はいかがお考えですか。
横澤大輔超会議は日本の見本市だと思っています。インバウンドでのお客様も増えています。今後は超会議を通じてユーザーや企業に価値を提供しなければいけない。動員は実現できました。超会議やニコ動と組めば、商品が売れる、ムーブメントが作れるというプラットフォームを目指します。そしてドワンゴは、プラットフォーマーとして仕組みをどれだけ増やせるか。自分たちのIPとコンテンツとの関係性を垂直統合的に持ちながら、外とはビジネス化を目指す。両軸の価値創出を図る戦略をさらに強化していきます。そこからハイブリッドなコンテンツ、プラットフォーム、お客様との関係が生まれ、拡張していけば、そこに未来があるはずです。
(文/ジェイ・コウガミ 写真/西岡義弘)

『ニコニコ超会議2018』概要

「ニコニコ超会議」は「ニコニコのすべて(だいたい)を地上に再現する」をコンセプトに2012年より開催し、今年で7回目を迎える超巨大イベントで。会場では、ニコニコ動画やニコニコ生放送で親しまれているコンテンツをブースとして展開し、ネットの世界を実際に体験共有できる場を提供。昨年は会場来場者数15万4601人、ネット視聴者数505万9967人を動員した。
【開催日時】2018年4月28日(土)10:00〜18:00、29日(日)10:00〜17:00
【主催】ニコニコ超会議 実行委員会
【会場】幕張メッセ国際展示場1〜11ホール、イベントホール
【公式サイト】http://www.chokaigi.jp(外部サイト)
横澤大輔氏/ドワンゴ 専務取締役CCO ニコニコ超会議統括プロデューサー
Profile/よこさわだいすけ
81年東京都生まれ。ドワンゴのコンテンツ戦略担当。01年よりドワンゴの携帯コンテンツ制作を始め、ニコニコ動画公式生放送やさまざまなイベント、新規事業を立ち上げる。ニコニコ超会議では統括プロデューサーとして15万人超規模のイベントを手がけている。「ニコニコ超会議2016」より、伝統芸能の歌舞伎とデジタルを融合させたオリジナル新作超歌舞伎「超歌舞伎」の総合プロデューサーを務めている。

提供元: コンフィデンス

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