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“エンタメ産業化”を見据えた第9回目「島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭」レポート

沖縄国際映画祭実行委員会 副委員長・安里繁信氏
「世界に向けて情報を配信できるようになったとき、その流れを沖縄から仕掛けたい」
  • 沖縄国際映画祭実行委員会 副委員長・安里繁信氏

    沖縄国際映画祭実行委員会 副委員長・安里繁信氏

「島ぜんぶでおーきな祭 沖縄国際映画祭」を“人づくり、街づくり、島づくりのお祭り”とし、文化と人材を創出する機会ととらえて様々な企画を繋いできた副委員長・安里繁信氏。沖縄や日本の未来までも思い描く、その展望を聞いた。
  • イオンモール沖縄ライカムの屋内ステージで行われたお笑いイベントには大勢の観客がつめかけた

    イオンモール沖縄ライカムの屋内ステージで行われたお笑いイベントには大勢の観客がつめかけた

他とは土俵が違う“沖縄流”の映画祭

――開催エリアが拡大し、学生応援団も新たに加わるなど「島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭」はより地域に密着した内容でした。
安里実行委員長の大崎洋さん(吉本興業社長)は、開催にあたって改めて全41自治体を訪問して、今一度この映画祭の意義をご自身の言葉で伝えて歩きました。沖縄は陸続きではないので、すべて廻るのはとても大変です。1日1便の船に乗れば1泊しなければなりませんし、天候が悪ければ帰れない。そんな地域も多い中、各首長に来年10回目の開催を迎えたいという気持ちを丁寧に伝えたのです。これが1つ、映画祭が次のステージに向かうきっかけになりました。映画祭は年間を通して沖縄各地で実施していて、4月の映画祭はその集大成なのです。

――映画祭は、地域おこしの役割も担っているのですね。
安里各自治体や学園祭などで長く続いてマンネリ化してしまったイベントに、お笑いや新しいエンタメの要素を“チャンプルー ”して、新しいカルチャーを生み出しています。吉本さんが様々なコンテンツを持ち込むことで、大人も子どもも一緒に取り組める。行政も民間も経済団体も青年会も、みんな巻き込みながら応援団を手作りで作っているのです。たまに「これは映画祭ではない」といった意見も聞きますが、一般的な映画祭とは土俵が違って、こちらは人づくり、街づくり、島づくりのお祭りなのです。
  • 那覇市内のホテルでは「沖縄の未来をつなぐエンタテインメント産業と人材の育成について」と題した記念シンポジウムが実施され、那覇市・知念覚副市長が「沖縄を機に一大エンタテインメントの形成を目指す」と挨拶した

    那覇市内のホテルでは「沖縄の未来をつなぐエンタテインメント産業と人材の育成について」と題した記念シンポジウムが実施され、那覇市・知念覚副市長が「沖縄を機に一大エンタテインメントの形成を目指す」と挨拶した

――吉本興業は来年4月、那覇市にエンタメに関わる人材育成を目的とした専門学校を開校します。
安里沖縄の子どもたちと一緒に、新しい時代を作っていきたいという思いがあります。私は、日本のエンターテーメントコンテンツが世界に飛躍できなかった最大の課題は、テレビを含む情報がガラパゴス化されてきたこと、つまり電波法の規制にあると思っています。それが将来的に改正され、あらゆる情報やコンテンツを世界に向けて配信できるようになったとき、その流れを沖縄から仕掛けたいと考えているのです。そのためには、今からいかに人材と情報とコンテンツを蓄財できるかが重要で、映画祭の開催はその未来づくりでもあるのです。

――具体的には、沖縄のどんなところが武器になるとお考えですか。
安里これまでの日本は国内市場だけと向き合ってきましたが、今後は世界に向けて、情報をすべて英語で配信するような時代になるかもしれません。様々なコンテンツの見直しを迫られたとき、沖縄が歴史的に中国や米国等多くの国々の文化を自らの文化として受け入れてきたチャンプルー性が生かされ、国策として様々な日本のトレンドを配信していける地域になりうると思います。また、政府が挙げる沖縄振興計画でもおそらく、今後のビジョンとして日本のカルチャーを武器にしていく流れが起こるでしょう。
 そうなると、吉本さんが沖縄に持ち込んでくれたエンタメの様々なメニューを産業化していくビジョンが、やっと動き始めるのです。そこからの沖縄はもっと面白くなりますよ。沖縄は地方都市で唯一、人口が伸びており、沖縄に移り住む若者も増えています。また、5万人ほどの人が住む石垣島には、年間約110万人もの観光客が訪れています。世界でもこんな地域はありませんよね。観光地には食と自然、文化が必要と言われますが、さらにエンタテインメントが循環していることも重要です。情報ストレスさえなくなれば、まだまだこの観光市場を広げていき、さらに日本を引っ張っていくこともだってできるかもしれない。それをかたちにしていくことが、私たちの使命なのです。
プロフィール
安里繁信氏(あさと・しげのぶ)
沖縄国際映画祭実行委員会 副委員長
沖縄国際映画祭協力会 会長
69年生まれ、沖縄・那覇市出身。高校卒業後上京し、イベント企画会社の運営に携わる。90年に帰郷し、父の経営する「安信輸送サービス」に入社後、広告代理店のM&Aを皮切りに、飲食・FC事業、不動産事業等、ビジネスの幅を広げる。04年、シンバネットワークを設立と同時にグループの持ち株会社として信羽を設立し、代表取締役社長に就任する。また11年から、沖縄観光コンベンションビューローの会長を1期2年務め、適正な観光予算獲得に奔走る。現在は、シンバホールディングスの代表取締役会長を務めるほか、一般社団法人沖縄公共政策研究所の理事長、早稲田大学綜合研究機構 公共政策研究所の招聘研究員。

提供元: コンフィデンス

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