進化と伝統の妙味
“ストリートファイター”と呼ばれるジャンルを切り開いた、トライアンフのネイキッドバイク「スピードトリプル」。そのパフォーマンスを一段と高めた「スピードトリプルRS」は、幅広いライダーを楽しませる懐の深いモデルに仕上がっていた。
驚くべき“大幅刷新”
イギリス人は気が長い。家でも庭でも鞄(かばん)でも靴でも、とにかく自分の身のまわりにあるモノとはじっくり腰を据えて付き合い、年月を掛けて愛(め)でる。飾ったり、収集するよりも徹底して使い込み、壊れれば直す。そうやって時間を積み重ねていくことに美徳を感じる国民性と言ってもいい。
それはバイクに関しても(もちろんクルマも)同様で、トライアンフのスポーツネイキッド、スピードトリプルRSにもその片りんを垣間見ることができる。
その最たる部分がエンジンだ。今回のRSは新しく設定されたグレードであり、フラッグシップの役割も担うため、ポテンシャルアップを果たしたことを大々的にうたう資格がある。事実、この水冷3気筒エンジンには新しい軽量クランクが投入されたほか、ニカジルメッキが施されたシリンダーライナーや形状が変更されたピストン、排気ポートが異なるシリンダーヘッド・・・・・・と、手が加えられたパーツは105カ所にのぼる。にもかかわらず、トライアンフはこれを完全新開発とは言わず、あくまでも「大幅な刷新」と控えめなのだ。
しかもそれだけではない。実はこのユニットは2016年モデルの時にも「大幅な刷新」が施され、その時点ですでに104項目にわたって見直されているのだ。つまり、わずか2年の間に計209もの改良を受けているのだが、トライアンフ的にはあくまでも熟成や最適化の一環らしい。
確かに変わらない部分も多い。1050ccの排気量、一見するとパイプに見えるアルミツインスパーフレーム、独特の2灯ヘッドライト、アップタイプの2本出しマフラーなどはこのモデルのアイデンティティーとして定着している。...