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【ディズニー連載】データベース構築を現地取材 「受け継がれるDNA」と「支えるシステム」

ARLメアリー・ウォルシュ館長が語るクリエイターサポート

過去から影響を受けることでイノベーションを促す
ディズニーアニメーションの歴史そのものと言えるアニメーション・リサーチ・ライブラリー(ARL)の館長を務めるメアリー・ウォルシュ氏に、実際のスタッフの利用シーン、ディズニー社におけるARLの役割を聞いた。

10年前にARL設立、7年前からDB化開始

――ARL館長の仕事について教えてください。
メアリー幸運にも、私はウォルト・ディズニー・カンパニーで最高の仕事に就いていると思っています。社内でアートワークにアクセスしたい人は誰でも利用できますから、あらゆる部署とのかかわりがあるのです。たとえば、イマジニアリングがテーマパークの新しいアトラクションを作るときに参考にすることもありますし、『ジャングル・ブック』の実写版が作られたときは、プロデューサーと脚本家がオリジナルのアニメーションのコンセプトアートを見にきました。もちろん、クリエイターが過去の作品からインスピレーションを得たり、学んだりするのに使われることもあります。

――6500万点のアートワークを誰でもアクセスできる状態のデータベースにするのは大がかりなプロジェクトですね。
メアリーARLが設立されたのは10年前で、デジタル化は7年前から始まりましたが、とても時間のかかる作業です。まずコレクションをくまなく調べて、それが適切に管理されるようにしなくてはなりません。そして、スキャンするすべてのアートワークにおいて、詳細な記録をデータベース上に作成する必要があり、スキャンした画像をメタデータと紐付けし、イメージブラウザにアップロードします。やらなければならないことがたくさんありますが、会社にとって重要な参考資料になるものや、社内のクリエイターと共有する必要性の高いものから始めています。

ディズニーほどの管理はほかのスタジオではない

――映画制作スタッフから相談を受けたり、アドバイスを求められたりすることもありますか?
メアリーかなり頻繁にありますよ。『ズートピア』では、バイロン・ハワード監督はまだストーリーを練っていたころ、『ロビンフッド』の原画を参考にしていました。制作が始まると、3Dアニメーターたちをライブラリーによこして、アニメーションのスケッチを観察させたり、実際にそれらの画像をスキャンして、オリジナルのコンセプトシートと照らし合わせ、アニメーターたちがペンシルテストを見られるようにもしていました。コンピューターで描く作品であっても、こういったことがアニメーターたちのクリエイティブに影響を及ぼします。アーカイブがクリエイターたちのインスピレーションになっているという点で、私たちも制作に直接的なつながりがあるのです。一方で、『モアナと伝説の海』の世界感やキャラクターのスタイルは、『アナと雪の女王』『塔の上のラプンツェル』『白雪姫』など過去のどの作品とも違っていて、ディズニーアニメーションに携わるクリエイターたちの芸術性と職人技が進化し続けていることに驚かされます。

――ARLは、ディズニーにとって重要な役割を担っているのですね。
メアリーディズニーのようにきちんとアートワークを保管しているスタジオはほかにありません。ウォルト・ディズニーはその価値を認識していて、最初に始めたのは彼自身なのです。インスピレーションや教育的な資料として重要であるというだけでなく、アートとして再利用することもあったので、ビジネス的な理由もありました。それに、過去のすばらしいアートに影響を受けたクリエイターたちが、自分もすばらしいものを作り続けようとするので、イノベーションを促すことにもつながります。私たちは、そのレガシーを保ち続け、すばらしいアートやストーリーを作る手助けをしています。

提供元: コンフィデンス

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