褒章に値する
誕生から48年を迎えた小さなクロカンモデル「スズキ・ジムニー/ジムニーシエラ」。20年ぶりのモデルチェンジで登場した4代目では、何が変わり、何が受け継がれたのか。ジムニーの“ホーム”であるオフロードと、オンロードの両方で試乗し、その実力を確かめた。
みんな勘違いしてない?
スズキ自身により新型登場確定が通知されたのが去る6月18日。それから1カ月半の間、自動車メディアはさながらジムニー祭りの様相を呈してきた。いや、専門筋だけではない。経済系や生活情報系のメディアまでもがジムニーをホイホイ採り上げる。
「今はもうジムニーに乗っかっとかないと負けなんすよ。バズり方半端ないし。ケケケ」 自ら書いたジムニーの記事が閲覧数トップを記録した編集部のHくんは、すっかり味をしめていた。ついこないだまで半端ないといえば大迫だったのに今はジムニーか。と、そんなちまたの移り気に毒を浴びせるチコちゃんのような気概は僕にはない。
でも、老婆心ながらの心配はある。 果たして、ジムニーの何たるかも知らないお客さんが“かわいい”的なひと目ぼれでお買いになられ納車され、乗った瞬間ドン引くんじゃなかろうかと。確かにモノは劇的に進化したであろうが、前後リジッドの癖は抹消できるものではない。縦横無尽な揺れの数々と操舵応答の遅れ感、そして舵自身のシェイク等に果たして皆々が付き合えるのか。そしてポッキリカツカツの動力性能の割に軽離れした燃費をのみ込めるのか。
これらがもとでジムニー不信になられても困りますよ、と思う一方で、超売り手市場の中で慌てて注文を入れるなら、そういう一見さんが手放したピカピカ盛り盛りの中古車をありがたく頂戴する方が得策だろうと思うあざとい自分もいる。祭りでは得てしてこういうさまざまな思惑が入れ乱れるわけで、この状況は朴訥(ぼくとつ)キャラのスズキにとってもろ刃の剣になってしまわないだろうか。
と、ちょっと不安げな心持ちで迎えた試乗会当日。まずは軽自動車=ジムニーの5段MTモデルに乗って、オフロードコースを走ることになった。...